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パラミタ・イヤー・ゼロ ~DEAD編~ (第1回/全3回)

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パラミタ・イヤー・ゼロ ~DEAD編~ (第1回/全3回)

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 普段は明るく元気な女の子小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、これまで八紘零が起こした事件に関わってきて、強い怒りを感じていた。
 イレイザーキャノン。ふだんは武器を使わず素手で戦うことの多い彼女が、今回は大口径レーザー銃を携えている。
――できるだけ相手の生命を奪いたくない。
 そんな非殺主義の美羽が、武器を手にした理由はただひとつ。残虐な殺人道具が相手だからという覚悟のもとだ。
 とはいえ。
「……女の子を拷問器具にするなんてヒドいよ。零は悪趣味すぎるっ!」
 少女の姿であるディシプリンに、やはり戸惑いは隠せなかった。
 ごきげん斜めな美羽のとなりにいるのは、パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)
 コハクもまた温和で心やさしい少年だが、零がこれまで積み重ねてきた悪逆非道は、ついに彼を本気にさせた。
 彼の前に立ちはだかる、【殉血に濡れし断頭台(ギロチン)】。たとえ少女の姿をしていても、殺人のための道具だ。コハクの目に迷いはなかった。
「……これ以上、誰かを犠牲にしたくない」
 血まみれの刃物に変身したディシプリンへ、コハクは全力で殴りかかる。
 能力値オール512という、カウンターストップ級の強さを誇るコハク。優しさという枷を外した彼の前では、これまで幾多の人間を切り殺してきた刃でさえ、ナマクラと化す。
 彼の渾身の一撃は、ギロチンを真っ二つに粉砕した。
「これが……、今のぼくにできることなんだ……!」
 コハクはつぶやき、ぎゅっと拳を握りしめた。

「今回ばかりは、よーしゃしないんだからねっ!」
 ガンスリンガーとなった美羽が、【肉蝕む振り子の刃(スロースライシング)】に向けてイレイザーキャノンをぶっ放す。
 強烈なビームに包まれる、腐肉のこびりついた刃物。悲鳴を上げる間もなくスロースライシングは沈黙する。

 変身の解けたディシプリンは、ふたたび女の子の姿に戻っていた。拷問器具のギフトとは思えないほど、いたいけな表情で。
 美羽とコハクが本気で戦ってくれたおかげで、ほとんど苦しむ間もなく、ふたりは昏睡したのだった。



 残るディシプリンは一体。
 その最後の拷問器具にパワードスーツを破壊されたペルセポネは、半裸にされて、拷問を受ける寸前であった。
「ペルセポネ様と――ついでにハデス師匠を放せっ!」
 デスストーカーはすぐさま、ペルセポネ(と、おまけのハデス)の救出に駆けつけた。
 ペルセポネは機晶姫でありながら、生身の身体を持っている。少女特有の柔肌には幾本もの鎖がからみつき、胸や下腹部や太ももに、むっちりと食いこんでいた。
 拘束されたペルセポネに近づいていくのは、【姦する苦悩の梨(クパァ・ペア)】なるディシプリンだ。
 苦悩の梨。これは主に性犯罪者を罰するために開発されたもので、その名の通り洋梨のような形をしている。取っ手に付属しているネジを回すと、先端の梨が開く仕組みになっており、口や秘部に挿入した後で、じわりじわりと押し広げ、激痛を与えながら内部を破壊するという、なかなかアレな器具である。

「ペルセポネ様から離れろぉぉぉぉ!」
 パートナーの窮地にデスストーカーは怒りを込めて叫んだ。その怒りは、ディシプリンに向けたものだけではない。
 自分が非力なばかりに、大切な家族を危険にさらしてしまった。そんな己のふがいなさに憤っているのだ。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!」
 殴りかかっていくデスストーカー。だが、今の彼の力では、ディシプリンを倒すことはできない――。
 と、その時。
 デスストーカーの持つ、ギフトの槍が輝いた。
 身寄りのない自分に居場所を与えてくれた、ペルセポネへの感謝、信頼――そして愛。それらが渾然一体となって、デスストーカーはついに目覚めたのだ。
「ペルセポネ様、俺を使って下さい!」
「すごい……デスストーカーくん……?」
『ユニオンリング』で二人は合体する。サソリ型のパワードスーツとなったデスストーカーが、ペルセポネに装着された。
「こんな鎖で……いつまでも縛ってられると思うな!」
 ブチブチブチッ! 二人は拘束具を引きちぎっていく。
 その姿はまさに、過去という鎖を断ち切った、デスストーカーの生き様そのものであった。
「俺たちはもっと強いもので結ばれている。見せてやろう。これが……」
 ディシプリンに接近し、拳を振りかぶって叫ぶ。
「……これが、ギフトの絆の力だぁぁぁぁ!」
 ものすごいパンチが【クパァ・ペア】に炸裂する。
 最後のディシプリンは、二人のパンチをまともに受け、土煙をあげながら吹っ飛んだ。ゴスロリ少女に戻った【クパァ・ペア】は地面に突っ伏し、ぴくりとも動かない。
 オリュンポスの、絆の勝利である!


――ちなみに、ドクター・ハデスはといえば。
 彼はすでに苦悩の梨の攻撃を、お尻から受けており、どこか遠くを見つめたまま震えていた。
 ハデスもまた、なにかに目覚めてしまったのかもしれない。