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トコナッツ島水着コンテスト【2】


 たくさんの人がごった返すステージから離れたところ。
 砂山が小高く盛り上がった丘の上で、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)は双眼鏡『NOZOKI』で浜辺の女の子たちを物色していた。物色と言ってもナンパしてやろうとか、そーゆー陽の気持ちでは見ていない。どちらかと言えば激しく陰。ぐふぐふ、と薄気味悪く笑っている。そして片方の手には携帯電話が握られていた。
「やあ久しぶりだね。ボクだよ、わかるかい?」
『は?』
 電話の相手は空京センター街のカリスマギャル神守杉 アゲハ(かみもりすぎ・あげは)だった。
『ああ、なんだハガネ(鋼のようなデブの略)じゃん。あによ、何か用?』
「実はボク、トコナッツ島に来てるんだ」
『?』
「ぐふふ、こっちでは水着コンテストで盛り上がってるよ。どうだい、アゲハもこっちに来て出場してみないかい。アゲハが出たらきっと優勝間違いなしだと思うんだ。どうせキミはネカフェで無益に時間を浪費しているんだろう?」
『……何言ってんだ、テメー。トコナッツ島なんてリゾート地、聞いたこともないんですけど?』
「え、いや、なんでも招待状がないと来れない島らしくて……」
『だったら尚更テメーなんか入れるはずないだろ。今日中にドカベソ全巻読むって決めてんだから邪魔すんな』
 アゲハは通話を切った。
「心中お察ししますわ」
 白い砂の上に礼服で立つステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)は暑さに顔色ひとつ変えていない。
「しかしながら、アゲハ様の承諾を取り付けられてもこの島に上陸するのはいささか難しいかと」
「……どういうこと?」
「わたくしも空京のマスコミをこの島に入れようと根回しをしていたのです」
 水着コンテスト優勝者の勇姿を記念に残してもらおうと、空京のテレビクルーに連絡を取っていた。
「ですが、この島に向かう定期便に、事情を話して乗ろうとしたところ、Mr.エリックに雇われたガードマンに降ろされたそうです。招待状のない人間は厳しく排除されているようですね」
「ふぅん、Mr.エリックも器が小さい奴だね」
「……そこまで徹底して部外者を排除しようとしているのは、やはり何か島にあるのではないかと推察します」
「まぁいいさ。アゲハにフられたのは残念だけどドカベソが相手じゃ仕方がない。ボクはボクで楽しむよ」
 ブルタは邪気眼レフを目に装着し、顕微眼でビーチに溢れるぴちぴちのギャルにフォーカスする。
「ぐふふ、新しく手に入れたアイテムを試すにはいい機会だよ」
 ところが、薄布一枚透過する事の出来る邪気眼レフだが、ギャル達には何の変化も見れなかった。
「ど、どういうことだい?」
「偽物でも掴まされたのではないですか?」
「そんな訳ないさ、ちゃんとした正規品だよ。お、おかしいな……ん?」
 ステンノーラに目を向けると、礼服の上着が透けて、中に着た白いシャツがハッキリ見えた。
「邪気眼レフは壊れてない……と言うか、なんだい、スノー。そのつまんない服は。ここはビーチだよ」
「は?」
「キミも女子なら出なよ、コンテストに。そして盛り上げなよ、コンテストを」
「審査委員を見る限りゲテモノイベントとしか思えませんが……」
 そう言いながら、上着を華麗に脱ぎ捨てると、大胆な黒のビキニがあらわになった。
「ブルタ様がそうおっしゃるなら、不肖このステンノーラ、行って参りましょう」