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夏の終わりのフェスティバル

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夏の終わりのフェスティバル
夏の終わりのフェスティバル 夏の終わりのフェスティバル

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「それにしても、パラミタの外に……地球に降りたのはこれが初めてだな」
 紅茶を飲み一息をついたところで、ヴェロニカが独り言のように呟いた。
「そうなんですか?」
 祥子のケーキセットを運んできたルシェンが訊ね返す。
「ああ、あまりシャンバラを離れることが出来ないのでな。だが、ここは見聞を広めるための旅先の候補の一つに良いな」
 そう言って、ヴェロニカはもう一口紅茶を啜った。
「ルシェンさん、私からもお伺いしてもよろしい? このお店で出しているお菓子は手作りなのかしら?」
「ええ、マスターの手作りになります」
「だから美味しいのね。あと、もう一つ伺ってもよろしいかしら? 紅茶を入れる時の注意や作法はどのようになっているのかしら」
「私も一つ聞きたいのだが、この紅茶はどこの葉を使っているのだろうか?」
 祥子とヴェロニカの質問に、ルシェンは答えた。通りかかったあさにゃんとアイビスも加わり、六人はしばらくの間談笑をした。

「お仕事中なのに、長々と引き留めてしまってごめんなさいね。でも、こういう場だけじゃなく、ゆっくりお話をしたいわ。
 よろしければ、連絡先交換して携帯で連絡取れるようにしてもらっていいかしら?」
「でしたら私もあさにゃんの連絡先教えてもらっていいかしら?!」
「静香、あまり興奮し過ぎないようにな」

 そんな騒々しいテーブルの近くでは、及川 翠(おいかわ・みどり)たちがゆったりとケーキセットを食べていた。

「さて、今日ロシアンカフェまで連れて来たのは他でもないわ。アリス、あなたにお仕事よ?」
 ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)は、向かい側の席に座ったアリス・ウィリス(ありす・うぃりす)にそう宣言する。
「お仕事ぉ〜?」
 アリスの隣では、翠がミルクティーを飲みながら二人の話を黙ってじっと聞いている。
「まず、あなたがやってるもふもふブートキャンプを伊豆大島の隠れ家に移転するわ」
 ミリアはロシアンティーを一口飲んで、言葉を続ける。
「それと、今うちに居るジャイアントポメラニアン、10匹ほど隠れ家に移動。……後は、言わなくてもわかるわよね?」
「え〜と、それって〜……?」
「あなたには、伊豆大島でしばらく隠れ家生活をしてもらうわ」

 アリスが、ブリヌイを口に運ぼうとした状態で数秒固まる。
「……え、えぇ〜っ!? いずおおしまで隠れ家生活ぅ〜!?」
 事がどのように運んでいるのかアリスには良く分からなかったが、
 これからどこか知らないところで隠れ家生活を送らなくてはならない、ということはアリスにも充分分かっていた。
「嘘ぉ〜!?」
「はい〜、嘘じゃありませんよぉ〜? アリスちゃんはぁ〜、これからしばらく伊豆大島生活ですぅ〜」
 ミリアの隣で、二人のやり取りを黙って聞いていたもう一人、スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)が口を挟んだ。
「勿論ずっとじゃなくてぇ〜、一週間での交代制ですぅ〜」
「一週間……!! ――ところで、いずおおしまってどこ?」
 頭上にいくつも疑問符を浮かべるアリス。呆れたような顔をしてロシアンティーについてきたジャムに手を伸ばすミリア。
 それはですねぇ〜、と説明を初めながら、カブリーシュカを食すスノゥ。
「何だか、アリスちゃんが大変なことになってるの……」
 翠はそんな三人を順番に見比べながら、ミルクティーの最後の一口を飲み干した。
「ジャイアントポメラニアンとアリスには、聖邪龍ケイオスブレードドラゴンや炎雷龍スパークリングブレードドラゴンに乗って移動してもらうわ。
 アリス、あなた地上を移動したらすぐに迷子になるでしょう」
 そろそろミリアもロシアンティーを飲み終わりそうだ。アリスはふむふむと頭を振りながらブリヌイを食べている。
「これで〜アリスちゃんへのお話は終わりですぅ〜。食べ終わったらぁ〜、お祭りですぅ〜!」
「お祭り!」
 スノゥの言葉に、アリスが飛び跳ねそうな勢いで反応した。
「お祭り楽しみなの! みんなで遊びに行くの!」
 翠の表情も、祭りを楽しみにしていることが隠しきれないといった様子だ。
「まだゆっくりと支度をしていていいわよ。先に会計をしてくるわ」
 ミリアは一人席を立つと、レジへと向かった。

「翠ちゃんはぁ〜、お祭りで何がしたいですぅ〜?」
 スノゥは翠に声を掛けながら立ち上がった。
「何があるのかなぁ? いろいろ回ってみたいの!」
 二人は、会計をし終わったミリアの元へと向かった。
「――アリスは?」
 ミリアたちがきょろきょろと周りを見回すが、アリスの姿はない。
「……迷子、かなぁ」
 翠の言葉に、三人はまたか……と苦笑いする。
「早速、銃型HCで追跡ですぅ〜」
 スノゥを筆頭に、三人はロシアンカフェの外へと飛び出して行った。