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リアクション
第一章
実りの山の中腹。木々の葉が地面に落ちる中に、なぜかダンボールハウスが建てられていた。
「時計を合わせろ」
「これより作戦を開始するであります!!」
ダンボールハウスから声が聞こえ、中から飛び出してきたのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)とイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だった。
二人は麓の方角へと走っていくと、人影を視界に捉えて立ち止まる。
人影も二人の存在に気づき、ゆっくりと近づいていき遠くにあった輪郭もハッキリとしていく。全員が黒のスーツを着込み、とても山登りを楽しんでいるようには見えない。
「なんだてめえら。この山は今ルチアーノファミリーが占領してるんだ。とっとと失せな」
「そうはいかないであります! この山の実りに最初に目をつけたのは自分たちであります! 誰にも渡さないであります」
「そうかい、なら少し痛い目にあってもらおうか……」
「こっちもガキのお守りに付き合わされてイライラしてるんだ。悪く思うなよ」
男たちが口元を歪めながらゆっくりと戦闘態勢に入ると──吹雪たちは背を向けて逃げ出した。
「な……! 待てこらぁ!」
男たちは声を張り上げて咄嗟に吹雪きたちを追いかける。
吹雪たちは腰に装着していた3―D―Eからワイヤーを射出して木に引っかけると、身体を地面から離し、枝へと飛び移った。
男たちもその姿を見失わないように上を見上げるが、これがまずかった。
吹雪たちはあそこで木に上ることをあらかじめ決めていたのだ。目的は逃げるためでは無く、?その真下にある落とし穴から注意を逸らすため?
吹雪たちの姿を見上げた男たちが足下の落とし穴に気づくわけも無く、不用心に踏み出した一歩は地面を突き破り、体勢を崩して深い穴へと落ちていく。
イングラハムは地上に降りると、穴を見下ろし、
「悪く思うな、これも我らの生活の為である」
懺悔するようにそう言うと、イングラハムは躊躇無く用意していた丸太を放り投げる。倒れた体勢のままでは男たちも為す術が無く、無慈悲に投げ込まれた丸太に意識を奪われた。
「作戦成功であります!」
「次のポイントに移動しよう。まだまだ用意したトラップは沢山あるのだからな」
「ついでにこの山の実りも自分たちが独占するであります!」
二人がルチアと似たり寄ったりな邪心を抱きつつ山を移動していると、
「ん?」
奇妙な者が目に止まり、自然と足も止まった。
地雷や落とし穴を仕掛けた覚えはあるし、それに引っかかって倒れている人間がいても無視するつもりだったが、蓑虫のように木に吊されている人間がいてはさすがに無視もできなかった。
蓑虫のように吊し上げられた六尺 花火(ろくしゃく・はなび)も二人の存在に気づき、声をかける。
「た、助けてください〜」
「ふむ、既にマフィアの手に落ちたのか。待っているがよい」
イングラハムが縄を解くと、花火はそのまま頭から着地した。
「む、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……。それより、さっきマフィアって言ったよね? 何か事件があったのか?事件だな? ならわたしの爆発が必要だ!」
そう言って花火はどこからかシリンダーボムとビッグバンスイーツを取り出し、無造作に放り投げる。
「ボンバー!」
花火の叫びと同時に爆弾が爆発し、周囲の木々を爆風でなぎ倒す。
「ふむ、まさか縄を解かれるとは思いませんでしたな」
他人事みたいに喋りだしたのは花火に装着されたギフト三井寺 弾(みいでら・はじけ)だった。
「急に山が騒がしいと言いだして爆弾を放り投げるものだから縛り付けて反省させていたのだが、まさかこんな事になるとは思いませんでしたな」
「な、なにやらマフィアの人たちより危ない人を助けてしまったようであります!」
「小さな親切なんとやら……か。致し方ない、このままでは我々の食料も焼かれてしまう。取り押さえるとしよう」
イングラハムたちが臨戦態勢に入るのと同時に花火は走り出しながら爆弾を投げ始める。
吹雪とイングラハムが花火を追いかける。その間も爆弾を投げまくるせいで騒ぎを聞きつけた構成員が爆発に巻き込まれたが四人の中にその事実を知っている者はいなかった。
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