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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同時刻 海京沖合 海上
 
『残りは指揮官機、だがさっき見た一斉射撃を回避して接近するのは至難の業だな……それでもいくしかない。耐えてくれよ、相棒』
 煉はセラフィートへと語りかける。
『あの黒い“ヴルカーン”だけは遠距離からの砲撃戦だけじゃ落とせそうにないな。さっきみたいに懐にもぐりこんで被弾箇所目掛けて強力な一撃を叩き込むしかないぜ?』
 心配そうに煉へと問いかけるエヴァ。
 それに対し、煉はたった一言で答えた。
『機体を覚醒させる許可がおりないなら――このまま突っ込むまで……!』
 決死の覚悟を固め、ペダルを踏み込む煉。
『私も援護させてもらおう!』
 朗々と響き渡る声とともにセラフィートの近くに現れたのは、迅竜から飛び立ってきたグレート・ドラゴハーティオンだった。
『我が名は蒼空学園が蒼空戦士、ハーティオン!』
『ガオオオオン!』
コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)の声に続いて龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)の声も響き渡る。
『天御柱学院の仲間達の危機に、義によって推参致した! 正々堂々、勝負!』
 堂々と名乗りを上げて漆黒の“ヴルカーン”に戦いを挑むハーティオン。
『邪魔だっつってんだろッ、どいてろやァッ!』
 それに対し、漆黒の“ヴルカーン”は全火器の一斉に撃発する。
 一斉に発射された大量の機銃弾やミサイル、更には150ものサイズを持つ弾頭を前に、さしものハーティオンも押し負けて海中に沈む。
『さぁて……あとはテメェだけだなァ、えェ? 羽付きサンよォ!』
 “ヴルカーンbis”がセラフィートに狙いを定めた瞬間、ハーティオンが落水した地点に巨大な渦が巻き起こる。
『あン? 一体何が――』
 次の瞬間、大量の水があたかも竜巻のようになって“ヴルカーンbis”へと迫る。
 大量の水を“ヴルカーンbis”が被ると同時、ハーティオンが回転しながら水上に飛び出した。
 イコンほどの巨大な物体が高速で大回転すれば、多少なりとも渦を起こす事ができる。
 それによって“ヴルカーンbis”に水をかけた瞬間、ハーティオンは冷凍ビームを放った。
 冷凍ビームを浴び、“ヴルカーンbis”の機体を表面を濡らす海水が一瞬にして凍り付く。
『ガオオオオン!』
『即興で案じたとは思えない見事な一計だ、ドラゴンランダー。そして、ウェイブブリザード……見事な技だ!』
 感嘆の声を上げるハーティオン。
『あの装甲とパワーならば、動きをせき止められるのはそれでも短時間だろう……だが! ドラゴランダーの作ったこのチャンス……無駄にはせん! いざ行かん、友よ!』
『ああ……この一撃で、決める!』
 ハーティオンとセラフィートは剣を構え、“ヴルカーンbis”へと突っ込む。
『お前達がどんな正義を掲げようと関係ない。戦う力を持たない者まで巻き込むようなやつらに正義を語る資格はない……!』
『グレート勇心剣! 彗星! 一刀両断斬り……』
 ハーティオンは振り下ろした剣切り落とした必殺の一刀を力を溜めてさらに跳ね上げ、セラフィートは出力を最大にしたデュランダルを超高速で振り下ろす。
『零距離、とったぞ!』
『流星群返し!』
 炸裂する二つの剣技。
 それが“ヴルカーンbis”に与えたダメージは甚大だった。
 だが、ダメージを受けながらも“ヴルカーンbis”は立っていた。
 そして、右手に持った150ミリライフルの銃口をハーティオンに押し付けた状態で零距離からトリガーを引き、左手のクローをセラフィートのメインエンジンへと突き立てる“ヴルカーンbis”
 ハーティオンとセラフィートもまた甚大なダメージを受け、いわば相討ちの結果となったのだ。
 海中へと沈んでいくハーティオンとセラフィート。
 ガネットの上でよろけながら、“ヴルカーンbis”は150ミリライフルを海中に向けた。
『こすっからい手を使ってくれるぜェ……ケドよ、これで終わりにしてやらァ!』
 ハーティオンとセラフィートにとどめめを刺すべく、トリガーを引こうとした瞬間。
 どこからか放たれた砲撃、もとい狙撃によって“ヴルカーンbis”はクローの装着された腕を吹っ飛ばされる。
『な……ンだとォ!?』
 慌てて狙撃してきた方向にカメラアイを向ける“ヴルカーン”。
 しかし、その先にあったのは撃墜された機体の残骸だけだ。
 それもそのはず。
 その残骸は、エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)の仕込んだ偽装だからだ。
 予め水に浮き易いイコンのジャンクパーツを天学整備科からもらい、それを袋詰めにしたエシク。
 上杉 菊(うえすぎ・きく)の用意したホエールアヴァターラサブマリンに同乗したエシクは、ジャンクパーツを詰めるだけ詰め込んだ。
 そして、敵の反撃を予想し、ローザの機体が攻撃を受けるタイミングを見計らいジャンクパーツを潤滑油等と共に海上目掛け放出。
 撃墜を偽装したのだ。
 エシクと菊の二人からなる『潜水班』はある存在をサポートする為にそこにいる。
 偽装によって海中に潜伏し、海中に鎮座させたイコンホースからエネルギーを供給したウィッチクラフトライフルを構え、狙撃の時を待っている存在――グリフィズ・エクトゥスのサポートをする為に。