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夏の終わりのフェスティバル

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夏の終わりのフェスティバル
夏の終わりのフェスティバル 夏の終わりのフェスティバル

リアクション



「はああああああああああああああっ!!!!!」

 アルテミスが決死の一撃を食らわそうとした瞬間、一発の銃声が鳴り響いた。
 バックステップで銃弾をかわしたキロスの視線の先には、フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)の姿があった。
「長髪1センチチビ野郎め。ここで恨みを晴らしてやる」
 銃を構えるフェイ。無表情だが、その言葉には絶対零度の辛辣さが潜んでいる。
「あぁ?! 何でどいつもこいつも俺の邪魔ばっかしやがるんだ?」
 キロスもイライラとし始める。
「いいぜ――何人でもまとめてかかって来い。生きて帰れると思うなy」
「ストップ、ストップ!!!」
 大声でキロスの言葉を遮ったのは、フェイの後を追ってきた匿名 某(とくな・なにがし)だった。
「フェイちゃん、キロス君とはいっつも喧嘩ばっかりだけど今日はお休み。というよりも、もう止めて仲良くしなきゃだめですよ?」
 某と一緒に追いかけてきた結崎 綾耶(ゆうざき・あや)も、フェイに注意をし始めた。

「何だか妙なことになったわね」
 姫月はまだ何が起こるかわからない、と警戒しながらも首を捻る。
 吹き飛ばされた塵の如く、つい今し方まで姫月たちが戦っていた戦闘員たちは散り散りに商店街の路地へと姿を消していた。
「しばらく様子を見てみよう」
 樹彦はそう提案し、二人は少し遠巻きにキロスたちを窺った。

「――というわけで、本当に色々とごめん。ほら、フェイも謝るんだぞ」
「とりあえず全部まとめて詫びを入れろ。それで水に流してやる」
「フェイ! この間のことはフェイにも非が……睨むな睨むな」
 キロスは某たちの様子を見ていて戦闘意欲が失せたのか、剣を元通り腰に差した。
 とはいっても、キロスに視線を戻したフェイとキロスとは、お互い未だ睨み合ったままである。
「キロス、もし良かったら俺たちと一緒に祭りを回らないか? 色々とお詫びしたいこともあるし」
 某の提案に、フェイが口を出そうとした瞬間、「賛成!」と綾耶がにっこり笑って言った。
「一緒にお祭りを楽しみましょう! キロス君もお祭りに喧嘩しにきたわけじゃないんですよね?」
「……ああ。リア充になろうと思って来たんだよ。悪いか」
「じゃあ、私たちと一緒にお祭りに行って、リア充になれるように頑張る、っていうのはどうですか?」
 綾耶の言葉に某も大きく頷き、ハデスやアルテミスの方に向き合った。
「フェイが来るまでにキロスと戦っていたみたいだけど、もし良かったら俺たちと一緒に祭りを回らないか?
 人数が多い方が、祭りだって楽しめるだろ?」
「アルテミスよ、我らもその『リア充』に加担しようではないか!」
「はい! もしかしたら、この気持ちの正体が分かるかもしれません!」
 ハデスとアルテミスの様子に、神奈はこっそり頷いた。
「うむうむ! アルテミスがこの感情の意味を知るのも、そう遠くないかもしれぬ!」


「――それで、お前の言う『リアじゅう』ってなんだ? 万が一知らないようなら鼻で笑ってやる」
 ようやく落ち着いたフェイが、ぶっきらぼうに訊ねる。
「何って、女と祭りとか回ったりすることだろ」
「なら、これはお前と『リアじゅう』していることになるのか」
「気に入った女と二人きりで、ってことだ」
 キロスはむっとしたまま、フェイの質問に答える。そんなキロスに、「キロス君!」と綾耶が声をかけた。
「そんなキロス君に提案なんですけど、キロス君がリア充っぽいと思う事を実際やってみたらどうでしょう?」
「リア充っぽいと思うこと?」
「はい! やっぱり、なんでも知識よりも実践のほうが身に付くというものです!
 そうしたらキロス君は男の子として今よりきっと魅力的になりますよ、絶対!」
 魅力的、という言葉に惹かれたのか、キロスは案外すんなりと承諾した。
「それじゃあ、頑張りましょう! リア充大作戦、決行です!!」