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シャンバラの宅配ピザ事情

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シャンバラの宅配ピザ事情

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 もちろん、ピザの配達に向かっているのは、『チーム時代錯誤』の2人だけではない。
 同じくバイト配達員の瀬乃 和深(せの・かずみ)も、スレイプニルで配達に勤しんでいた。
 スレイプニルは小型飛行艇の4倍程のスピードで飛行できる。
 30分以内に配達という期限があるのだ。バイクなどを利用するよりか、はるかに効率が良い、と考えたわけである。
 しかし。
「うーん。やっぱミスったかなぁ。コイツじゃ燃費が悪すぎる」
 スピードは確かに早いが、燃費がとても悪かった。配達に出て5分も経っていないのに、スレイプニルは燃料切れで速度が落ちてしまっていた。
「ふむ。これは由々しき事態というやつか」
 さらに、スレイプニルは匂いにつられ、ピザに手をだそうとしていた。
 それを見て瀬乃は思いつく。
「うん。1枚や2枚問題ないだろ」
 瀬乃は、配達すべきピザを、スレイプニルの燃料として利用することにしたのだ。
 そして、ピザを取り出そうとした、その時――、
「――ッ!!? うぉッ!?」
 その瞬間、瀬乃は何が起こったのか分からなかった。
 理解できたのは。
 何か黒いモノが自分の視界に入ったことと、
 自分が取り出そうとしていたピザが、さらには配達すべきピザ、カレー、ポテトなどが全て無くなっている、という結果だけだった。
 瀬乃はしばらく呆然として、なんとなく、理解した。
「ん、あぁ、盗られたのか」
 何に盗られたのかは分からないが、とにかく、盗まれたのだ。
「周囲には……何もいないな。……オイオイ何者だよ、この俺から盗んでおいて、さらに逃走に成功するなんて」
 しかし、彼は冷静だった。
 決して激情して犯人を追ったりすることはなく、自分の今すべきことを整理する。
「今更追ったところで、取り返すどころか犯人を見つけることさえ出来ないだろうな。幸い、配達先は店から近場だから、1回戻っても大丈夫だろ」
 彼は呟き、一旦店に戻ることにした。