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リアクション
その後、市場で猫が好きそうな物と紙袋一杯のみかんを買った甚五郎とルルゥは家電量販店に戻ろうと通りを歩いていた時だった。
「なんか焼き魚のいい匂いがするー」
そうルルゥが言うので、辺りを見渡そうと甚五郎は立ち止った。
「うわー!! 助けてくれにゃー」
と言う男性の声が聞こえて来たのだ。
「ちょっと! 助けようとしてるのにその言葉はないでしょ!」
ガリガリと何かがコンクリートに引きずっている音も一緒に聞こえて来る。
「やはり焼き魚の匂いで気を引くとは……王道ですね」
何かに感心している男の子の声も聞こえて来た。
「……お? そこの立ち止っている人も匂いにつられたらしいぞ」
立ち止って匂いの元を探っている甚五郎に向けて男性が声を掛けて来た。
「いや……わしは匂いに釣られてなど……」
声を掛けた男性――月崎 羽純(つきざき・はすみ)を前に甚五郎は咄嗟に言い訳をした。
「いや、いいって。それよりもあんたそんな大荷物でどうしたんだ?」
羽純の後ろから顔を覗かせたベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)が甚五郎の手荷物を見て聞いてくる。
「ああ、これは……わしのパートナー達が家電量販店で猫化してしまってな」
「ルルゥ達が皆を助けるために色々おもちゃを買って来たの!」
とそこへ、遠野 歌菜(とおの・かな)がやって来た。
「羽純くんどうしたの? というか、焼き魚焦げちゃいますよ?」
「いけねぇ……火鉢に魚を乗っけていた事忘れていたよ」
「おいおい」と、ベルクが羽純に向けて突っ込みを入れる。
「で、家電量販店にも猫化した人々が居るのか……本当あちこちに猫化したのが居るな」
うーむ。と悩むような仕草をしながらベルクは甚五郎に言った。
「家電量販店にもですか? それは大変! 私達もお手伝いに……」
ベルクの言葉を聞いて、歌菜は家電量販店へ走りだそうとしたのだがすかさず羽純に服の襟を掴まれた。
「歌菜はここで俺達と救出作業をする!」
えーっと残念そうな顔をした歌菜に羽純は強い口調で言った。
「ところで質問なのだが、焼き魚の匂いで引き付けた人々を道具もなしにどうやってコタツから引きずり出すのだ?」
歌菜と羽純を横目で見ながら、甚五郎はベルクに問いかける。
「道具はあるぜ。俺達は子守唄とヒプノシスで眠らせてからワイヤー爪でコタツから引きずりだそうかと……」
「眠らせてからか!」
ベルクの言葉に甚五郎は衝撃を受けると、ベルクに向けてお礼を言い家電量販店へと走って行ったのだった。
「がんばってくださいねー。もし、眠らせる人が居なかったら手伝いますからー」
走っていく甚五郎に向けて歌菜は手を振ったのだった。
「あ、おかえりにゃー」
炬燵コーナーに急いで戻って来た甚五郎とルルゥは肩で息をしながら紙袋に入っているみかんを皆に配り始めた。
「皆にちょっと聞きたいのだが、この中でヒプノシスか子守唄を使える者は居ないか?」
と呼びかけても、皆みかんを剥くのに夢中で聞いている気配は無い。
はい。としばらくしてから手が挙がったのだ。手を上げたのはウルディカだった。
「おおっおぬし、どちらか使えるのか」
無言で頷いたウルディカはグラキエスの顔を見ると、ヒプノシスを使用する。
ばたっと突然倒れたグラキエスに慌てたアウレウスに、ウルディカは
「……大丈夫だ。少し眠らせただけだ」
と、ぼそりと呟いた言葉にアウレウスは深いため息をついたのだった。
「では、名残惜しいが主を炬燵から引きずり出すか……」
少し寂しそうにアウレウスは言うと、立ち上がり眠ったグラキエスの両脇を掴んで炬燵から引きずりだした。
その後、ホットカーペット売り場に居る店員に了承を得ると、グラキエスを商品のホットカーペットの上に寝かせたのだった。
甚五郎とウルディカとアウレウスは買って来たおもちゃを駆使して建物内に居る猫化した人々を炬燵から出そうと奮闘し始めた。
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