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7 とりかえっこです

 風馬 弾(ふうま・だん)ノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)とともにテーブルで食事をしていました。
 なぜか男の弾が花嫁衣装を着て、女性のノエルが花婿の衣装を着ています。
「なんか、あちらが騒がしいですね」
 ノエルは広間の中央を見て言います。
 誰かが叫んでいるような声と足音が聞こえ、それが近づいてくるようですが……。
「パーティーだから、みんなはしゃいでるんだよ」
 弾はあまり気にしていないようです。
「そういう感じじゃないようですが……」
 ノエルは首を傾げました。
「それより、このクッキー美味しいよ。ノエルも食べてみろよ!」
 ノエルはそう言って星型のクッキーをノエルに渡そうとしました。その時、頭がとろんとして、不思議な気持ちになってきました。そして、思わず、
「ノエルって、綺麗だよね」
 と口走ってしまいます。
「だ……弾さんったら綺麗だなんて突然なななな何をあのそのこの…(焦)」
 ノエルは焦ってパニックになりました。
「ち……ちがう。これは」
 そこで弾ははっとしました。
 そういえば、さっきから本音を言わされるクッキーがあるとか無いとか、場内が大騒ぎになっていたと。
「もしかして、これが?」
 だとすれば、なんでそんなものを料理に仕込んでいるのでしょう。
 弾はちょうどそこに来た女中に向ってたずねました。
「女中さん、この料理は一体!? ……というか、君は、一体何をしてるんだ?」
 その女中はちょうどテーブルクロスの中に隠れようとしていた夢美でした。
「しーーーーー」
 夢美は唇に指をたてて首を振ります。
「今、あの怖い人から逃げてるの。そっとしておいて」
 そして、テーブルクロスの中に身を隠します。
「一体どうしたんだよ?」
 弾はテーブルの下にしゃがみ込んでたずねました。
 すると、夢美はこれこれこういうわけで……と今までのいきさつを話しました。
「なるほど。その福山って人の本音を聞きたくてパーティーにクッキーを持って来たのに、女中に間違えられて働かされてるって事だね」
「(コクコク)」
 夢美は滂沱の涙を流しながら答えました。
「よし! 乗りかかった船だ! 協力するよ」
「本当に?」
 夢美が目を潤ませます。
「もちろんだよ。なあ、ノエル」
「え? えええええ、はい」
 ノエルはまだパニクっていました、
 が、
「コホン」

 ひとまず深呼吸して気を落ち着けると「夢美さんのお手伝いをしたいと思います」と答えました。
「でも、夢美さんは女中と間違われて抜け出せず困っているようだよ」
 弾の言葉にノエルはしばらく考え込んで言いました。
「いい事を思いつきました。弾さんと夢美さんの衣装を交換しては?」
「え?」
 弾が自分の着ているウエディングドレスを見ます。元々は、ノエルに面白がって着せられた女装(涙)です。
「弾さんなら女の子の顔立ちですから、夢美さんと入れ替わるのも可能ではないかと思います」
「なるほど。普段は女の子と間違われやすい僕なので、きっと夢美さんの代わりに女中さんになれるのではと思います(涙)」
 こうして、二人はテーブルクロスの中に隠れて衣装を取り替えました。
 女中の衣装をして現れた弾を見て、例の中年女性が鬼のような顔をして近づいてきます。
「こんなところにいたのかい。さあ、ぐずぐずせずにおいで」
 夢美と弾はそんなに似ているわけでもないのに、連れて行ってしまいました。
 どうやら、余程目が悪いようです。
「ありがとう、弾君。このお礼はいつかきっとするから」
 夢美は涙を流して弾を見送りました。

「さあ、これで堂々と福山君を探しにいけますね」
 ノエルが夢美の肩を叩いて言います。

「でも、福山さんを探しに行く夢美さんに、一つだけアドバイスしたいと思います。それは、「本当に大切なのは、相手の本音ではなく「あなたの本音」なのでは?」ということです。仮に福山さんに他に想い人がいたとしても、夢美さんが彼を本当に好きなのならば、告白して頑張るしかないでしょう。彼の本音がどうあれ、取る行動は一つのはずです」
「その通りね」
 夢美はうなずきました。
「ありがとう、ノエルちゃん。なんだか勇気がわいてきたわ」

 そのころ、広間ではセレアナが福山君を見つけていました。
 そして、セレンにテレパシーを送ります。
「ターゲットを捕獲したわ」
「分かった。でも、肝心の夢美がどこかにいっちゃったのよね」
 困り果てているセレンの前に。ウェディングドレスを来た夢美がかけてきます。
「セレンさああああん」
「ああ。夢美。探したのよ。ちょうど、彼氏が見つかったみたい」