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リアクション
「ったく、ここの連中はどいつもこいつもヒャッハーとか叫んで代金踏み倒したり女と見たらレイプしようとしたりでかよわい乙女にはきつすぎるわよ!」
広い荒野で無意味に叫んでいるのは、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)である。
「この状況を見てアナタをかよわいと思う人はいないわよ」
と、冷静に突っ込むのはパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
「あ、君、大丈夫だった?」
と、セレアナは傍らの少年に声をかけた。
「はあ、まあ、僕一人でなんとかできたけどね」
少年の名は相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)である。
彼らの足下には、数人の蛮族が倒れていた。
何故このような状況になったかというと、
配達途中の洋考が蛮族に襲われ、
同じく配達途中であったセレンとセレアナがそれに気づき、参戦した、
といった感じである。
セレンらとしては、同業者の少年を助ける為として参戦したのだが、当の洋考としては、正直、迷惑であったりする。
(僕はじっちゃん達の囮だったんだけどね…。つーかじっちゃん達は何してるんだ? ……まぁいいか。とりあえず指定の場所まで配達に行こう)
「それじゃ、僕は配達があるので、先に失礼しようかな」
「そうね。私達も時間もないし、とっとと行くわよ。セレン」
「…ってかどうしてあたしはこんな面倒なことやっているのかしら」
「セレンが無駄遣いするからよ。まったく…ここでちゃんと働いておかないと、月末までもたないんだから」
と、そんな会話をしているところに。
突然に。
唐突に。
災厄はやってきた。
「……喰らう……喰らう………くら…」
と、呟きながら、呻きながら、何かが3人の元に突進してきた。
「ッ!! 何!?」
セレンが声に反応し、二挺拳銃を構える。
「う……何コイツ、気持ち悪…」
それは、黒い怪物だった。
先述のエッツェルである。
だが、バイトの3人は怪物の本名は言うまでもなく、
怪物の目的が『ピザ』のみであることも、全くもって知ることはない。
なので、3人は、その異形の姿や様子から、自分達に危害を与える存在、何らかの抵抗をしないと、生死の問題にも関わる存在と判断した。
決めつけた。
怪物としては『ピザ』だけが目的であって、彼らに危害を与えるつもりはないのだが。
仮に、見知らぬ人間が突然『武器』を持って現れた時、しかしその人間が敵意が全く無かったとしても、必ずその人間に対して危機感や恐怖を覚えるのと同じである。
「…やるしかないってのかなぁ」
洋考は呟いた。
それを合図に、怪物は襲いかかる。
少しだけ、3人と怪物の間に見解の差異があるとはいえ。
始まってしまった戦いは止まらない。
洋考&セレン&セレアナvsエッツェル戦、開始。