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リアクション
★ ★ ★
「わあ、すっごい花火まで。派手だね」
ビッグバンブラストの爆発を、お祝いの花火だと勘違いしたマサラ・アッサムが言った。
「二人の記念すべき日だからね、悪いことではないだろう」
今は説明して心配させることもないと、ホレーショ・ネルソンが話を合わせる。
「では、行こうか」
「はい」
マサラ・アッサムの手をとると、ホレーショ・ネルソンはセントアンドリューの甲板に作られたバージンロードを歩き始めた。
「そのウェディングドレス、最高に素敵ですよ。我が国の歴代王室の挙式のどの新婦よりも、そして世界のどの新婦よりも貴方は御美しい」
緊張で、どこかぎこちない歩き方のマサラ・アッサムに、ホレーショ・ネルソンがささやいた。どんなときでも、レディのフォローは忘れない男だ。
★ ★ ★
「うーん、先を越されちゃったなあ。よし、次こそ」
祝福しながらも、してやられたという顔でココ・カンパーニュが言った。
「えっ?」
おまけとしてくっついてきた風森巽が、次という言葉に露骨に反応する。そのまま妄想全開となったのか、ココ・カンパーニュの横顔を見つめて真っ赤になった。
「えーっ、リーダーが次とは限らないわよ」
私にだって可能性はあると、リン・ダージがツッコミを入れた。
「もちろんそうですわよねえ」
チャイ・セイロンも、ペコ・フラワリーと顔を見合わせる。
「もちろん、ブーケトスの勝負でそれは決まります」
ペコ・フラワリーが、それがすべてであるかのように言った。
やれやれという感じで話を聞いていたアラザルク・ミトゥナが、同意を求めようとアルディミアク・ミトゥナの方を見ると、なんだか彼女までブーケ争奪戦に参加する気満々なのを見て、思わずえっと言う顔になった。
★ ★ ★
「いいなあ、お嫁さん!」
「これこれ」
思わず一緒に並んで歩きたそうな鬼龍愛を、鬼龍貴仁が慌てて捕まえてなんとかした。
「ねえねえ、あいちゃんもお嫁さんになれるかなあ」
鬼龍貴仁の腕の中でジタバタしながら、すぐ近くにいたスープ・ストーンに鬼龍愛が訊ねる。
突然の思いがけない質問に、スープ・ストーンと鬼龍貴仁がえっと言う顔になった。
「おとうさんはまだ許しません!!」
慌てて鬼龍愛を抱き抱えると、鬼龍貴仁がしっしっとスープ・ストーンを追い払った。
★ ★ ★
周囲の恋愛模様はおいておいて、式は滞りなく進んでいった。もちろん、邪魔が入らないようにと、各艦が交代で監視業務を行っているおかげだ。
誓いの言葉が交わされ、指輪の交換があり、誓いのキスとなった。少し屈んだホレーショ・ネルソンが、マサラ・アッサムの唇に自分の唇を重ねる。
「よーし、今だ、撃てーっ!」
湊川亮一が、土佐の祝砲を発射した。
「準備は万端よ」
待機していたトーマス・ジェファーソンも、マサチューセッツの各砲塔の発射ボタンを押す。
各艦からも、一斉に祝砲が鳴り響いた。
空中に、色とりどりの煙の花が咲く。
さて、いよいよ、ブーケトスとなる。
一気に甲板上が殺気だった。
ゴチメイたちを中心として、未婚女性たちがブーケを狙って目を光らせる。
「それじゃあ、いくよー!」
新婚ほやほやのマサラが、満を持してブーケを高々と放り投げた。
「よし、もらったあ!」
「たとえ、お姉ちゃんでも、これは渡せない」
真っ先に飛び出したココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナが激突する。
おかげで、難を逃れたブーケが横に逸れた。
「いただき!」
「そうはさせませんわあ」
ほとんど、何をやっているのか分からないほどの争奪戦が繰り広げられる。
「よく分からないけれど、参加するうさー」
「駄うさぎには渡しませんにゃ!」
ミニいこにゃとうさティー軍団まで参加して、もうしっちゃかめっちゃかである。
「ええと……」
さすがに、争奪戦に混ざれずに、高嶋梓と天城千歳が呆然としている。
「元気すぎる……」
果敢にチャレンジするキャロライン・エルヴィラ・ハンターを、トーマス・ジェファーソンが呆然と見つめていた。
「さすがに、これは予想外だったな……」
「ええ、そうですねえ、お義兄さん……」
「だから、それはまだ早いと……」
唖然としながら、アラザルク・ミトゥナと風森巽が争奪戦を見ていたときだった。
女の子たちの手の上を何度かバウンドしたブーケが、ぽろりと零れた。
ポーンと飛んできたブーケが、軽く腕を組んで見守っていた風森巽の所へと飛んでくる。
「えっ?」
意図せずに、風森巽がブーケをゲットしてしまった。
「ええっ!?」
「貴様あ!!」
唖然とする風森巽に、女の子たちの殺気だった目が、ギンとむけられた。
「殺す!」
「ちょっと、助けて……、うわあ!!」
押し寄せてくる女の子たちに、風森巽がブーケを持ったまま死に物狂いで逃げだした。
まずい、これはマジで殺される……。
「ははは、でかした!」
そんな風森巽の身体が、ひょいと持ちあげられた。ニコニコしながら、ブーケを持った風森巽を担ぎあげたココ・カンパーニュが猛スピードで逃げていく。
「にぎやかですなあ」
「はは、まあ」
呆れるような感心するようなホレーショ・ネルソンに、マサラ・アッサムが乾いた笑いを返した。
「一緒に、騒ぎたいですか?」
「うーん、どうかなあ」
そう言うと、旦那になったばかりのホレーショ・ネルソンを見あげたマサラ・アッサムだった。