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MNA社、警備システム開発会社からの依頼

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MNA社、警備システム開発会社からの依頼

リアクション

「敵の注意を全て引き付けている、あの五人には感謝しないといけませんね」
「そうですね。このままいければ、フラッグの奪取も不可能ではないと思いますが」
「そう簡単にいってくれればいいんだけど。はぁ、せめて私の相棒も手伝ってくれればちょっとは楽かもだけど」
 ハデスたち及び輝夜たちが敵主力を引き付けている間に、その隙を縫ってフラッグへ走っていたのは山葉 加夜(やまは・かや)紫月 唯斗(しづき・ゆいと)日向 茜(ひなた・あかね)の三人だ。
「何か他にやっていることがあるのですか?」
「うん、そうみたい。ちょっと前になるんだけど」
 加夜の疑問に茜が実験が始まる少し前のことを喋りだした。

「機動兵器のデータ取得し、より質の高い物に昇華するためバックアップを取る?」
「ええ。なのでわたくしは現地は行けません。それにアレックスさんにも手伝って頂く為、戦闘は茜に全てお任せします」
「私は後方で各データの収集をするからな。頑張れよ」
 茜にそう告げるのはクレア・スプライト(くれあ・すぷらいと)アレックス・ヘヴィガード(あれっくす・へう゛ぃがーど)の二人。
「いやいや、一人ってのはさすがにきついんじゃ」
「確かにそうですが、これから先一人で戦う場面も増えるかもしれません。いざという時が来てしまう前に、実験的なこの依頼で鍛錬をするのも悪くないでしょう」
「とは言え、いきなり単独行動じゃあれだしな。そこは他の契約者たちと協力し合っていけばいいんじゃないか?」
 名案だ、と言わんばかりに手のひらをぽんと叩きながらそういうアレックス。
「いや、でもそれじゃ結局一人じゃないんじゃ」
「細かいことは気にしないほうがいいよ!」
「細かくないと思うんだけど……」
「わたくしたち以外の方との連携が咄嗟にできる、これもまた強みになると思います」
「……うん、わかった。なら依頼の方はおまかせするね」
「ええ。くれぐれも無茶はしないでね」
「大丈夫! いざとなったら私がすぐに駆けつけるからなHAHAHAHAHAHA!!」

「ってことがあったんだ」
「成る程、A地点の後方で何かやっていたのはそのためだったんですね」
「……茜さん。その情報、よろしければ私にも教えて頂けないでしょうか?」
「えっ? どうして?」
「このMNA社、どうにもいい噂ばかりではないようでして、山葉校長もMNA社の情報を探るためにこの実験依頼を受けた、とも言われています」
「確かに。これだけの設備を整えていて、ただの警備システム開発会社とは想像しにくいですね」
「えーっと、でも一応依頼人さんに渡す情報とかは誰かに言っちゃいけないから……」
 困ったように言う茜。それを見た加夜も慌てて言葉を続ける。
「む、無理にとは言いません。私自身でも調べて見るつもりですから。ごめんなさい、困らせてしまいましたね」
「ううん、でも一応聞いてみるね」
「はい、お願いします」
「……お話はここまでにしましょう。前方にフラッグ、及び敵機を確認しました」
 足を止めて、遮蔽物に隠れる三人。敵機の数は三機。
「偵察型、強行型、射撃型が一機ずつ。動きから察するにまだ私たちには気づいてないかと思われます」
 『ホークアイ』を使い、細かな動きから自分たちがまだ見つかっていないと判断する加夜。
「どうしよう。このまま隠れながらいけるかな?」
「無理だと思いますね。フラッグ周りには高い遮蔽物がないため、俺たちの姿を隠しきってくれる保証がない」
「なら強行突破?」
「待ってください。射撃型に動きがあります。伏せましょう」
 加夜の言葉に従い、姿勢を低くして息を殺す三人。
 すると射撃型がフラッグ地点から離れて、ハデスたちや輝夜たちが暴れている方へと向かって行ったのだ。
「……あちらに向かったようですね。ただこちらにも戻ってこれるような位置を目指しているみたいです」
「強襲があったときにはすぐに戻ってこれるように、ですか」
「でも、結構向こうに行ったみたいだからこっちに来るまでにはどうしても時間がかかるよね?」
「そうですね。だからこそ、今がチャンスですね」
「……ここは俺が先行し、あの二機を釣ります。ただ出来なかった場合も考えてどちらか一人がフラッグを、もう片方が機動兵器のフラッグ防衛を阻止としましょう」
「では、私が機動兵器の阻止に回ります」
「じゃあ私がフラッグ奪取だね。……ちょっと緊張してきたかも」
「大丈夫です、三人で勝ち取りましょう。あのフラッグを」
「が、頑張るっ」
 二人のやり取りの横で、【千里走りの術】を使い自身の速度を強化する唯斗。
「では、参ります!」
 決意を固めた三人、最初に飛び出したのは唯斗。その姿を確認した偵察型、強行型だがすぐには動かない。
「動かぬなら 動かして見せよう 機動兵器」
 持ち前のスピードと体捌きで強行型に接近、その眼前まで行く唯斗。
 さすがの強行型もこの近さまで来れば動かざるをえず、唯斗に対してショットガンを撃ちながらもブレードで応戦。
 地面を抉るほどの攻撃にも動じず、巻き上げられた土塊と共に空中に浮かぶ。
 その体勢からは反撃はできないと判断した強行型が遂に前に出る。
 しかし『空蝉の術』や『疾風迅雷』など使用する唯斗に攻撃が当たることはない。
 そして唯斗は少しずつ強行型をAフラッグから遠ざけていく。
「今です!」
「いっくよー!」
 それをみた二人が隠れていた遮蔽物から一気に走る。Aフラッグに残る偵察型がハンドガンを撃つ。二人に何発か弾はかするものの、致命傷にはならない。
 しかし、事態を察知した射撃型が戻ってきてしまう。
 ライフルの射撃範囲まで戻った射撃型が二人の後ろから照準をつける。
「少し、甘かったですかっ」
「相手の機体を盾にするために潜り込もうにもまだ遠いよ〜!」
 二人の悲痛な叫びも聞かぬまま、射撃型がライフルのトリガーを、
「引かせないよっ!」
 引けなかった。横から現れた輝夜による痛烈な不意打ちに体ごと揺らされライフルの弾は天井へと向かう。
「こいつは任せて! そっちの偵察型とフラッグは任せたよ!」
「はいっ! ご助力、ありがとうございます!」
「ありがとー! よーし、行っちゃえー!」
 茜が加夜より早くフラッグへ猛突進する。そうはさせまいとする偵察型がハンドガンで茜を狙う。
「余所見はいけませんよ!」
 『行動予測』を使い事前に茜を狙うとわかっていた加夜が『歴戦の飛行術』を使い、急襲。
 トリガーを引こうとしている偵察型の指部分に『ブリザード』を使用して、凍らせることにより攻撃を阻止。
「フラッグ頂きー!」
 完全にフリーになった茜が設置されたフラッグに飛び込み、その手中に収める。
 見事な連携により最も機動兵器が多く困難と思われていたAフラッグの奪取が完了したのだ。
『Aフラッグが奪取されました。残るはBフラッグのみです。しかし、制限時間の方も迫ってきていますのでご注意ください』
 無機質な、抑揚のないオペレーターのアナウンスが流れる。
「……やったやったやったー! 本当に取れちゃったよー!」
「やりましたね」
「旗を取った瞬間、機動兵器も動かなくなって助かりました。さすがに一人で相手するのは骨が折れますから」
 三人が笑顔でフラッグ獲得の喜びを分かちあって、笑いあう。
「……でも一つだけ気になることがあるんだよね」
「気になること、ですか?」
 茜の言葉に即座に反応する唯斗。
「さっきかっこいいお姉さんが助けてくれたとき、ライフルの弾天井に向かったでしょ? あのライフルって相当な威力だったよね? 3mくらいの龍たちだって無傷じゃなかったみたいだし」
「確かに、相当な威力ですね」
「それなのにさ、あの天井、弾を貫通させなかった。普通の建築物なら貫通くらいすると思うんだけど」
「……言われてみれば、そうですね。警備システム開発に、これほどの強度を有する建築物が必要、でしょうか」
 茜の気づきに思案する加夜。
「一応、山葉校長にもお伝えしないと。……茜さんの指摘がなければ見逃していたかもしれません。ありがとうございます」
「ううん! 役に立てたならよかった!」
 ともあれ、これでAとCフラッグの確保が完了した。
 後は機動兵器にとっては動きが抑制されやすいB地点のみ。契約者側の勝利は目前かと思われた。
 しかし、B地点では激闘が繰り広げられていたのだ。契約者と、機動兵器に乗る契約者たちの激闘が。