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リアクション
「愛しのソフィアお姉さまのお母様にきちんとご挨拶するためにも、ここは一つ悪い奴らにガツンとくらわせてやって、事態を解決しなくちゃいけないよね!!」
魔槍「ゴボウ」を振り回しながらレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)がテミストクレスへと向かっていく。
「レオーナ様!!」
あまりにも無謀な突撃に、クレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)は泣きそうになりながら目くらましになりそうな光術を放つが、テミストクレスは意にも介さずレオーナの肩を掴んだ。
「ティーパーティーでは、和菓子でお姉さまを守ろうとして華麗に散ったわ。……今回は、同じ過ちは繰り返さない。……あのときは和菓子で失敗した。でも!!!」
そんな状態にも関わらず怯えもせず高らかに語るレオーナに周囲は思わず動きを止める。
「和菓子が死んでも、代わりはいるもの」
突然声の表情を消しそう呟いたレオーナは、なぜか握りしめていて手の熱で溶けかかった板チョコレートをテミストクレスの顔面へと打ちつけた。
「き、貴様!!」
「やっぱりね! 洋菓子ならソフィアお姉さまを守れることうけあいだわ!!」
「レオーナ様違います、攻撃が効いたわけではなく完全にただの精神ダメージです。ああ……これが涙。泣いているのは私?」
嬉しそうに叫ぶレオーナの姿を見て、クレアはそっと涙をぬぐう。
「レオーナ、そこにいる者どもを、倒すのだ」
「……!」
「レオーナ様!!」
「しまった!!」
ソフィアが悔しそうに声を上げるのと同時に、テミストクレスによるギアスにかけられたレオーナが、仲間たちに向かってチョコレートを振り上げる。
「わわわ〜……純粋に厄介です〜」
仲間を攻撃するわけにもいかず、チョコレートを避けながらヴァーナーが困ったように声を上げた。
「ヴァーナー、すまないが、クレアと一緒にレオーナをどこかに避難させてくれないか?」
「分かりました〜。レオーナおねえちゃんにはちょっと寝ててもらうようにするです〜。クレアおねえちゃん、いいですか?」
「はい……本当にすみません……」
クレアは半泣きでヴァーナーとともにレオーナを押さえつけるとそのまま後方の安全な場所へと退避した。
「なるほど、ああやってかけるわけか……趣味の悪い、せこい能力だ」
「鉄心!?」
呟くなり隠密行動をやめ、突然テミストクレスの前に姿を現した鉄心に思わずティーが叫んだ。
魔銃を突きつける鉄心に、テミストクレスがすかさず言葉をかける。
「鉄心よ、ソフィアたちを倒すのだ」
「……ぐっ……」
「まさか!?」
ゆらりと振り返ると、鉄心はソフィアに向かって銃を構える。
「ソフィア!」
「私は大丈夫だ。テミストクレスを!」
心配そうに駆け寄ろうとする小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)をソフィアは制する。
「鉄心がギアスに……? かかるとは思えないが……」
武器を構えたまま近づいてくる鉄心を見ながらひとりごちるソフィアの隣にティーが駆け寄る。
テミストクレスを背にした鉄心は二人に向かってふ、と目線を送った。
「なるほど、そういうことか」
「鉄心、しっかりしてくださいっ!」
ソフィアの低い呟きに被せてティーがらしくもない大声を上げる。
そのままソフィアは鉄心と交戦を始めた。
「ふふふ……ははは……仲間と討ち合う感覚はいかがですかな?」
「ギアスを使うときは、絶対に言葉に出すんだね。それさえ封じれば……!」
「ああ、まずはあいつを抑え込むぜ」
美羽の言葉に桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は頷くとエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)、エリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)、リーゼロッテ・リュストゥング(りーぜろって・りゅすとぅんぐ)と素早く視線を交わす。
煉は黎明を起動し、大剣を形成するとテミストクレスへ向かって一気に斬りこんでいく。
思わぬ強力な初撃に一瞬テミストクレスがひるんだ隙を見て煉がホワイトアウトを放ち目くらましをかます。
「姫っち、頼んだぞ!」
「えぇ、任されたわよ」
魔鎧の姿で煉に纏われていたリーゼロッテは煉と分かれて姿を戻すと、テミストクレスの正面で大降りで剣を振り下ろす。
「ええい、こんなもの……!」
「今がチャンスよ、煉」
テミストクレスが自らの剣を受け止めた手ごたえを感じた瞬間、リーゼロッテが合図を出す。
それをきっかけに、背後に回り込んでいた煉が強烈な一撃を放つ。
「エヴァっち! エリー!」
「続けていくぜ!」
「続けていきます!」
ギリギリで反転し煉の攻撃を受け止めたテミストクレスにエヴァとエリスは同時に声を上げる。
「盾となるのだ!!」
疾風突きから目くらまし、炎による侵食へと転換するエヴァと攻撃突きから二刀流、連続攻撃へと様々に形態を変え追撃するエリスだったが、テミストクレスの指示で強制的に飛び込んで来た龍騎士たちと鉄心が盾となり、テミストクレスには攻撃が届かない。
ティーが必死にチェーンを延ばし、鉄心へぶつかりそうだった攻撃をギリギリではじいた。
「くそっ!!」
「美羽!」
「行けるよっ!!」
ソフィアの声にそう返した美羽がテミストクレスとの間合いを一気に詰めるのを確認した瞬間、ソフィアは仲間を信じて叫んだ。
「鉄心!」
「ああ!」
テミストクレスの盾となるため、ギリギリまで近づいていた鉄心はソフィアの声を合図にテミストクレスを振り返るとアクセルギアとポイントシフトを併用して奇襲を仕掛ける。
「何ぃっ!?」
「仲間を馬鹿にするからだよっ!!」
思わぬ鉄心からの攻撃に叫ぶテミストクレスの口に、背後から飛びついた美羽が猿ぐつわを噛ませると自力では取れないよう固く結び、離脱する。
同時にテミストクレスから距離を取った鉄心にティーが駆け寄った。
「騙されるもんだな」
「力を過信しすぎて油断したんだろうな。所詮、全部他人の力なのに」
鉄心の言葉に、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が苦々しそうに返す。
「残念だったわね哀れな龍騎士さん。ご自慢の言霊によるギアスでいくら大勢操ってもそれは仮初の繋がり。でも、それももうおしまい。あたしたちの固く結ばれた絆の前には無力であって当然の結果でしょう? 煉!」
「ああ」
言葉を発せないテミストクレスに向かってリーゼロッテは悠然と微笑むと再び鎧となって煉を護る。
「任せたぜ、煉!」
「任せましたよ、煉さん!」
エヴァとエリスの声が重なったのを合図にしたかのように、煉がテミストクレスの間合いへと素早く飛び込むと一撃を叩きつける。
光の翼を生やしたコハクが、両手の日輪の槍を凄まじいスピードで突出し、テミストクレスへと飛び掛かる。
息を合わせて美羽も大剣をふるい、テミストクレスと周囲の龍騎士たちの動きをけん制していく。
「シャンバラのルカルカ・ルー。皇剣アスコルドで龍騎士である貴方の相手をするわ!」
「造反者であろうとも騎士への敬意を払う、か。そなたらしいな」
帝国の武具である鎧と足鎧と、大帝の力を宿す剣でテミストクレスと対峙するルカルカの姿に、ソフィアが目を細めた。
「そう? もちろん、手も抜かないわよ!!」
ルカルカは剣の前衛に立ち、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が槌の前衛、俺が銃の後衛と指揮、淵が弓の後衛の陣形を取ると、龍騎士たちへの攻撃は最小限に、テミストクレスを抑え込むための攻撃を繰り出していく。
合間合間で美羽とコハクも連携し、テミストクレスへの連続攻撃を四方八方から休むことなく続けていく。
ソフィアは仲間たちをフォローするように、龍騎士たちの動きを制限するべく剣をふるった。
「美羽、いけそうだ!」
「コハク! うん、これで終わりにしよう、ソフィア!」
「俺も合流しよう」
「よし、四方から行くぞ!」
コハクのタイミングを合図にした美羽の声にソフィアはテミストクレスに向き合うと、美羽とコハク、ダリルとともに一気にテミストクレスへと斬りかかる。
「ぐぅぅ……」
テミストクレスが体勢を崩した隙に、淵は弓に魔力を込め連射を続ける。
同時にカルキノスは槌を投擲するとエバーグリーンで槌の蔦を急成長させる。
淵の弓の効果で巨大化した帝国蔦がテミストクレスをぐるぐると縛りつけてゆく。
「なんとも象徴的な……」
「因果応報って奴だな」
淵の言葉にカルキノスが静かに返す。
「もういいだろう、雌雄は決した」
低いダリルの声に一同は攻撃の手を止める。
「討ち取る? それとも別の道を選ぶ?」
ぐるぐる巻きのテミストクレスを見下ろしながら、ルカルカはソフィアに尋ねた。
「ソフィア!」
テミストクレスに意識を集中していた一同の背後から、他の龍騎士たちが飛び掛かってくる。
とっさに気付いたコハクが攻撃をはじいた。
「ギアスの力は強力……テミストクレスが解くか、力尽きない限りは解けない」
ソフィアが苦しそうに呟く。
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