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カオス・フリューネ・オンライン

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カオス・フリューネ・オンライン
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リアクション

 
〜 phase 02 〜
 
 「カッコよく動きだしたのはいいんだけど……なんかピンチみたいだよぉぉぉぉぉぉ!?」
 「お姉ちゃん!右後方からミサイル来るよ!3・2・1!」
 「「うっひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
 
カウントギリギリで、目の前の瓦礫が積み重なった穴に飛び込んだ途端
ちゅどどどどどーん……という、RPGにはあるまじき轟音と迫力ある土煙を上げ
上空からのミサイルの飴あられが、つい先ほどまでいた場所に炸裂する
ひぇぇ〜と背筋に薄ら寒いものを感じながらパフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)は息を整えつつ
傍らにいるナビゲートAIの【アダム】に声をかけた
 
 「なんか、的確に攻撃をサポートしてくれるのは有難いんだけど……なんかボク達、攻撃が集中してない?」
 「う〜ん、自立で動いてるとはいっても僕もシステムに沿って存在してるから、感知しやすいのかもしれない
  僕が存在してるだけでもプレイヤーにアドバンテージがあるからね」
 「それ相応のリスクにしても、ちょっとしんどいんですけど……」
 
彼と出会って、意気揚々と塔を目指して足を進めることにしたパフュームだが
元々いた場所自体が、塔が間近に望める街フィールドの只中というのもあり、すぐに格好のタゲ対象になり
これでもかという集中砲火を逃げ惑いながら、やっと1時間かかって1キロ程度進めた状態である
 
時折【サンダーブラスト】で応戦するも
最初は【メカフリューネ】という名前に嘘偽りがないが如くに、機能停止してバタバタと消えていった連中も
しばらくして、何故か『ウオオオオオオ!』とガッツポーズで電撃を跳ね返す【レベル2】表記の者ぽつぽつ現れ
結局押されるように、逃げる選択を余儀なくされる事になった
 
 「ゴメンね、僕の規定がサポート専門で非戦闘だから……」
 「アダム君はいいんだって!っていうか、ロボに気合ってアリ?
  外見から何となく説得力はあっても、普通主人公にはあっても敵にはないよ、あんなの!」
 「落ち着いてパフュームおねえちゃん!話す言葉がメタっぽくなってる」
 「だって向こうがネタなんだもん!
  とにかく二人だけじゃやっぱり持たないや……何とかして他のプレイヤーと合流しないと」
 「そうだね、ちょっと回りにいないか調べてみ……」
 
そう言って、プレイヤー表示が出るフィールドマップを展開させようとアダムの手が止められる
不思議そうにパフュームをみると、何かに耳を澄ませている様子である
 
 「……どうしたの?」
 「しっ……何か聞こえない?壁っていうかこのコンクリっぽい壁の向こうから」
 「確かにガリガリって何かを削るような音が……え!?エネミーがいる?何でそんなとこから!?」
 「あ〜ホラ、そういえばさ……あいつ等付いていたよね右腕に……ドリル」
 「あ、そっか!ドリルって元々そういう使い方だもんね!」
 
あはははは〜と一通り笑いあった後、慌てて臨時の防空壕から飛び出すパフューム達
刹那、ものすごい轟音と土煙が穴の奥から吹き上がり
『ドォリィィィィィィル!!』という叫び声と共に10体の【メカフリューネ】がドリルを回転させて飛び出してきた
 
 「ねぇ!これ元々なんのゲームだったっけ?」
 「銃と剣と魔法のファンタジーRPG!」
 「ベースがそれなのにどうやったらスーパーロボットのノリになるのよ!これなんて無理ゲー!?」
 「!?……お姉ちゃん止まって!そこにまた10体いる!!」
 
反応を感知し、アダムが叫んだ時には時すでに遅し
曲がった先には10体並列した【メカフリューネ陸戦型】がドリルを突き出して立っていた
高速でうなりを挙げるドリルの付いた右手の二の腕を、しっかり左手でホールドしている……どう見ても射出である
 
 「あ、ロケットの方なんだ〜……あはは〜良かった先端からビームでなくて……それもありそうで怖いけどね☆」
 「納得しないで!もうまとめて飛んでくるよ!回避場所を……」
  
完全なニギヤカ世界に感情が飽和しかかってるパフュームを叱咤し、何とか攻撃を回避しようと試みる
だがそんなアダムの決意より先に、ファンタジーではありえない射出効果音と共に10本のドリルが発射された
【必殺=必ず殺す】という説得力と共に迫るそれに目をつぶって覚悟を決め、丸ごと二人は被弾する
 
……しかし予想よりずっと少ないダメージと被弾数に目を開けると、スキル独特の光が二人の体を包んでいた
 
 「【オートガード】と【オートバリア】?一体誰が?」
 
驚くパフュームだが、すぐに目の前に立つ人影に気がつく
そこには【シールドマスタリー】で攻撃のいくつかを防御する騎沙良 詩穂(きさら・しほ)の姿があった
 
 「よかった間に合って!!二人とも、ここは任せて!!」
 「二人は安全なところに、こっちよ!」
 
新たな声と共に、パフュームの肩に手が置かれる
手の主を見るとそこには笑顔の霧島 春美(きりしま・はるみ)月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)が立っていた
そのまま二人を誘導する春美達に、先ほどの穴から追撃してきた10体の【メカフリューネ】が迫るのが見え
アダムの顔色が変わる……だがそんな彼を安心させるように、元気にあゆみがポーズを決めた
 
 「心配無用、愛のピンクレンズマン月美あゆみとマジカルホームズが来たら勝ったようなものよ!
  春美は二人をよろしくっ!レンズよ愛を導け!」
 
言葉と共に【メカフリューネ】の集団に飛び込んでいく歩み
春美に誘導され移動する中、詩穂のいた方を見ると彼女の他に縦横無尽に鉄騎の中を暴れまわる二つの影が見える
目を凝らすまでもなく、そのシルエットと聞こえる声で容易に誰だか判明する
 
 「うじゃうじゃと沸けばいいってもんじゃないんだよ!
  そんなニギヤカな方法で、私より目立つなんて許さないんだからね!」
 
叫び声と共に小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は歴戦の証である【ブライドオブブレイド】を嵐のように振り回す
傍らでは、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が両手の【スピアドラゴン】を駆使し
鮮やかな的確さで、彼女の取り逃がしを処理するがごとく次々と【メカフリューネ】を落としていた
 
先ほどの混乱の極みのような逃走劇から、一転した形勢逆転を見届ける中
春美に誘導され、ひとまずの安全圏に避難したパフュームが、ひとまず彼女に礼を述べる
 
 「ありがと!……でも、みんなどうしてここに?」
 「さんが彼の事を探してるのよ、私達にも捜索以来のメッセージが届いたの
  皆、あなたと合流しようって思ってたから協力したのよ」
 「僕の捜索?」
 
春美の口から自分の名前が出て、驚くアダム
その自分の存在意義を忘れ去っている、意外そうな顔に思わず噴出しそうになりながら春美は言葉を続ける

 「そうよ、今このVRワールドで起動してるナビはあなただけなの
  他のナビAIを起動させるには、運営側としてシステムとリンクしてる貴方の承認が必要って聞いたけど」
 「………あ、そうか」
 「急いで準備してもらえる?貴方からナビデーター保有プレイヤーにはコンタクト出来るんでしょ?」
 
春美の言葉にアダムが頷く中、詩穂とあゆみが起動準備の為に戻ってくる
迎撃で数が減ったものの、未だ外野の攻撃は収まってはいない……美羽達だけで長い間相手をするのは難しいだろう
 
 「あたしも足止め手伝ってくる!アダム君は……」
 「うん!わかってる」
 
迎撃に飛び出すパフュームと目をあわせ強く頷いた後、アダムは目の前にシステム用のコマンドウィンドウを展開させる
目めぐるしく右手の指を動かし、コンバート承認の画面を出現させると共に他のプレイヤーにメッセージを送っていく
 
 「あゆみさん!詩穂さん!コンバート用のデータークリスタルを出して、強く握って下さい
  親プレイヤーとリンクしてイメージを形成します!30秒後にプログラム実行します!」
 
システム側に回ったせいなのか、急に大人びたアダムの口調に驚くがそこに触れる余裕はない
急ぎ二人がアイテムウィンドウを展開し、クリスタル状の【データー結晶】を実体化させると、大切に手に包み胸に抱える
前フィールドの【AI所持プレイヤー】に緊急メッセージが、たったアダムから今送られているから皆も同様に動いている筈
 
 「カウント20秒前……10秒前……5・4・3・2・1……コンバートプログラム実行!」 

その準備時間は推定30秒……アダムは正確にカウントすると、勢い良くコマンド実行のボタンを押した
刹那、あゆみと詩穂の眼前に小さなプログレスバーが現れ、手元の結晶が手を透過して眩しい閃光を放ち始める
その光芒に目あけている事が出来ず、硬く目を閉じる中……二人は手の中の硬い感触が別の物に変化していくのを感じていく

やわらかく、暖かいそれがずっと前に繋いだ小さな手の温もりだと気がつくのと同じくして、目の前の光が弱まっていく
それと共にゆっくり開いた目の前には、あの【仮想都市】で時を過ごした愛しい【我が子】の姿があった
その身を形成していくプログラムの流れに身を委ねる様に、目を瞑ってはいるがその手は硬く自分達と握られている
その短い時にも拘らず、愛情と共に触れ合った幼い姿に、あゆみも詩穂も目の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じた

やがて、目の前のプログレスバーがプログラム実行完了の表示と共に消失し、ゆっくりと二人の少女が目を開ける

 「愛、久しぶりー!」
 「うわぁぁ!?びっくりした!ママ久しぶり!……ママ?」
 「へへへ〜泣いてないよー、うふふ会いたかったっ☆」
 
愛しの娘が口を開くよりも早く、あゆみは我が子……【月美 愛】を力いっぱい抱きしめる
満面の笑顔の目尻に小さく浮かぶものは愛から見えなかったが
それを知っているかのように愛もやさしく母を抱きしめるのだった

 「……また会えたね、おかあさん」
 「うん……うん……そうだね、詩音」

そして詩穂も目の前で優しい笑顔を向ける【詩音・シュヴァーラ】の姿を、ただ黙って抱きしめることしか出来ない
強く、強くわが身を包む詩穂の髪に優しく触れながら、詩音は遠くで照れくさそうに見つめるアダムに微笑んだ
 
 「アダムくん!詩音だよ☆元気だった?」
  
 
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 
 
 
コンバートが無事終えることが出来たのは、アダムの周囲の者だけでなかった
メッセージによる指示通りに【データー結晶】を強く握り締めた者から次々と電脳世界の【我が子】達が蘇っていく

実はゲームだけでなく、参加によってもたらされる子供たちとの邂逅が目的のプレイヤーも少なくはない
黄泉耶 大姫(よみや・おおひめ)もいち早く我が子【千里】との再開を楽しみにしていたのが
この混乱が理由で先延ばしのままになっており(本人的には、このトラブルで離れ離れになっていたとさえ思っていた)
邪魔をする【メカフリューネ】を倒しながらフィールドを彷徨っていた

念願の思いを邪魔され、システムさえ破壊しかねない激情が胸を駆け抜ける中
ようやく事情を理解している清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)と出会い
同じくして、アダムから届いたメッセージを受け、ようやく愛しの【我が子】との再会を果たしたのであった

かくて、目の前に現れた【千里】を、大姫は万感の思いで強く抱きしめる

 「千里、か…?少し大きゅうなったようじゃのう…」
 「母上!どうしてここに…!いや、待って下さい……今何が起こっているかを……」
 
目覚めてすぐの母との邂逅と抱擁に千里は混乱するが、すぐに自分に流れ込んでくる情報を整理するべく目を瞑る
その僅かばかり成長した姿と、電脳の存在を認識せずにはいられない彼の行動を様々な思いで大姫は見つめる

 (最後に会うた時より些か成長して見えたのう……これが仮想空間でなければ………
  いや、妾にとっては『ここにいる千里』こそが我が子、この期に及んで何も言うまいて)
 
見れば【我が子】の復活を手助けしてくれた北都とクナイも我が子【清泉 月(ルナ)】と再会を喜んでいるようである
本来なら共に喜びを噛み締めたい所だが、どうやら自分達を発見して新たに現れた【メカフリューネ】がそれを許さない様だ

だが、その無数の姿に先程まで胸に渦巻いていた激情を思い出した大姫にとっては、10体程の数も敵にもならず
千里が情報から事態を把握し、北都達が十分な抱擁を交わし終わり、それぞれが迫っている敵に気がついた頃には
無粋な機械人形は大姫の手に握られた巨大な鋏【舌切り鋏】にて全てが破壊され、無数のポリゴンとなって散り消えていた

 「母上が敵を倒すお姿……初めて見ました」
 「そう言われると感想を聞きたくなるが……どうじゃ?剣を振るう母は鬼の様か?」
 「いいえ!感服しました!母上は……お強いのですね!
  千里は皆さまのお役に立てそうにありません……この世界では私は戦えず、駆けることしかできないのです」
 「よい、戦う事が強さとは限らぬ、そなたはこの母が守れば良いのじゃ、安心せい
  しかしこの数、流石に妾だけでは手に余る、誰ぞ近くにおるようであれば手を借りたいものじゃがのう」
 
己が非力に俯く千里の頭を優しく撫でる大姫……触れ合いを続けながら、状況を彼女が案じる中
北都が彼女に提案とばかりに声をかけた
 
 「その事なんですけど、大姫さん
  子供たちはどうやら【アダムくん】を中心にお互い強く結びついているようです
  ナビゲーションAIの特権なんでしょうね、メッセージを解さずに通信や、お互いの位置の把握ができるみたいで……」
 
北都の言葉に月がうんと頷く
 
 「るな、アダムくんの声が聞こえたよ!
  これから【ぱふゅーむ】ってお姉さん達と塔を目指すんだって!わたし、アダムくんのお手伝いがしたい!」
 「そんな!月、何かあったらど……もがががが!?」
 
心配が嵩じて止めようとするクナイの口をやんわりと押さえ、北都は提案を大姫達に伝える事にする
 
 「この混乱を止めるには、ご存知の通りこのゲームを規定のルールに沿ってクリアしないといけません
  やはりあの塔にいるボスを攻略する事が第一です……私達も塔を目指し、アダム君たちと合流するのがいいかと」
 「それなら私は、皆さまを塔へお連れしましょう!それこそがこの世界での千里の役割ですから!」
 「塔へ導く…?左様なことができるのか!千里はまた聡くなったのう……」
 
言葉と共に大姫の手が千里の頭を撫で、嬉しそうに彼の顔がほころぶ
頭を気がつけば、美羽とコハクが戦闘を終えたらしく、こちらに戻ってくるのが見えるようだ
月を気遣い、北都達と共に今の会話とこれからの行動を説明する千里の姿を、大姫は感慨深げに見つめる
あの子の存在理由が理由なので会う機会は限られるけれど、会う度に感じる成長が愛おしい
 
 (……ほんに、子の成長の何と早き事か)
 
一時は仮初と嘆いた事もあったが、今は誇りをもって彼を愛しい我が子と呼べる
 
 「…疾く駆けよ千里。母はいつでも見ておるからの」
 
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 
 
 
 「久しぶり!ダディ……って言いたいけど、誰この女?」
 
アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)の手により無事コンバートを終えた【チセ】の開口一番はそれだった
折角の再会を祝い抱擁を交わしたいのだが
何故か傍にいる女が興味深げに自分の頬をつついたりあちこち触ったりして非常に邪魔なことこの上ない
そんなチセの目線にも動じなかったセシリア・ノーバディ(せしりあ・のおばでぃ)だが、流石に剣呑さ溢れる言葉には手を止めた
 
 「この女とは失礼ね、一応あなたと同じパパーイの娘よ」
 「パ……まぁいいわ、あなたもダディの娘、なの?じゃあ、ワタシとおなじ名前…『チセ・ハヤシダ・ゾディアック』?」
 「いえ、名前は違うわ…『セシリア・P・ゾディアック』」
 「ふぅん……あれ?ミドルネームが違うって事は……」
 
一方的に思考をめぐらせ、何故かこちらにキッと鋭い目線を投げかけるチセ
そんな久しぶりの再会に、やれやれとため息をつきながらアルテッツァは自らの疑問をセシリアに投げかけた
 
 「あなたが私の名前を名乗る以上、『ノーバディ』が本名でない事は予想できましたが……しかし【P】ですか
  ボクの身の回りには、【P】という名字の女性はいませんが?」
 「知ってる?ブラジル語圏ではミドルネームが母の名字にもなるって事
  まぁ、今日はこの子除けば実質二人きりだし、パパーイだけに言っておくわね……Pは【プレアデス】のPなの」
 「【プレアデス】…それは!!」
 
【P=昴=すばる】という連想に、我がパートナーを思い浮かべるアルテッツァ
一方的な会話の流れに再会の抱擁すらお預けで不満げだったチセも、同様の事を思い立ったらしい
何やらAI専用のコンソールウィンドウを開いて操作を始めている
二人がそれを覗き込むと、それはプロフィール設定画面のようで【母親】の名前が【六連すばる】に変えられていた
途端、僅かばかりに外見年齢が6歳程若返りながら、チセの養子が微妙に変化する
 
 「こういうことかしら?……年齢は10才程度、随分性格は穏やかになるのね、これがあなたに近い容姿かしら?」
 「うん、昔のわたしそっくりになった。どう?パパーイ」
 「どうと聞かれても、私は幼いあなたを知りませんよ?シシィ
  ……しかしチセ、あなたいつのまにそういう設定変更が可能になったんですか?」
 「大人のくっついた離れたは今でもパラミタでも変わらないでしょ?そういう場合の新しいシステム措置みたい
  まぁ頻繁にやられると倫理的にアレみたいだから、大分設定操作の奥に隠されてるみたいだけどね
  ワタシだってしょっちゅう変えられるのはゴメンよ」
 「私もこれ以上の情報提供はおしまい
  わたしはその存在の娘で、彼女にパパーイは殺されるの…それを無くしに来た、そういう事よ……あ、そうだ」

己を詮索する会話を切り上げ、セシリアはいい事を思いついたという感じでチセの傍に寄る

 「チセだっけ?あのさ、データ弄れるんだったら、こういうこと出来ない?」
 「……まあ、服装データの外見だけだから変更は可能だけど……」
 
セシリアに何やら耳打ちされながら、設定の微細な変更を促されているチセ
そんな二人を見ながら、アルテッツァは今の僅かばかりの会話に含まれた情報を反芻する
 
【プレアデス】とチセの設定によるセシリアとの容姿の類似
だが彼女のブラジル式のネーミングは、どちらかというと……かの林田 樹(はやしだ・いつき)の縁を感じさせる
そんな未来まで彼女との確執が続くのだろうか?今この時も確実にパートナーを取り巻く全てが変わっていくというのに?
 
 (つまり、彼女を語る別の存在が生まれることを阻止しに来たという訳なのですね
  それが成功した暁には…シシィ、キミは消えてしまうかもしれませんよ?)
 
とはいえ、彼もそれ以上の思考を今回は切り上げることにする
なぜなら、今自分達がここにいる【現実】を示す無数の敵が近づく気配を感じたからだ
その【メカフリューネ】の存在を娘二人も察したようで、遠くの敵影を不敵に見つめる
 
 「あっちゃあ、思いっきり遊ぼうと思ってたのに……まぁいいわ、ゲームはゲーム!派手に暴れてやるから」
 
楽しそうに装備を展開するセシリアを見ながら、チセが甘えるのは今しかないとばかりにアルテッツァに身を寄せる
 
 「ダディ、彼女はとても明るいわね……データで推測すると大人しい性格のはずだけど、ワタシもああなるのかしら?」
 「データーはあくまで可能性ですから、あなたはあなたですよ
  さて、こちらもいい加減本来の目的を果たさないと……ついてきてください、チセ」
 
無意識に頭の上に乗せられた彼の手の温もりを感じ、嬉しそうにチセが笑ったのをアルテッツァは知らない
それぞれに何かを欠落させた親子同士が、楽しげに戦場を駆け巡るのはあと数分後の事になる