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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同時刻 海京沖合 海上

『機体のコントロールが戻った。どうやら迅竜がやってくれたらしい。今のうちにやるぞ――』
 ゴスホークのコクピットで柊 真司(ひいらぎ・しんじ)はサブパイロットのヴェルリアと、魔鎧として纏うリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)に声をかけた。
「はい……目標の天貫機は依然として動いていません」
「今のうちならやれるかもね。とはいえ、相手はあの天貫機だ。しかも新型。油断は禁物だよ」
 二人に頷き、機体を進めていく真司。
 その時、真司はレーダーが感知した新たな反応に気付く。
「ん? 真上から突っ込んでくる機体だと? リオ達の『V−LWS試験用ストーク』か。確か、さっき連絡が取れた時は成層圏での飛行試験中だったはずだが、相変わらず無茶をする二人だな」
 その反応が何であるかに気付き、真司は呟く。
「相変わらず無茶をする。だが、良いタイミングだ」
 空高くを飛ぶ仲間に向けて真司は叫んだ。
「リオ! 行くぞ!」
 それとともに機体を加速させる真司。
 ゴスホークは水飛沫を上げながら“シュピンネ”へと迫る。
『その機体……九校連の新型?』
 彩羽の呟く声が聞こえたと同時、ゴスホークはエナジーバーストを右拳に集中させる。
『なるほど。新型かどうかは実際に戦って試してみろってことね』
 エナジーバーストを集中させた右拳を繰り出すゴスホーク。
 だが、彩羽は余裕の様子だ。
 シュピンネは俊敏な動きで身をかわすと、ゴスホークの攻撃を避ける。
『電子戦機だからって舐めないことね。たとえ電子戦の最中といえど、その程度の攻撃を避けるだけの動きはできるわ――』
 だが、その直後、彩羽の声は驚きに震える。
『――えっ!?』
 なんと、シュピンネが避けた先に向けて、超高高度から機体が急降下してきたのだ。
 その機体こそ、リオのV−LWS試験用ストークだ。
 そして、V−LWS試験用ストークも右拳にエナジーバーストを集中させている。
 急降下からの勢いを乗せて右拳を繰り出すV−LWS試験用ストーク。
 一方、ゴスホークは海面スレスレから右拳を構えて急上昇を開始する。
「リオ! 合わせろ!」
『ええ! カウントを開始する――!』
 叫ぶ真司とリオ。
 上下から挟む形でV−LWS試験用ストークとゴスホークが“シュピンネ”に迫る。
「3!」
『2!』
「『1!』」
 カウントを刻む二人の声が重なる。
「『ダブルピンポイントエナジーバーストパンチ』!」
 再び重なり合う二人の声。
 その瞬間、二機が放つエナジーバーストパンチは“シュピンネ”を捉えた。
 咄嗟に避けるものの、完全には避けきれないシュピンネは頭部と背中に大打撃を受ける。
『やるじゃない……けど、こっちもやられてばかりじゃいられないのよ……!』
 それでも“シュピンネ”は残った力を振り絞ると、アンテナ状態にしていた両肩のネットを収束、網を丸めることで一本のロープのような形状へと変化させた。
 更に先端部分に取り付けられた錘を収束し、先端をまるで銛のようにする。
 それを左右それぞれの肩から、V−LWS試験用ストークとゴスホークに向けてそれぞれ放つ“シュピンネ”。
 すれ違いざまに放たれたそのロープは二機へと突き刺さる。
 二機はすぐにそのロープを抜いたが、既に“シュピンネ”のあがきは成功していたようだ。
 極太の大容量情報ケーブルと化した網を媒介に有線で送り込まれたウイルスはたちまち二機の活動を停止させる。
 驚く程速く、そして驚く程強力に効果を発揮したウイルスで沈黙した二機。
 その隙をついて、満身創痍の“シュピンネ”は何とか撤退したのだった。