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カオス・フリューネ・オンライン

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カオス・フリューネ・オンライン
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〜 phase 09 〜
 

 「ねぇ!気がつかない!?この部屋………」
 「解ってるよ美羽、上に上昇してるって言うんだろ?」
 
弾幕のように降り注ぐ弾丸を巧みに回避しながら瓦礫の影に移動する影
そんな小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の質問にコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が答える
二人の移動をサポートする為に援護射撃をしていた閃崎 静麻(せんざき・しずま)がウィンドウに示される情報を見て続いた
 
 「どうやら【キレ】の中の人も【デレ】の中の人も倒されたらしいからな
  ここが落ちれば【ラスボスステージ】だから然るべき場所に移動してるのかもしれない」
 『そうだろうな、皆それなりに少数精鋭で奮闘してくれた様だ、こちらもこれ以上の遅れは許されんぞ』 

三人のやり取りにブラック ゴースト(ぶらっく・ごーすと)の通信が割って入る 
ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)と【イーダ】を乗せて後ろを弾幕を回避するべく高速走行してる
それを確認し、飛んでくる弾丸をガードしながらリネン・エルフト(りねん・えるふと)がその言葉に文句を言った
 
 「事態はわかってるのよ……それに一番数の多いここが早く堕ちるって皆思ってたでしょ?
  そりゃゲームはやってみないとわからないし、敵のデーターも少ししか解らなかったけど……」
 
ガードに専念している自分の両脇から現れた影を見て、彼女はありったけの声で理不尽を呪う叫びを放つ
 
 「【モエフリューネ】が3人ユニットなんて誰も想像しないわよっ!!」
 
叫びと共に部屋の窓から差し込む光が、両脇の影を映し出す
それはどちらもチャイナ服に二丁拳銃という同じ姿の【モエフリューネ】だった

……いや、唯一違う所といえばチャイナ服の色だろうか?
右が黄色、左が青……そして正面から弾幕を展開しているのは赤のチャイナ服……しかも赤だけマフラー仕様らしい
そんなリネンの嘆きも何のその、容赦なく子供を乗せた機晶バイクごとリネンに銃口を向けていた二人だが
それを阻止するべく新たな影が、黄色と青の両脇から飛び込んできた
 
 「言ったろ?お前はオレが遊んでやるって!」

威勢溢れる叫びと共にフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が【黄色のモエフリューネ】に特攻をかけ
迎撃しながら回避を試みる彼女を、後方から現れたレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が挟み撃ちにする
【デュエスパダ二刀流】による4刃の攻撃が至近で繰り出される中
【黄色のモエフリューネ】は手元に蹴りをいれ軌道を巧みに反らせ、その反動回転でフェイミィの突撃も回避した
 
 「テメェ!いつもより剣が鈍いじぇねぇか!ナマやってっとぶっ飛ばすぞ!」
 「ご、ごめんなさい……やらなきゃいけないのも強さもわかってるんですけど!」
 
必死に追撃しながらフェイミィに謝るレイナをみながら、やむを得まいと心情を察する相棒・静麻
同じ空賊であり、剣士でもある彼女としてはフリューネは【凛々しく気高い、尊敬すべき女騎士】以外の何者でもない

それが今回、チャイナだのロボだの極道だのメイドだのと未知のヴァリエーションが繰り広げられているわけで
ヒトによっては【彼女のいくつもの可能性】なのだが、レイナにとっては精神的ダメージの対象の何者でもない
先程など、窓から見えた勇者的なロボットモノという更なる世界を凝視した途端、卒倒し急ぎ回復して貰ったほどだ
(その時もフェイミィの仲間のユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)に軟弱扱いされ凹んでいたのはここだけの話)
 
 
一方の【青のモエフリューネ】にも永倉 八重(ながくら・やえ)斎賀 昌毅(さいが・まさき)が躍り出る

 「その間合い!頂きますっ!」
 
八重の太刀を跳躍して回避する【青のモエフリューネ】の前に昌毅が飛び込み銃口を向ける
 
 「悪いな!コテコテな作られたキャラは、許せないんだよ」
 「コテコテだけでヒトを判断しないアルネ!」
 
近距離で突きつけられたそれを蹴り上げる【青のモエフリューネ】
蹴り上げた足が戻りながら昌毅の首を刈り取ろうと、狙った踵が襲い掛かるのを
対する彼も銃を持った手の甲で受け流し、逆の手の銃口を突きつける
だがその先端が火を噴く瞬間、ギリギリ射線から身をかわした相手も懐に潜り込み、胴にゼロ距離の銃口を叩き込む

お互い銃と体術を織り交ぜた応酬が数手繰り広げられるなか、再び八重が死角に潜り込み突きを繰り出す
だが敵もさるもの、蹴りを受けた昌毅の腕を鉄棒の要領で支柱代わりに回転し、彼の背後に滑り込み蹴りを軽く放つ
 
 「うわ、あぶなっ!?」
 
体と剣先、昌毅と八重のそれぞれが触れそうになるのをギリギリ反らすタイミングが狙われる
【青のモエフリューネ】の両手がそれぞれに狙いをつけ、数発放たれたが……どれも奇跡的に当たる事はなかった
………いや、外されたというべきか
 
 「ちっ、いつの間に床が凍ってるアル!?」
 
照準がブレた原因の足場を見て【青のモエフリューネ】が舌打ちをする
【氷術】で着地点周囲が凍らされ、不安定な足場が狙いを外したようだ……だが悔やむ時間を彼女は離脱に利用する
遠距離から援護狙撃された静麻の弾が凍った床に穴を開ける中
遮蔽物に巧みに身を隠しながら、それでも両手の銃は物陰に移動する昌毅と八重を狙って弾を撃ち続けた
 
 『ちっ……【テイクカバー】スキルか、ベースはフリューネ本人とばかり思ったが、こりゃ立派な【スナイパー】だ』
 「みたいだな、イーダちゃん経由の情報では、他の【三騎士】も純粋な【ヴァルキリー】では無かったらしい
  まぁあれだ、いわゆる【彼女がクラスがチェンジしていたら?】って奴なんだろ?」

静麻の通信に答えながら、瓦礫の影で深呼吸する昌毅
消耗が両手の銃……【カーマイン】特有の倦怠感の侵食を強くするのを精神力でねじ伏せる
先程の【氷術】のフォローを入れた張本人……キスクール・ドット・エクゼ(きすくーる・どっとえくぜ)が彼を気遣う
 
 「大丈夫?昌毅」
 「問題ない……てか【萌え】だけじゃなく【燃え】の方がガチだったか
  【萌え】づくしなら言いたい事は山ほどあったんだがな」
 「与えられた萌えに価値はない……ってここに来るまで怒ってたもんね」
 「当たり前だ!大体【萌え】ってのは本来誰かから与えられるものではなくて……」
 『細かい敷居論はゴメンじゃぞ昌毅、ワシには正直萌えだか燃えだか全然分からないのじゃからな
  とにかく激昂していた二人の怒りが納まっているんだから、問題ないのじゃろ?
  結局ワシの頭でわかるのは【道具に善悪は無し。使い手次第】って事なんじゃからな、それに……』
 「さっきも聞いたよ、劣化コピーとはいえあのフリューネとガチでやれる機会というのはそうないから心躍るんだろ?」

魔鎧モードで体を覆ってるカスケード・チェルノボグ(かすけーど・ちぇるのぼぐ)の言葉をやれやれと遮る昌毅
だが一方で彼自身も高揚感が体を支配しているのも確か……先程から口元の笑みが消えていなかった 
先程の接近戦は昌毅本人の射撃技術と、纏っているカスケード自身の格闘スキルの組み合わせによるものだった
【モエフリューネ】の射撃にあわせての近接戦狙いだったのだが、まさか向こうも同等の戦術をこなすとは予想外すぎるが
その方がこちらも遠慮なく行けるというものだ
 
 「さて、残る赤い方の対処もあるしな……もう1ラウンド行こうか!キスクール、援護よろしく!」
 
一息つき、再び昌毅は銃弾の中に飛び出していくのだった
 
 
3人目の【赤いモエフリューネ】の方も、射撃戦が繰り広げられている
美羽コハクそしてエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が3人がかりで撹乱
射線のを乱すべく立体的な高速移動を繰り返す中
ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)相田 美空(あいだ・みく)が銃と弓で正面からの射撃戦を繰り広げる
リーダーらしく【スナイプ】を駆使して遠距離から打ってくる銃弾を相田 なぶら(あいだ・なぶら)が盾で防ぎ
彼と母である佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)のガードを受けながら【佐野 悠里】が相手の座標をガイドする

そんな激しい銃撃戦であるにもかかわらず、美空の口からは何故か溜息が尽きる事はない
 
 「………ハァ」
 「……さっきから、あなたの相棒さんの憂鬱な溜息が気になるんだけど、何なの一体」
 「(折角のゲームでしたのに、少し台無しになってしまって残念ですわ)だって」 
 
流石に辟易したヘイリーの苦情に彼女の心情を伝える【通訳】の悠里
美空の無言のメッセージが通訳出来るらしい、それがAIゆえなのかどうかはイマイチ不明だが
そんなパートナーの心情にフォローを入れるなぶら
 
 「そう憂鬱になるなよ、美空
  そのために遠距離の相手に君メインの遠距離戦闘を仕掛けているんだから」
 「………?」
 
不思議そうな表情をしている彼女が(何故態々相手と同じフィールドでの戦法で?)と聞いてるのは長い付き合いで解る
 
 「え?なんでって?……それはそりゃ、修行の為修行の為、うん
  美空とはまだ余りコンビネーションでやった事ないからね、ヴァーチャル世界だし思いっきり訓練できるって事だよ!」
 「………」
 「………で、お嬢ちゃん、何て?」
 「(修行、、、ですか。そういう事なら頑張りませんと)だって」
 「………遅蒔きながらやる気を出してくれて結構だわ」
 
悠里の通訳にやれやれと溜息をつくヘイリー
自分達の愛しき副団長殿も含め、色々思う所があるようで純粋に【戦いを楽しむ】訳には行かないらしい
まぁ仲間のフェイミィほど戦闘狂気味になられてもいささかアレなのではあるが……
とにかく、ようやく相手の手札も見えてきた様なので、そろそろ追い込みの方向に方針を変更した方がいい頃合だ
 
 「ユーベル、リネンの様子はどう?」
 「体力温存の為、しっかり防戦だけに集中して下さっているようですわ、先程【命のうねり】で回復は済ませました」
 「じゃあ、そろそろ閉幕の準備をしようかな
  温存のつもりが、またさっきみたいに防御だけでガリガリ削られても手間がかかるだけだしね」
 
彼女の言葉に頷き、ユーベルがウィンドウを開いて全員にメッセージを送る
内容を見なくても、それが作戦開始の合図という事はみな知っているのでアイコンをみた全員が予定通りに動き出す
 
 (接近戦に積極的に対応してる【青】と【黄】に対して、【赤】は遠距離射撃を徹底してる
  美羽達が接近戦に向かおうとしても、上手い具合に他の二色が割り込んでくるから撹乱しかできなかったけど
  ……もし【赤】が中心だけでなく司令塔で、ダメージを受ける事を巧妙に回避しているのだったら?)
 
繰り返される戦闘で、ヘイリーの頭に浮かんだその考えを、さりげなく静麻に打ち明けた所、彼も同じ考えの様だった
向こうが一定のルールで動いているのなら、こちらも同様に動くまでの事
狙うべき一瞬の為に、ナビAIの子供二人に協力して少しずつ全員に伝えた作戦だった

 「一気に前進して、防衛ラインを詰めるぞ!」

美空の弓による援護射撃を受けながら、なぶらが【混沌の盾】を前に翳しながら【赤】の射線上を突っ込んでいく
射線撹乱ではなく、明らかに的覚悟の行為に誘われ【赤】の狙いが彼に集中する
だがその射線が【カモフラージュ】により巧妙に隠されていた彼女の位置を浮き彫りにしていく
リスクの限界を感じ、止めないし足止めを狙って彼女が身を乗り出した瞬間
盾に身を隠すなぶらの背後から愛銃を【二丁銃モード】にした静麻と昌毅が飛び出し、射撃移動をしながら左右に回り込んだ
 
だがそれを見越した予防線か
巧みに八重とエヴァルトの攻撃に対応しながら移動していた【青】と【黄】が二人の移動ラインに割り込んできた
だが二人の勢いは止まる事無く……むしろ積極的に二人に接近して来るのを見て【青】と【黄】が意図を察した
 
 「「ちっ、元から私達の相手が目的アルか!?」」
 
双子の様に言葉がユニゾンし、対応を変えようと二人が止まる
だがその背後からフェイミィと美羽、そしてコハクが更なる相手としてスキル込みの高速で二人の前に現れ、一撃を放つ

 「なーに、ころしゃしねぇよ。殺しはな♪」
 「接近を許したからって、勝ちと思われちゃ困るアル!」
 「おせぇぜ、そのスピードじゃぁな!」

すぐさまターゲットを変更し、応戦しようとする【青】に容赦なく【怒りの煙火】を叩き込む
至近距離の凄まじい豪炎に、流石に緊張の色が走る彼女を狂楽の笑みで見つめるフェイミィ
 
 「ほれどうした、フリューネ。名前が泣いてるぜェ…てか、泣かせるけどな」
 「……あんまり意地悪はやめてくれ、どっちが悪いんだか解らなくなるから」
 
完全にリミッター解除しているフェイミィに、思わず念を入れてしまう昌毅である
一方の【黄】も巧みにコンビネーションを繰り出す美羽・コハク・静麻への応戦で手一杯の様である

 「パフュームを送り出しちゃったせいで、魔法援護が期待できないけど大丈夫だよねっ!」
 「両手持ちなのは何も銃と剣だけじゃないんだよ!」
 
静麻の二丁の銃、美羽の光の剣、コハクの両手の槍も猛攻に銃と体術でそれでも巧みに応戦する
それでも隙を突いて【赤】の護衛にまわろうと二人の【モエフリューネ】が移動を試みたところに、美空の弓が炸裂した
良く見ると佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)佐野 和輝(さの・かずき)から借り受けた銃で援護をしている
一見【赤】狙いの長距離射撃が二人と【赤】の合流を阻み、接近を許さぬ弾幕となっているのである
 
 「やられたアル!」
 
見事に陣形を封じられた【赤】が自分の周囲を見渡す
そしてそこで先程まで【青】と【黄】の相手をしていた八重とエヴァルトの姿が見えない事に気がついた
 
 「連中の事……狙いは正面からでないアルか?」
 「いや、正面よ?……スピードは違うけど」
 
【赤】の独り言に答える八重の声……その聞こえた先では、こちらに疾走してくる機晶バイクの姿が見える
ミュリエルを乗せ疾走するそれ……ブラック ゴーストの後部シートには八重の姿があった
足場の不安定もものともせず、立ちながら抜刀の構えを取っている
 
 「正面からとは……愚かアル!!」
 
彼女達が射線にいる以上、背後からの援護射撃は自分に向かってこない
……それを理解した【赤】が【エイミング】発動の元、確実に狙いを定め両手の銃を発砲した……だが
 
 「ビンゴ!貴方の腕なら、狙ったところに必ず弾が飛んで来ると思ったからね!
  弾道は予測済み……後は刀の軌道を合わせればいいだけっ!!」
 
抜刀により速度が倍化された愛刀が、尽く弾丸を切り伏せる
それでも勢いは凄まじく、刻まれた弾丸の破片が彼女の頬を傷つけるがそんなダメージは微々たるもの
そのままとどめの体制に入る彼女を迎え撃つべく、【赤】は武装を接近戦に切り替える……だが
 
 「勇気を以て、奇跡を必然に変えるっ!」
 
天井真上というありえない方向からゼロ距離にエヴァルトが降下してくる
【赤】の二丁の銃はすでに八重に向けられている
それでも来るしまぎれに蹴りを放つ彼女にエヴァルトの【ドラゴンアーツ】が凄まじい音とともに炸裂した
相殺の衝撃で彼女の迎撃が間に合わなくなる……その狙ったタイミングでバイクから飛んだ八重の剣技が炸裂した
 
 「くらえ必殺!フェニックス・ブレイカァァーー!!」
 「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 
完全にヒットするタイミングのそれを十字に組んだ銃で受け止める【赤】
【三騎士】としての意地かスペックか、それでも直撃を凌ぎ剣勢を受け止め続ける【赤のモエフリューネ】
だが彼女にも解っている……肝心な中心人物の攻撃がまだ繰り出されていない事を
だが今目視している【彼女】の位置では、今自分の至近距離にいる八重が邪魔なはず……だが
 
 「射角修正3度……誤差異常なし!」
 「たいみんぐまで3……2……いち!いまだよお姉ちゃん!」
 
子供達二人の声に、部屋の下に臨む遠くの階段を見て驚愕する
悠里とイーダより緻密なアシストを受けた【彼女】ヘイリーの弓がこちらに正確に狙いを定めていた
 
 「な……彼女はあそこに!?」
 
【赤】が見ると、八重の後ろに見えていたヘイリーの姿が掻き消えた
その瞬間、彼女の背後に見えたもう一つの影……
すなわち、今弓を構える本当の彼女の後ろにもいる影……榊 朝斗(さかき・あさと)の姿にすべてを理解する
彼の【ミラージュ】【ポイントシフト】による協力で、彼女は短時間の移動をこなしてみせたのである
それは【彼と接触しているものが武装と認識されるかどうか】の一か八かの賭けだった

 「テストなしの勝負だったけど、なんとかなったよ!ヘイリーさん!」

言葉とともに朝斗から【グラビティコントロール】が放たれ【赤】の反応を僅かに遅らせる
同時にヘイリーからも【我は射す光の閃刃】で威嚇と障害除去まで行われる丁寧ぶりだ
すべてを綿密に重ねわ合わせた逃れらようもない一撃を携え……弓使いの英霊が不敵に微笑む
 
 「……悪いわね、元祖射撃の名手としてラストシュート……決めさせてもらうわ」
 
不敵に笑う彼女から放たれた【トゥルーグリッド】の銃弾が、見事【赤】の肩口を打ち抜き、一気にHPを限界まで削った
その瞬間を見届けた【青】と【黄】の動揺を狙って
美羽の【レジェンドストライク】と静麻の【とどめの一撃】が的確にヒットされ、見事戦闘が終わるのと
ゆっくりと感じていた部屋の上昇の感覚が無くなり、最上への到達を示す扉が開かれるのが同時だった
 
集中したタクティクスを無事こなし、流石の疲労に一息つくヘイリーがリネンに通信を送る
 
 『私達の仕事はここまでよ、余力が戻ったらフォロー位するけど
  説得するなら手早くね。じゃないと倒しちゃうわよ?……じゃ、行ってらっしゃい』
 「……ありがとう、ヘイリー……みんな」
 
 
門の向こうは光が強くてまだ見えない
だが迷う事無く、リネンは先に扉の向こうに向かって駆け出した