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炬燵狂想曲

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炬燵狂想曲

リアクション

 同じマンションの別室……
「ただいまー」
 音を立てながら自室の玄関のドアを開けたマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)は、靴を脱ぐとダイニングへと歩いて行く。
「ただい……って、なんだ。寝てるのか」
 ダイニングに置かれた炬燵で気持ちよさそうに寝ている水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)を見て隣のスペースに入ろうとしたのだが……ゆかりの様子がおかしい事に気が付いたマリエッタは、ゆかりを起こそうと身体を強く揺すった。
「ちょっと! カーリー起きてよ。起きてってば!」
 マリエッタの声が聞こえたゆかりは、猫の本能が出たのかシャッ! っと指の間から猫の爪が飛び出してきてマリエッタの顔ぎりぎりを掠ったのだ。
「な……なにするのよ!」
 マリエッタは突然のゆかりの行動にびっくりして床に尻もちをつく。
「あ……ごめんにゃー。つい手を出してしまったのにゃー」
 ゆかりはマリエッタに軽く謝ったのだが、マリエッタはゆかりの謝罪は聞いていないようで、ゆかりの頭に付いている猫耳を見てぎょっとした後カバンの中に入れた手鏡をゆかりにそっと手渡した。
「にゃによ……手鏡?」
「それで一度自分の頭を見てみなさい」
 マリエッタの言葉の意味が判らなかったゆかりは手鏡を受け取ると、自分の頭を鏡で見る。
 そこには、可愛らしい黒耳が付いていてぴこぴこと耳が動いているのだ。
「猫……にゃ。ちょっと姿見で見て来るにゃ……にゃ?」
 手渡された手鏡をマリエッタに返すと、ゆかりは炬燵から出ようと身体を動かしたのだが、猫化しているせいか起き上がる事ができずにばたばたと音がするだけ。
「どうしたの?炬燵からでるんでしょ?」
 出ると言ってから一向にコタツから出ないゆかりの姿を見てマリエッタは不思議そうな顔をした。
「……なんかさーもう姿見みなくてもいいにゃー。死ぬまで炬燵で暮らすのにゃー」
 と出る事を諦め、ゆかりは横になった。
「ちょっと!」
 諦めモードに入ったゆかりを見たマリエッタは、どうにかして炬燵から出そうと考えていた時だった。ゆかりがテレビを付けた時に偶然謎の占い師の放送が流れ始めたのだ。
「安物買いの銭失い……」
 放送を見ながらマリエッタはぼそっと呟いたのだが、その声はゆかりにはっきりと聞こえたらしく、
「ち……違うにゃ! これは友達から貰った炬燵なのにゃ!!」
 そう言って言い訳を始めたのだが、マリエッタはその言葉を信用せずにジト目でゆかりの事を見て居たのみだった。
「そんな事はどうでもいいから、マリーも炬燵に入りましょうよー」
 開き直ったゆかりはマリエッタの服の袖を掴むと、コタツに引きづり込もうと引っ張り始めた。
「いーやーよー!! カーリーの猫耳姿は可愛いけどー! あたしは無理ー!」
 そう全力で叫ぶマリエッタだった。

 場所を戻してツァンダのマンションの一室では……
「まさか、買ってきた炬燵でこんな目に遭うとは思わなかった……」
 桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が自室で炬燵に入りながらみかんをせっせと剥いていました。
「どうしよう……炬燵から出られないよ〜」
 そう言いながらも、桜葉 香奈(さくらば・かな)は忍が剥いたみかんの白い筋を取りながら言っています。
 ちなみにみかんの白い筋の名前は「アルべド」と言い食物繊維が含まれているらしいのです。まぁ、そんなことはあまり知られていないんですけどね。
「まったく、みかんぐらい自分で剥けばいいだろう」
「嫌じゃ。みかんを剥くのは面倒じゃ」
「そうよ。みかんの皮を剥くと手が汚れるし、このロングハンドの修理に支障が出るわ」
寝っ転がり漫画を読んでいた織田 信長(おだ・のぶなが)と同じくロングハンドを修理しているノア・アーク・アダムズ(のあ・あーくあだむず)がすかさず否定したのを聞いて忍は黙ってしまった。
「にしても、四人そろって炬燵に入っちゃうなんて間抜けよね……」
軽くため息をついたノアは独り言を呟きました。
「……ぬぅ。漫画もゲームも飽きたのにゃ……こうなったら帰蝶に助けを求めて見るのにゃ!」
 信長は、読んでいた漫画をほっぽり出すと帰蝶に向けてテレパシーを使った。
(帰蝶ー炬燵から出られなくなったから助けてくれ〜)
(申し訳ありません、信長さま。こちらも現在取り込み中で、忙しいんですの。後にしてくれません?)
 帰蝶はそう言うと、信長の返事も待たずにテレパシーを切ってしまったのだ。
「そ……そんなー」
 がっくりと頭を落とした信長を見たノアは呆れた目で見つめていたと思ったら、緊張した表情をし、
「やばい。トイレに行きたくなっちゃった……こうなったら、この炬燵を何処にでも移動できるように改造してやるわ!」
「えー!!」
 ノアの言葉にびっくりした忍は、ノアがさっき修理したロングハンドを使い、近くにある部品を集め始めたのを見ながら剥いていたみかんの一房を食べ始めた。
「それは良い考えじゃ!私も手伝うのじゃ」
 沈んでいた信長もノアの炬燵改造を手伝おうと一緒に部品を弄り出した。
「あわわわ、どうしよう……信長さんとノアちゃんを止めたほうがいいのかな?」
 フルスピードで作業をしているノアを見ながら、香奈は困ったような表情で言いました。
「今のこの二人に何を言っても無駄な気がする……」
 諦めたように忍は言うと、もう一房口に入れたのだった。