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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 6

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 6

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第6章 食は命・美味なるものならば食らう Story4

「(教えてもらったポイントまで、もうすぐ到着します…)」
 レイカは和輝にテレパシーを送ってもらいながら、フレデリカたちがいる場所へ急ぐ。
「あのー、レイカさん…。魔性の気配は…?」
「アークソウルが光始めましたから、まもなくかと…。ぁ、見えました」
 赤色の髪の毛の女が、赤々と燃える炎を纏い、馬のボディーに魚の尾が生えた生物と睨み合っている。
 行方不明者たちを連れて行かせまいと、フレデリカは両腕を広げて川への道を閉ざす。
「退いてヨッ」
「いやよ。あなたたちこそ、攫った人たちを解放しなさい!」
「フリッカ…。そこを通られたらすぐに、川へ入られてしまう危険性があります」
「分かってるわ、ルイ姉」
 川辺にはフレンディスたちがいるが、向こうも魔性の襲撃でかなり精神力を消耗しているはず。
 ここはなんとしてでも、自分たちの手で救い出さなくてはいけないのだ。
「うわー、なんか馬と魚が融合しちゃった感じだね?」
「どうでもいいこと呟かないで、レスリー。宝石に精神力を集中させて」 
「ぅー。はーい…」
 ムッ…と口を尖らせてみせるが、すぐに真剣な表情へと戻った。
「ァアアァアアッ、今すぐ餌食べたイッ」
 怒ったケルピーが彼女たち目掛けて突進する。
「お前、イヤッ」
「すみません…でも、譲れません、よっ」
 結和は歴戦の魔術を自らを守る盾へ、展開しようとするが…。
「―…ぁあっ!?」
 不発させてしまい、真下から湧き出る水柱をくらってしまう。
「退かないなら、食べちゃうゾッ」
「ひっ、いやぁああっ」
 喰い殺される危機にマジックブラストが発動する。
 彼女を守るように吹き荒れ、ケルピーの器を破壊した。
「―…は……、獣は…?」
「まだそこにいるわ。器が壊れただけで、本体は無傷そうよ」
 自ら姿を見せていた魔性は器を失い、再び不可視に戻ったようだ。
「結和さん、立てますか?」
「は、はい」
 彼女は小さく頷いてレイカに助け起こしてもらう。
「ケルピーはまだ私たちの目の前にいるはずです。器に憑いている者から祓いましょう。その翼は疲労が激しいでしょうから、私の箒に乗ってください」
「わ…分かりました」
 レイカの箒に乗せてもらい、裁きの章を開く。
 結和は深く深呼吸して気分を落ち着かせ、詠唱の言葉を紡ぎ始める。
「―……汝、罪なきモノを貶め、罪の鎖へと繋ぐ業の者。我…、罪なきモノを鎖から解き放ち、汝を罪の鎖に繋ぎし者…」
「その言葉キライッ!!」
 裁きの言葉にケルピーは不快そうに苛立ち、結和を喰らおうとする。
「行かせませんっ」
 祓魔の護符に祈りの力を込めたレイカは、アークソウルの気配をたどり魔性に投げつける。
「ヤァッ、イタィッ」
「…紅の血の色、罰を与えし地の底の色、2つの鎖…混ざり合い…、やがて汝に降り注ぎ、裁きの汝の枷となろう!」
 そう唱え終えると虚空からぽつぽつと赤紫色の雨が降り始め…。
「な、なニ、ヤッ…!!」
 ザァザァと降り、魔性の身体に浸透していく。
「(まだ他のやつに、攫われた人が乗せられているわね。こうなったら…っ)ねぇ、攫った人を解放してくれない?代わりに、私を連れて行きなさい」
 フレデリカはケルピーの傍により、身代わりに自分の身を差し出すと告げる。
「お前、1人。こっちまだいル。無理」
「(簡単には乗ってこないようね…)じゃ、じゃあ…、私を乗せていってくれない?他の人は、意思で操作出来るんでしょ?ほっといても、勝手についていくと思うわ」
「どうすル?」
「うン、餌が増えるのは嬉しイ」
 ケルピーたちは攫った人々を背から解放したが、完全には呪いを解くことはなかった。
「それじゃあ乗っテ」
「分かったわ…」
 小さな声で言葉を紡ぎながら、ゆっくりと魔性の傍に寄り、相手の前で足を止めた。
「どうしたノ?乗ってヨ」
「フッ、本気で私がそんなこと言ってると思ったの?」
 紡いだ祈りの言葉は赤き宝石に反応し、フレデリカはフレアソウルの炎を纏い、魔性の顔に触れた。
「あっ、あぁあっぁああぁあ…っァァアア熱いィイイ」
「(当たりの反応はないけど、私が解除するまで炎は消えないわね)」
「や、やだっ熱ーーーーィイッ」
「川じゃないところに走っていったわね」
 フレデリカは木々にぶつかりながら駆けて行く者を追跡する。
「こいつらで火を消そゥッ」
「待ちなさい。その人たちに近づいたら、あなたに触るわよ」
「―…うぅう…」
「諦めることね、もうすぐ私の仲間が来るわ」
 発炎筒の炎を目印に、レイカたちを呼び寄せる。
 さほど離れていなかったため、すぐに駆けつけてくれたが、まだ元気な魔性もついてきてしまった。
「フリッカ!この人たち、川に行こうとしてるよ!」
 スクリプトは攫われた人の手を引っ張り、パートナーのところへ連れて行く。
 ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)がホーリーソウルで呪いを解除しようとしてくれているが、魔性に追われながらだと術に集中しにくく、まだ1人も解除していない。
「私が魔性の足止めをします…。その間に、皆さんを…呪いから開放してあげてください」
「はい、結和さん。…フリッカ、サンクチュアリを発動させましょう」
「えぇ…」
 終夏のスーに宝石の力を与えようと、フレデリカは祈りを捧げ始める。
 弥十郎のアークソウルの光がスーの中に飛び込み、フレデリカとルイーザのホーリーソウルがスーに与えられる。
「(私とルイ姉…、斉民さんのエアロソウルの力を、スーちゃんに…)」
 精神を沈めて目を閉じると、黄緑色の光がスーの中へ送られていく。
「結和さん、私も多少なら盾に…」
「い、いえ…。レイカさんは探知をお願いします…」
「―…で、でもっ」
「大丈夫です…下がってくださいっ」
 癒す魔術を学んできたため、その魔術で傷つけてしまうのは心が痛む。
 傷つけたいわけでも、倒したいわけでもないが、護るために戦いたい…。
 仲間と…呪いに苦しむ人々を護りたい。
 サンクチュアリが発動されるまでの間だけ、耐えればいい…。
 結和はSPリチャージと聖霊の力で自己回復しながら、哀切の章でケルピーの群れから護る。
「むゥウウ、目の前に餌があるのにィイイッ」
 魔性は護りの光の嵐を突破しようとするが、踏み込めば憑依する力が削がれてしまうため近づけない。
「最後は私たちだね、ベアトリーチェ」
「はい、美羽さん!」
 2人は哀切の章を唱え、祓魔の力をスーに吸収させる。
 スーは身体の中へ浸透させ、正方形の空間の中に花びらを舞い散らせた。
「おりりん、こんな感じだったよね?」
 葉をカスミソウと同じ色に染め、その中にふかふかのソファーを作り、中央には白い花の日傘を配置する。
「うん、そうだよスーちゃん。…維持するためには、私の精神力がたくさん必要なんだったよね」
 終夏はスーちゃんの苺ドロップの食べ、精神力を使った疲れを癒す。
「フレデリカさん、治療を始めよう」
「えぇ、1人ずつ治しましょうか。弥十郎さん、暴れないようにおさえていてくれる?」
 2人がかりでソファーへ運び、被害者たちの身体をおさせててもらおうと弥十郎たちに頼む。
「分かった。斉民は足をおさえててよ」
「いやよ」
「な…なんで?」
「蹴られそうなんだもの」
「ワタシは蹴られてもいいってこと?」
「その言葉、そのまま返すわ」
「うぐぐ…っ」
 男の子って辛いな…と心の中で呟き、しぶしぶ足の方をおさえる。



「―…ぁ、和輝さんからテレパシーが…。(こちらはフレデリカさんたちの結界術の中にいるので、今のところ大丈夫です。被害者の呪いの解除って難しそうですか…?)」
「(だいぶ深くかけられていたようだ。かなり暴れるため、こちらは2人がかりで解除をしている)」
「(そうですか、了解です…)フレデリカさん。今、和輝さんと話したのですが。2人がかりくらいで呪いを解除したほうがよさそうです」
 和輝とのテレパシーがいったん途絶えると、レイカはそれをフレデリカに伝えた。
「うーん…、解除出来るのはルイ姉だけなのよね」
 フレデリカは両手で若い女の頭をおさえながら言う。
「この中にいれば、襲われる心配も少ないですから。なんとかやってみます」
 ルイーザがホーリーソウルの気を女の中へ送り込むと、身体から魚のような影が這い出してきた。
「うわ、気持ち悪い…」
「ケルピーと変わらないわよ?」
「斉民、さりげに酷いこと言ったね」
「そうかしら。だって弥十郎は見えないじゃないの」
「それを言うかなー……。ぅーん…」
「ねぇ、今…アークソウルを使ってる?」
 また良からぬ発言でも飛んでくるのかと、斉民は顔を顰めた。
「うん…。わりと早く見つかったからね。もっと宝石の力を引き出すために、鍛錬をちょっと♪」
「この子は耳があるわ、きっと獣人ね」
「ぅーん、ぅーん…。あー、まだ無理みたい」
「―…何が?」
 黄色の次は何を言い出すのやらと警戒する。
「獣人は活発だからオレンジかなーって思ってさ、イメージしてみたけど。色として感じなかったよ…」
「人は…?」
「白かな。でも、まだそうだとは感じられないね」
 まだ斉民を黄色とだけしか判断出来ないようだ。
「わっ、この人からなんか出てきたわ!」
 女の身体から黒い影が這い出し、清き光に浄化されていく。
 金属を爪で引っ掻いたような悲鳴を上げて離れていった。
「呪いは相手にかえらずに、消滅するんでしょうか…」
「そうかも…。先生たちは相手へかえるなんて言ってなかったわ。どのケルピーがかけたか分からないけど、私たちがやることはこの人たちの救助よ」
「―…えぇ、そうですね。獣人の方は眠っているようですから、ソファーの傍に寝かせましょう」
 ルイーザはフレデリカと一緒に、獣人の女をソファーから下ろす。
「次の人を連れてきてください」
「ほら、弥十郎。足のほうを持って」
「えぇー、またワタシ?」
「文句あるの?」
「う、ううん……」
 まだ黄色のこと根に持っているのだろうか…。
「イタッ!蹴られらないでっ」
「落とさないでよ」
「むー…」
 不満げな顔をしながらも、一緒にソファーへ運んだ。
「へー、あの花びらに触れると、ダメージ受けるのね?」
 美羽はふわりと舞う白い花びらを眺め、ケルピーがここまで進入出来ないのだと確認する。
「あれって哀切の章の力?」
「おそらくそうですね、美羽さん。祓魔に強い効果があるのは、スペルブックに記した章ですから」
「―…セイニィ、大丈夫かしら」
「川沿い側のチームがいますから、きっと無事なはずです」
「うん…そうよね」
 サンクチュアリの中に倒れ、暴れる被害者に視線を落とし、小さく呟いた。
「コレット、何体祓ったんだ?」
「んー……。まだそんなに祓えていないかな、オヤブン」
「器に憑いているやつはまだいるか?」
「うん、いるよ」
「プッロ、引きつけ役を頼む。だが、無理はするな」
「あぁ、心得た」
 人を背に乗せていないのなら、被害者を傷つける心配もないか。
 彼はケルピーの牙をヴァーチャースピアで受け流す。
「コレット、物質的質量のある者は、何匹残っている?」
「結和さんが裁きの章を使ってくれたのを狙って祓っているから。それと、もう1匹くらいかな」
「承知した」
 小さく頷きサンクチュアリの中へ誘導しつつ、結和とコレットに章を使う隙を与える。
「―…ふぅ、なんとか器から祓えましたね」
「もう、精神力が…」
 コレットはサンクチュアリのソファーの傍に座り込み、精神力を回復させる。