First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last
リアクション
歌い手達の腹ごしらえが終了して少し後。
「て、敵が来たのか。よよしここは俺様が……」
グィネヴィアの近くにいるケルピー・アハイシュケ(けるぴー・あはいしゅけ)はリースの知らせを受け頭上を見上げて宵一達の戦闘を見た後、とある方向に視線を向ける。リースの話しでは地上にも潜んでいるとの事で詳細は分からなかった。あまり近付くと気付かれる恐れがあるので。
「……声と体が、震えているみたいですけど……大丈夫ですかぁ」
日奈々が同じグィネヴィアの守護者としてケルピーに言葉をかけた。
「な、俺様はべべべ別にビビッてなんかねぇからな! 足がブルってんのはアレだ。敵にビビッてる動物の真似だかんな! よよし、見回りに」
ケルピーは声と足を震わせながら必死に強がりを口にする。外見上、不自然に見えないように治療用道具を乗せた台車を引く動物を演出している。それを生かしながら幽霊城付近の見回りついでに伏兵の詳細を探りに行く。
「行っちゃったですぅ」
日奈々はそのまま『殺気看破』で歌い手達の警護を続ける。付近にはマーガレット、ベルクが設置した罠、少し離れた所にはリース、陽一、近遠達がいるので何も心配する必要はない。ただ、警戒だけを怠らないようにするだけだ。
「……ただの動物、俺様はただのただの」
足を震わせながらゆっくりと幽霊城付近を歩く。荷運びのただの動物だと自分に言い聞かせながら。
見回りの成果かグィネヴィア達に接近中のモンスターと鉢合わせしてしまった。テミストクレスが配置した伏兵だ。
「ひひゃぁぁぁぁ、てて敵だぁぁぁ」
ケルピーは大きく嘶く、いや必死の叫び声を上げながら味方に敵を知らせる。
前足を上げて必死に抵抗するも相手は全く意に介さず、台車破壊を続ける。
「……近くだな。我が行く」
少し離れた所にいた『インビジブル』をまとうイグナが瞬時に気付き、『バーストダッシュ』で駆けつけ、『白兵武器』と『ソードプレイ』を持ったイグナは熾天の焔で攻撃を受け止めそのまま打ち倒しモンスターを炎で包んだ。
「無事か」
戦闘しながらイグナはケルピーの無事を確認する。
「べべべつに俺様助けなんて呼んでないんだからな。てて敵を知らせただけだ」
真っ青のまま強がりを通すケルピー。
安心もつかの間、反対側の森から後方支援を潰そうと従龍騎士の魔法が飛んで来る。
「……魔法攻撃は俺が」
モンスター相手に手が離せないイグナに代わり陽一が深紅のマフラーを伸ばし、イグナとケルピーの身を護った。
「……助かる。ここを離れるぞ。貴公の身は我が護る」
イグナは瞬時に『オートバリア』を使い、陽一にこの場を任せてケルピーの護衛をしながらこの場を急いで離れた。
「相手はあたしに任せて!!」
ケルピーの悲鳴を聞き、駆けつけたマーガレットが陽一に離れるように指示。
「分かった」
陽一は横に引っ込みマーガレットと交代。
「……あたしが後方支援の仲間を護るんだから」
マーガレットは『ファランクス』でダンシングエッジとダンシングバックラーを構え、戦闘準備を整えて敵の魔法攻撃を防ぐ。
「……後は、頼む」
この場をマーガレットに任せ、陽一は他の場所へと移動。
「よーし! 飛んじゃえ!」
マーガレットは移動する陽一に視線で見送った後、『歴戦の防御術』も併用し、ある程度攻撃を防ぎ隙を見て『風術』で魔法を使う従龍騎士達を吹っ飛ばした。
「終わったよ。この人達の回復よろしく!」
「了解でございます」
マーガレットの戦闘終了の声を聞きつけアルティアが登場。『命の息吹』で従龍騎士達の手当をした。
マーガレットの次は
「……敵も多いですから少しだけ迷走させます」
近遠が現れ『ホワイトアウト』を森に使った。これで敵侵攻を遅らせるだけでなく少しの間だけ敵兵を傷付けずに済む。
「ここまで来れば心配なかろう」
イグナはケルピーをユーリカの元に連れて来た。任務を終えたイグナは見回りに行った。
「……あああんな敵、何とも思ってなんかねぇからな」
ケルピーは襲われたショックが落ち着かない様子。
「もう大丈夫ですわ」
ユーリカはケルピーを落ち着けようと言葉をかけた。
「そそうだな」
ケルピーは少しビビリながらも答えた。台車は破壊し尽くされていた。元々偽装品を乗せていただけなのでこちらには何の影響もない。
「これを飲んで少し落ち着いたらよろしいですわ」
ユーリカはスープ『ギャザリングヘクス』をケルピーに手渡した。
「あぁ、飲む。だだけど、俺様は落ち着いてるぞ。こここれは武者震いだ」
強がりを言いながらケルピーはスープを受け取った。
「……上空に敵です。攻撃が来ます」
敵接近を伝えるリースの声。
「てててて敵?」
ケルピーは恐々と後方支援を壊滅させようとする空を走る従龍騎士達を見上げた。
「攻撃が来る前に落としちゃえばいいわ」
戦闘を終えたばかりのマーガレットが『舞い降りる死の翼』で地面に叩き付けるが、ダメージを受けたのは乗り物となっていたワイバーンで騎乗していた従龍騎士達は何とか無事。
「ひやぁあ!?」
ケルピーはスープの器を持ったまま悲鳴を上げる。
「大丈夫ですか!」
戦場での負傷者救出をしていたフレンディスが『歴戦の立ち回り』で忍刀・霞月で攻撃を受け止めた。
側には下忍・下山忍さんとポチの助の大きな豆柴の猛き霊獣に運ばれている敵側の負傷者がいた。
そのフレンディスの背後を狙うしぶとい従龍騎士がいた。
フレンディスが切り裂かれる前に
「……ったく」
ベルクは『行動予測』で敵よりも素早く動き、双翼蛇の杖を振りかざして周囲の空気を凍てつかせ雷を落とし、敵を一掃した。警戒した意味があったようだ。
「マスター!」
フレンディスは振り向き、ベルクに感謝。
「手伝います」
近遠も加わり『ファイアストーム』で一部の従龍騎士に火傷を負わせた。
「我も手伝おう」
「敵か」
『殺気看破』で敵接近に気付いていたイグナが熾天の焔を振るって従龍騎士を業火に包んだ。
「……終わりましたね。手当をお願いします」
近遠が戦闘終了を確認し、ワイバーンや従龍騎士の手当をフレンディス達に頼んだ。
「分かりました。マスター、この方々の治療をお願いします」
フレンディスは近遠に答えてからベルクに治療を頼んだ。
「……任せろ。しかし、難儀な戦いだな」
ベルクは引き受けながら負傷者を見た。本来なら戦う事はなかっただろうと。
「ふふー、ご主人様、治療もこの僕にお任せです。エロ吸血鬼は黙って立ってるですよ」
ポチの助が負傷兵を眺めているベルクを差し置いてズイっとフレンディスの前に出るなり『ナーシング』による治療を開始する。
「……こいつは」
ベルクはいつも通りの安定運転のポチの助を眺めた後、『我は紡ぐ地の賛頌』で傷を癒した。
「この僕の素晴らしい治療に感謝するのですよ!」
治療を終えた従龍騎士に向かってツンとするポチの助。
「マスター、ポチ、ありがとうございます」
フレンディスは二人に礼を言った。
その時、フレンディス達と別行動をしていた弾達が空から現れた。
「ノエルさんに弾さん」
「負傷者か?」
慌てた様子の弾とノエルに気付くフレンディスとベルク。
「はい。でも治療は終わってるから」
弾は何とか担いで運んでいた負傷した従龍騎士を降ろした。治療はノエルが『リカバリ』を施して完了している。
「それより」
弾は急ぐべき別の用件を口にしようとした。
そこに
「……何かありまして?」
ユーリカが会話に加わった。
「高台に従龍騎士が大勢います。誰かお願いします」
ノエルが手早く事情を説明した。
「高台ですわね。あたしが行きますわ」
ユーリカはうなずき、後の事を仲間に任せ、『空飛ぶ魔法↑↑』で弾達と行った。
地上の支援組は近遠の『ホワイトアウト』にも負けずに来る敵を迎え撃っていた。
「……やっぱり、こうなるよな。あっちは任せて俺はこっちを相手するか」
何度目かの応戦が終わった後、ナディムはため息をついていた。
周囲には敵ばかり。幾ら見付かり難い場所でも相手は戦闘の素人ではないのでいずれは潰しにやって来る。ナディムはその事もすでに予測していたので慌てている様子は無い。
「……さて」
ナディムは弓から聖剣グランドクロスに持ち替え、戦闘へ。
「大丈夫ですか」
「助けに来たよ」
ノエルと弾が駆けつけ、ノエルの白鳩の群れが敵達を撹乱し、
「ナディムちゃん、少し離れるのですわ」
ユーリカは指示を出しながら『稲妻の札』を使用し、雷を落として敵に重傷を負わせた。
ナディムはノエルが撹乱している間に雷から無事に避難した。
ユーリカの攻撃でも残った従龍騎士はナディムの聖剣グランドクロスで斬り倒されたり『ドラゴンアーツ』で気絶倒された。
戦闘終了後、
「……助かったぜ」
ナディムは駆けつけた仲間に礼を言った。
この後、倒された敵兵はユーリカの『ナーシング』で戦闘不能程度に回復させた。
ナディムはこのまま高台で宵一の援護を続け、駆けつけた者達はそれぞれ自分の持ち場に戻った。
後方支援での戦闘や支援が続く中、戦局は変わり、こちらの優勢となるやいなやテミストクレスは凶悪なモンスターカトブレパスを引き連れて来るも後方支援組は安全な場所へ避難し、支援を続けた。
グィネヴィア達の歌が戦う仲間達を励まし鼓舞し、護衛組は必死に歌い手達を守護した。
First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last