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トコナッツ島水着コンテスト【7】


『それでは第一回トコナッツ島水着コンテンスト、優勝者の発表に参りたいと思いますー!』
 いろいろな事があったコンテストもいよいよ大詰め。ステージには参加者達が緊張した面持ちで並んでいる。
 フルチンを隠そうともせず堂々と立つラルク。なんだかもう色々と吹っ切れた感があって漢らしい。
 水着を剥がれた月夜は昆布を身体に巻き付けている。恥ずかしそうに顔を伏せているのがむしろ可愛らしい。
 ステンノーラは変わらずクールな出で立ち。傍らにぐちゃぐちゃの鉄塊が置いてあったが、それがオオヤドカリに蹂躙されたブルタの成れの果てと気付いた者は誰もいないようだ。
 玉藻はよほど自信があるのか堂々とした様子。何度見てもおっぱいが大きくて素晴らしい。
 股間を包帯でぐるぐる巻きにされた刀真は大分出血したのだろう。遠くの空を見てブツブツ呟いている。
 ブルーズはオイルでギトギトになった身体を誇示して、審査員に「フン! フン!」とアピールを続けている。
 そして、カメラを没収された秀輝が発表のドラムロールを打ち鳴らす。
 司会のリナはゴクリと唾を飲み、その名前を告げた。
『優勝者は……樹月刀真さんです!!』
「おおおおおおおおおおおーーーっ!!!」
「お、俺ですか……?」
 刀真は目をパチクリさせ驚いている。
「優勝の決め手は、水着に貝殻を使った斬新さ。それから、あの身体を張ったパフォーマンスよ。素敵だったわ」
 長い戦いを見守っていた観客から自然と拍手が沸き起こった。
『おめでとう、刀真さん! 優勝した刀真さんには道満審査員の「大切なもの」が贈られます!』
「ン、あげちゃう♪」
 ルンルン気分で道満は刀真の肩を抱いた。
「あ、あの、何を……?」
「決まってるじゃない、あたしの大切なもの……常夏のビーチよりも熱いキッスをあげちゃうわ☆」
「ええええーーーっ!?」
 ステージに立つ参加者から一斉に悲鳴にも似た叫びが漏れた。
「よ、良かったぜ。優勝しなくて……」とラルク。
「まったくだ。あれほど身体を張った甲斐がないではないか」とブルーズ。
「やはりゲテモノのイベントでしたね」とステンノーラ。
『最悪だわ。ま、私じゃないからどーでもいいけど。んじゃ、ちゃちゃっとキスしちゃってお二人さん』
 リナが促すと、とんでもないことに刀真はまんざらでも無さそうな顔をしている。
「……こ、困りましたね。でも、道満さんに恥をかかせるのも申し訳ないですし……」
「ど、どーしちゃったの、刀真!?」
「はぁ……。忘れたのか、月夜。お前、刀真に反転違認拳を喰らわせていたではないか」
「ああ!!」
 玉藻に言われて、月夜は気が付いた。そう、未だ刀真の嗜好は『男』のままなのだ。
 よって、この賞品は完全にご褒美である。
「それでは道満さん、よろしくお願いします」
「任せて。優しくするわ……ん〜〜〜〜〜むちゅ! ペロペロチュッチュッ! チュパ! チュパ!」
 目の前で繰り広げられるえげつない行為に、誰も彼も言葉を失った。皆一様に悲惨な事故現場の中継映像を見ているような表情をしている。
「……月夜、反転違認拳の効果はあとどのぐらいだ?」
 玉藻は月夜の脇を突つく。
「ええと、もうそろそろ……」
うっぎゃああああ!!!
「あ、切れた」
 マリンブルーの海と白い砂浜、サンサン降り注ぐ日差しの中、一人の青年が大切なものを失った。
「ふにゃああああ〜〜」
 ステージの隅で蒼い猫は大きくあくびをした。
 浜辺を埋め尽くしていたたくさんの人々が、霧のように消えていき、再び穏やかな島の風景が戻ってきた。
 浜辺には波音と青年の悲鳴だけが響いている。