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リアクション
・爪を剥く者
出て行ったフレンディス達の後ろ姿を見送った海達はしばらく沈黙していた。
「……ところで、さっき閃いた案を言ってもいいかな」
おずおずと三月が手を挙げた。
忘れていた。と言う様に海と某は三月を見る。
「ええっと……案と言う物でもないんだけど、最終手段で炬燵の電源を切るって言うのはどうかな?」
「俺もそう思った。電源切ってコンセント抜けば炬燵も冷めて雅羅も出て来るだろう」
某が三月の案に付け足すように言うと、炬燵のスイッチを切りプラグを抜こうとプラグに力を込めた瞬間。
「!?」
プラグはコンセントから抜けたが、某の身体が腰が抜けたように床にへたりこんだ。
「大丈夫ですか。静電気でも来たんですか?」
三月が心配をして某の側へと近づいてくる。
「あー……大丈夫だ。何か一瞬身体に力が入らなくなって」
「身体が?」
三月は某の肩を掴むと、腕を回し某が立ち上がるのを手伝った。
「ソファーで休むか? さすがに雅羅の寝室を使わせてもらう事は出来ないだろう」
海も某の身体を心配したのかそう言った。
「僕、お水持ってきますね」
某をソファーに座らせた三月はそう言うと、水を取りにキッチンへと行ってしまった。
「やれやれ……」
はぁ。とため息をついた海は、気分転換に窓の外を眺めていた時だった。
近くの公園で、歌菜とフレンディスが一緒に火鉢で魚を焼いているのを見つけたのだ。
「……これだ!」
海はそう言うと、キッチンに向かい冷蔵庫を勝手に開けて、コンロで魚を焼き始めたのだ。
綺麗なきつね色に焼けた魚を皿に盛り、海はまだうにゃうにゃ言っている雅羅の前に差し出したのだが雅羅は魚の匂いを嗅ぐと、
「私は肉派なの!」
そう言うと、焼き魚を持って窓へと投げつけた。窓は丁度換気のために開けていたので投げつけられた魚は窓枠を通り抜けてフレンディスの爪から逃れ、どうにかして雅羅の家に入れないかうろうろしていたゲブーの頭に乗ったのだ。
「あちー!!」
と騒いでいるゲブーをよそに海はがっくりとうなだれたのだった。
一方、公園で魚を焼いていた組はと言うと……
「なかなか猫さん達来ませんね……」
「住宅街には猫化した人達は居ないんじゃないか?」
もくもくと煙を上げる火鉢を見てベルクが言う。
「じゃあ場所を移さないといけませんね。……何処にしましょう?」
んー。と考え込んだベルクは人差し指を上げると、
「大通りでいんじゃないか? あそこなら風で匂いも広範囲に広がるだろう」
そう言ったのだった。
大通り――
「うわー……いたるところに炬燵が置いてありますね……」
そこかしこで猫化した人々をフレンディスは見ると、歌菜達と一緒に魚を焼く準備をし始めた。
「行きますよー」
歌菜はそう言って火鉢に魚の串を差していく。
「ご主人様、焼いた魚でそこに居る人をおびき寄せてみましょう」
ポチは公園で焼いた魚の串を口に咥えて、猫化した人の前に近づいた。
「うにゃー」
炬燵に入っていた男性は、ポチを見るなり焼き魚を奪おうと手を伸ばした。
「今ですわね!」
フレンディスは、魚に気を取られた男性に向けて鉤爪・光牙を投げる。
爪は男性の胴体に上手く引っかかると、フレンディスはマグロ漁に来て巨大なマグロを釣りあげている職人のごとく腕を振り上げた。
「うわー!! 助けてくれにゃー!」
「ちょっと! 助けようとしているのにその言葉はないと思います!!」
じたばたともがき始めた男性の言葉にフレンディスは言った。
「やはり焼き魚の匂いで気を引くとは……王道ですね」
がりがりと爪がコンクリートに引きずられる音を聞きながら、ポチはふっと笑ったのだった。
羽純はフレンディスとポチから視線を逸らすと、丁度市場から出てくる甚五郎へと移した。
「ちょっとそこの人に聞いてくる」
「おい、ちょっと! ……俺も聞いてくる」
火鉢から離れた羽純を追ってベルクも甚五郎へと近づいて行ったのだった。
「ええっ!? 魚……」
歌菜はしばらく困ったように魚と羽純達を見くらべたが、羽純達の方が気になり、
(ちょっとぐらいならいいよね)
と火鉢から離れたのだった。
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