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第3次スーパーマスターNPC大戦!

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第3次スーパーマスターNPC大戦!

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聖布 ―乙女の御使い―


「何でみんな私を見るんですか! 私は清純無垢な乙女で姫騎士なんですよ!」
 葛城 沙狗夜(かつらぎ・さくや)の漆黒のTバックを被り、エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)は叫んでいた。ごく一部から【パンツ狩り求道者】と呼ばれる彼女は今、セフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)の指示――もとい「嫌でもやって貰うわよ、エリザベータ。それとも、奴等にぱんつ取られて生き恥を晒しながら死にたい」という脅しの下、戦場に立っている。
 『求道者モード』の証し、狼を象った漆黒の仮面を着けて屈強なロミスカの戦士達に立ち向おうとした矢先、彼女は気がついた。
「……仮面が!!」
 そう、彼女は沙狗夜のぱんつを被らねばならないという状況に必死になるあまり、仮面を忘れてしまったのだ。
「くっ……仕方有りませんね」
 エリザベータは沙狗夜の漆黒のぱんつを普段の『狼の漆黒の仮面』の如く顔面に装着する事で、精神統一をする。これにて『求道者モード』の完成である。
「我は求道者エリザベータ……
 何者にも成れない愚かな貴様達に神罰を下す者……
 その身を晒せっ!」
 闘気を発して対峙したロミスカのぱんつ戦士の一人に当てると、そのまま奴の顎へとブレードを突き刺し、ぱんつを奪い取る。奪ったぱんつは沙狗夜のぱんつの中に半分突っ込んだ。手に入れた新たなぱんつがエリザベータが動くたびに風に舞い踊り、まるで羽飾りのように見える。
「フフッ……
 あなたの中身は何色かしら……」
 不敵に嗤うエリザベータを、向こうから見ていたアレクは呟いた。
「……中身っていうか、×××まで丸出しだし見たまんま肌色だろうよ」
 その横では、沙狗夜が刀とダガーを手に、サポートに徹する。しかしぱんつを被っていないので、残念ながら戦力というよりは隙を作るので手一杯だった。
「あんた大丈夫?」
「パンツだけ切り裂いて敵を戦闘不能にさせる技はエリザベータ先輩から学びましたから……」
「頭の上のぱんつを(斬り裂く技)?」
「……確かに頭上ではありませんね」
「うん、取り敢えずぱんつ無しで暴れんのもキツいだろ。まして自分のぱんつも無いんだから。引いてていいんだぞ?」
「いいえ、以前私は師匠オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)から仕込まれたのです。
 『全裸で街にお使いに行く』、あの過酷な訓練に比べれば――今回の闘いはその応用のようなもの!!」
「お、おう。よく捕まんなかったな?」
「は。店側から何度か通報されたり、連行されたりもしましたが、危うく前科となる前に逃亡することに成功しました……」
「Oh,God...
 Hey,Are you nuts?(おい、あんた正気か?)」
 沙狗夜の真面目な顔に、アレクは絶句していた。
 件のオルフィナは、セフィーの――やはり漆黒のぱんつを被っている。ロミスカの女性の一人を腕の中に捕らえ、抱きかかえながら群がってくる戦士達を打倒(うちたお)す。彼女は遠い異世界の戦場で、一匹の地獄の魔獣と化していた。
「流石契約者白狼のセフィーのパンツ、能力の増強が凄まじいな……こりゃいいぜ……
 だがよう、セフィーの匂いで身体がオーバーヒートしそうだ。
 これは後でセフィーに冷却を頼まないとやばいな……」
「後で絶対返しなさいよオルフィナ」
 白狼の毛皮の外套を腰に巻いて大事な部分を隠しながら、セフィーは言う。先程オルフィナがロミスカの戦士から奪ったぱんつをパスされたのだが、男の頭上を長く守っていた兜は伸びきっていて履く事も被る事もままならなかったのだ。
 二人のやり取りは『匂いでオーバーヒート』とか『冷却』とか、もう突っ込みどころは多分にあるのだが、アレクはさっきの沙狗夜とのやり取りに疲れきって何も口を挟まない。

「……なんだ?」
 実況席で呟いた陣に、ユピリアは彼の視線を追う。陣が見ているのはこちらを見上げているアレクだった。
「アレクが……何か俺に言ってる?」
「ホントだわ。何かしら四文字……『タ・ス・ケ・テ』」
 陣は不在、ベルクは戦力にならない。
 アレクは今、切実に、ツッコミのスペシャリストを求めていたのだ。
「チッ…………降りねえ。俺は降りねえからなッッ!!」
 戦いを見ていれば、上からでもボケばかりの状況は分かる。だが陣は右手で緑のスリッパを握り潰し、左手でマイクを握りしめるのだった。

「さぁさぁ! ロミスカの偉大な戦士に挑む、勇気ある異世界の戦士はこいつらだ!」
 実況席付近で、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)も陣やユピリアと同様、試合の様子を実況を交えて撮影していた。しかしこちらは脱出の事に関してはあまり考えていない。この事件がアッシュもどきが原因であると分かると、深刻に考える必要はない、と切り捨て、試合を盛り上げる方向に考えを切り替えていた。
「っべー、まさかここまで面白い事になるとは予想外だったわー」
 心底楽しそうに笑って、恭也は何も無いはずの空中を蹴って飛び上がり、撮影に絶好のポイントを確保する。ぱんつを被った契約者とロミスカの戦士との戦いは、契約者がぱんつを被ったことによってほぼ互角の展開となっていた。武器と武器がぶつかり合い、弾ける度に観客席からは割れんばかりの歓声が飛ぶ。
「『試合』としては最高に盛り上がってる所が、面白さを倍増させてるな。
 ……おっ、あっちでは真打ちがバトル開始かあ!?」
 恭也のカメラが、大太刀の背を気怠げに肩に載せる格好で闘技場に立つアレクを映し出す。直後こちらに視線を飛ばされた時は心臓が凍るようだったが、何故か奴はカメラに向けて手を振ってきた。ぱんつを被るというのは笑える程不名誉な事なのかもしれないが、それが大好きな豊美ちゃんのぱんつ、それも本人によって託されたとあらば、アレクにとってそれはこの上無く名誉な事なのだろう。アレクの変態性はそれだけ本物だったのだ。
「……びびったー。でも本人が愉しくても、それを見た部下や妹はどう反応するかな?
 今から笑いが止まらねぇぜ!」
 その後アレクは豊美ちゃんとの約束を果たす為、いつもより幾分真剣な戦いぶりを見せるが、しかしぱんつを被っていることによってそれら一つ一つの動作が笑いの種になっている。
「やっべ、笑って映像がブレちまう。つぅか皆、真面目に戦ってんなー」
 部外者の恭也は他人事のように呟いているが、実際に剣を交えている者たちは本気である。ロミスカの戦士がそれだけ手強く、中途半端な気持ちで戦うのを許さない事が要因だった。
「……ま、彼らは勇敢な戦士だった、って所か」
 自身も戦う者として、彼らの真剣な空気を感じ取った恭也は、ひとまずこの場は笑うのを抑えて撮影と実況に徹する事にする。
「鮮やかな一撃が決まったぁーー! 異世界の戦士の快進撃はどこまで続くのか? ロミスカの戦士は彼らを食い止めることが出来るのか?」
 ……もちろん、パラミタに帰った暁には編集したビデオを知り合いと鑑賞し、盛大に笑ってやるつもりだったが。



「右から来るよ」
 真の耳が気配を察知する。
「任せて!」
 警告の声に華やかに答えたルカルカ・ルー(るかるか・るー)の体が瞬間的に右に跳んだ。同時肘打ちがぱんつ戦士の横面に見事突き刺さる。一発KO。
「もう、何人目?」
「流石にちょっときついかな」
「本当。ルカ達より強いってどういう事ッ」
 近道と思い手っ取り早く関係者用の通路を突き進む一行の前には予想していたよりもぱんつ戦士が多かった。不意打ちでなんとか凌いでいるがいつまでこの手が通用するだろう。
「観客か使用人くらいかと思ってたんだがな」
「仕方ないかも。闘技場から溢れそうなくらい居たし」
 唸る破名にイアラ・ファルズフ(いあら・ふぁるずふ)を伴ったエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は並走しながら、にしてもと緑の眼差しをきつくした。向ける先は合間合間に見える下の状況だ。
「これって虐待だろ」
 自分の下着狙った筋肉質なオトナが、ほぼ全裸でぱんつ被って迫ってくる。それは悪質なホラー映画より質が悪い。物事がまだよくわかっていない幼子と言えど、印象が苛烈過ぎてトラウマレベルだ。子供の健全な精神育成を阻む大問題である。
 オブラートに包むこと無く指摘するエースに破名は同意と駆ける速度を上げた。
「あの子達には健やかに育ってもらいたい」
 零す破名の声は誰が拾うだろう。
「……手を取って異性を知り、恋に目覚め、愛に喜び、子を成す。そういう人生を歩ませたい」
 だから、
「あんな幼い時期にこんな体験をさせて異性を恐怖の対象とし、将来の伴侶を得る機会を自ら放棄するような、そんな可能性を与えるだろうこの世界は最早毒だ。長居するだけあの子たちを蝕む、それだけはどうしても――我慢ならない」
 ぱんつを被り強者(つわもの)達と剣を交え、屍を積み上げて優勝するという正規の手段ではなく、背後からかっぱらってやろうという提案をした破名の本音を聞けたような気がして、未だ詳細を語られず、可能な限り近づきたいと請われ、ただ共に皇帝アッシュの元に行く契約者達はそれぞれに破名を見た。
「わかるぜ。ムキムキ野郎が女性ぱんつ被ってしかもマッパってのは、ムサ苦しくて、とっととずらかりたい気分なんだぜ」
 イアラが激しく同意と首を縦に振った。
「だね。ぱんつを被るものだと思い込んだり、変態対決がトラウマになったりしないためにもさっさとすませちゃお」
 ルカルカが両手を叩く。
「そうと決まれば、クロフォード走って走って」
「まだ速くと契約者が煽るか」
「そうだよ。早く帰りたいって言ってるのはクロフォードなんだから!」
「クロフォードは契約していないんだ? 少しきつい?」
 言葉を汲み取ったエースに、破名は幽か意地悪気に唇を歪ませる。
「子供達のことを真剣に怒ってくれて心から礼を言う」
 虐待だと言及するのはエースだけだった。そんな真面目に考えてくれてるのは彼だけだなと考えて、そう言えばと思い出す。時間稼ぎの陽動をお願いしたぱんつ戦士達の事を。
 耳に届く剣戟、爆発音、歓声、怒号、雄叫び、絶叫、断末魔。
 合間合間に見える闘技場の光景は凄惨たるもので、ぱんつを被って戦うという生き恥どころか、ぱんつ被ったまま死ぬかもしれない状況に戦慄を覚える。
 願わくば、誰もが無事に勝ち上がらんことを。



「お前達が奪ったぱんつは、本来ならオレが手に入れる筈だったぱんつなんだぞ!
 オレが手に入れる筈だったぱんつをお前達はオレから奪った。
 だからオレもお前達の全て(――恐らくぱんつ的な意味でだろう)を奪う。
 パンツ・オア・ダイ パンツ・オア・ダイ!!
 泣いて謝っても許さねーからな。覚悟しろ!!」
 全く根拠の無い――オレが手に入れる筈だったという発言、その雄々しい挑戦状に、闘技場を見下ろす観客のボルテージが一気に上がる。
「異世界の男だというのに、なんというぱんつ戦士魂を持っているのか!」
「ああ、それにあのぱんつもいい!」
 武尊が今、己の兜としているのは第一試合に開始時に装備していたジゼルのぱんつでは無い。闘う相手に合わせて、武尊はその闘いに相応しいぱんつを被り変えたのだ。それはパラミタでも歴戦の――ぱんつの――闘いを勝ち抜いてきた彼にしか出来ない事だった。
 そのビビットカラーの花に飾られた黒いぱんつ……否、パンティーを見て、アレクは気がついた。
(Tovah...Is that right?(トーヴァ……かな?) 
 武尊が被っているのはアレク率いる軍隊プラヴダの副隊長トーヴァ・スヴェンソン(とーゔぁ・すゔぇんそん)ものではないか。別に本物を見た訳でも武尊に聞いた訳でもない。ただアレクの目には、何時だったか「武尊君にパンティーあげちゃった☆」と舌を出した彼女の姿が浮かんでいた。
 あんなどうしようもなくエロエロな――全体的に面積が少ないパンティーは、トーヴァのものに決まっている、とアレクは頭の中で結論づけ、そして「どうでもいいや」と闘いへ戻っていた。
 隊長として、相棒として彼女にかける思いはあるが、ボーントゥービービッチのぱんつに価値は無い。多分武尊のあの姿を見て泣いてしまうのは、トーヴァのパートナー、キアラ・アルジェント(きあら・あるじぇんと)の方だろう。彼女が此処に居なくてよかった。
「純情そうなお前には刺激が強いだろうな!」
 武尊は言いながらロミスカのぱんつ戦士の懐へと飛び込む。
 ぱんつ戦士はまだ歳はもいかない少年で、トーヴァのぱんつの放つドエロイオーラに当てられ目も開けられなくなっていた。その隙にぱんつ戦士の身につけるマントの裾を掴むと、勢いでもって地面に投げ飛ばす。
「お前はそのぱんつを被るにはまだ早い!」
 掴んだ相手のエネルギーを吸い取るグローブで頭部を掴むと、そのままぱんつを引き抜いた。
 ――鮮やかな、勝利であった。



 ぱんつ戦士の振るった戦斧が地面を揺らす。しかしそこにそれまで対峙していた相手、ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)の姿はない。
「どこを見ている? 私はここだ」
 声にぱんつ戦士が振り返る、真紅の薔薇舞い散る中、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)のぱんつを被ったベルテハイトは優雅に――あくまで優雅に――微笑むと、手にした槍に魔力を込めて突き出す。切っ先から放たれた鋭い風はぱんつ戦士の頭部を襲い、被っていたぱんつを上空へ舞わせる。
「……終わりだ」
 ぱんつを失い、頭を抱えるぱんつ戦士に無慈悲の一撃を見舞い、ベルテハイトは武器をサッ、と振って仕舞う。倒れ伏すぱんつ戦士の生気を失っていく顔に、パサッ、と真ん中から切られ布と化したぱんつが被さった。
「愛しい弟とかわいい妹のため……私は戦おう」
 薔薇の花びらを背に、ベルテハイトがその場を後にする――。

「下着を被ることで強くなる……妙な世界に来てしまったものだ。
 だが、ここもまた本来居るべきではない世界。目的の品を得、早々に戻ろう」
 ――コロッセオでの戦いが始まる前。グラキエスとベルテハイト、ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)は事情を把握した上で行動を決定するため意見を交わし合う。
「グラキエス、私がアレクと共に戦おう。お前はウルディカと、フレンディスを安全な場所へ連れて行ってくれ」
 ベルテハイトが視線を向ける先、フレンディスは今にも泣き出しそうな顔でベルクにしがみついていた。ロミスカのぱんつ戦士の衝撃的な風貌にすっかり戦意を喪失してしまっている。
「分かった。……しかし、大丈夫か。ロミスカの戦士は手強い、俺にも感じられる」
「なに、いくらでもやりようはある。……もしグラキエスが履いていたなら、良かったのだが……
 口惜しそうに呟くベルテハイト、しかし彼の耳にグラキエスの、衝撃的な言葉が飛び込んでくる。
「今日は履いているぞ。ウルディカが履いた方がいいと言うのでな」
 グラキエスの言葉に、ウルディカは無言を貫く。この異様な状況から少しでも逃避していたかったのだが、グラキエスの事が心配であるからそういう訳にもいかない。
 だが否が応でも入ってきてしまう光景に辟易し、また今日に限りぱんつを履くようにグラキエスに言ったことが、まさかこのような結果をもたらすとは思いもせず、事態をどう捉えていいのか戸惑っている最中であった。
「そうか! 今日は履いているのか!
 頼むグラキエス、私にお前のぱんつを被らせてくれ」
「あぁ、構わないが……俺の下着でいいのか? 確か女性用でないと効果がないと言っていた気がするが」
「性別など関係ない。お前ほど私に力をくれる存在はないのだよ、グラキエス」
 歩み寄り、グラキエスの唇を奪うベルテハイト。背景に薔薇の花びらが舞う光景はそっちの気がある人ならときめきがオーバードライブしたかもしれないが、その場に巻き込まれたウルディカはたまらない。
「ブルートシュタイン、速やかに済ませろ」
 少々苛立ちを含む言葉を吐けば、ベルテハイトは名残惜しげに唇を離し、グラキエスの下半身に手を伸ばす。
「何故おまえが脱がせる」
「何故? 決まっているだろう、私が弟を愛しているからだ」
 全く理由になっていない――いや、ベルテハイトにとってはそれが唯一の理由であったが――言葉を呟き、ベルテハイトがいやらしい手つきでグラキエスのぱんつを脱がしにかかる。グラキエスは特に抵抗せずなすがままなので、ベルテハイトのやりたい放題であり、それがウルディカにとってはこの上ない苦痛であった。いくらベルテハイトの纏う魔鎧の形状が脱ぐ時も危ない所が隠れる親切設計だからと言ってコレは無い。
「あぁ、グラキエスのぱんつ……愛おしい」
「いちいち撫でるな口付けるな!」
 心の底から早く帰りたい、そう願うウルディカであった――。

「……杖の水晶が一つである事に、嫌な予感はしたが……」
 ウルディカは今グラキエスと共に、映晶の杖の水晶を通してベルテハイトの戦いぶりを、まるでその場に居るかのように見ていた。
「強いな、ベルテハイト。頼もしい限りだ」
「…………あぁ、そうだな」
 称賛の言葉を口にするグラキエスに、ウルディカが半ば投げやりに応える。このままベルテハイトらがコロッセオの戦いを勝ち抜き、目的を果たしてくれるのならばそれでいい。だが、義妹フレンディスが混乱しないようにと下着の両端から髪をツインテール状に出し、飾りつけ、盛るという気遣いが、ウルディカを余計に苛立たせ――というか、複雑極まりない気分にさせるのだ。
 湧き起こる諸々の感情を飲み込んで、ウルディカは警戒態勢を維持する。

「ベルテハイト・ブルートシュタイン、鮮やかな一撃でロミスカの戦士を打ち倒したーっ!
 しかし、何故彼は男性用の下着を被っているにも関わらず、あれほどの力を発揮しているのか? 豊美さん、どう思われますか?」
「ふぇ? 私何でここに呼ばれたんでしょう?」
 試合の様子を実況していた陣にいきなり話を振られ、豊美ちゃんはたいそう戸惑う。
「いや、実況には必要かなーって」
「そ、そんな理由でですかー?
 えっと、そうですね……ベルテハイトさんはグラキエスさんの事をとても大切に思っています。その思いが、ベルテハイトさんに力を与える結果になったのではないでしょうか」
「至極真っ当な気がしなくもなくなくなくない意見、どうもありがとうございます!
 ……しかしそれだと、ロミスカの戦士も女性に対する強い思いがある、ということになりますね」
「うーん、彼らの思いはこう、淀んでそうよねー。
 陣、私の陣への思いは清廉潔白よ!」
「お前は撮影に集中しろ」
「えっ、ひどくない?」
 実況が盛り上がる中、コロッセオの戦いはさらに熱を帯びる――。