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【祓魔師】アナザーワールド 2

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第4章 荒廃する時 Story4

「(まさか、アニスを狙ってくるとはな)」
 落ち込む少女に聞こえないように精神感応をきり、シスターの格好した者が彼女を狙ってきたのか、心中で和輝が呟いた。
 霊的コンタクトを取れる特異性のためか。
 そう考えてみたが、それだけでは攫う理由が薄過ぎる。
 なら、アニス・パラス(あにす・ぱらす)の感性の高さが目的か。
 それも動機としては足りない。
 どちらにしろ、彼女から目を離さないでおこう。
 不安の現況の捕獲に向うかとも考えたが、わざわざ敵前に晒しに行くようなものかと判断し、連絡役として町中で待機していた。
「(―…ぁぅ、和輝に迷惑かけちゃった…)」
 黒服のシスターに気を取られてしまったアニスは、しょぼんと肩を落としていた。
 今度こそ、我慢して待機すると決心するものの…。
「(むぅ、…やっぱり退屈だよー!)」
 やはり待っているだけではつまらないず、箒の腕で足をばたつかせた。
「ねー、リオン〜」
「む、分かった…。だが、少しだけだぞ?」
 少女が何を口にしようとしたのがすぐに分かり、ため息混じりに言う。
 あまり他に気を取られないよう、自分の使い魔に乗るように手招きをした。
「はーい!にひひ、“みんな”を呼んじゃおうーっと♪ねーねー、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
 アニスは大蜘蛛の背に乗り、神降ろしした“皆”に話しかける。
「みんなみんな!何か知ってることがあったら教えて♪」
 茶色の瞳をきらきらさせ“みんな”に聞いてみるが、かぶりを振り“知らない”という仕草をした。
「ふぇ…そっかー」
「そう気落とすな。今までアニスは十分役割を果たしてくれている」
 しょぼんと落ち込む少女の頭を禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)が撫でる。
「う、うーん」
「気を抜かず、しっかりやればいいことだ」
 まだ元気のないアニスへ目をやり和輝が励ましてやる。
「わ…分かった、頑張るよ!にひひ♪」
「アニス、やつらの気配は感じないか?」
「まだみたい。えっと、…そっちはどう…かな?」
 だいぶ他者にも慣れてきたのか、小さな声音でセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)に聞いてみる。
「特にこれといった気配は感じないわ」
 “近くにボコールはいない”と、かぶりを振った。
「シャーレット、お前たちも待機するのか?」
「いえ、彼らが侵入した先へ行くわ」
「時の魔性を祓いに向うと…?」
「まさか、かなりの人数が向っているはずよ。私とセレアナは、その手下散らしをするつもり。本当の未来と関係ないから放置するなんて出来ないわ」
 例え任務が成功し無事に帰還しまえば、全てなかったことになる世界。
 だが、だからといって人々が襲われると分かっていて、見て見ぬふりもできない。
 “これが、私たちの祓魔師としての在り方よ”
 と言い、駆けて行った。



 一方、侵入前にひと調べしようとエースとクマラは、ラスコット・アリベルト(らすこっと・ありべると)が連れ去られた居所を探していた。
「―…うん、道の草や花たちは知らないみたいだな。クマラ、そっちはどうだ?」
「んにゃ〜、オイラのほうもさっぱりだにゃ」
 物の記憶を読み取ろうと、町のところどころ触れ調べてみたが、これといったものは何も発見できなかった。
「諦めて合流したほうがいいね」
「むぅー」
「私はもう行くとするよ」
 2人に付き合っていたメシエは足早に離れていく。
「おや、あれは…」
 侵入ポイントへ向っている七枷 陣(ななかせ・じん)たちの姿を見つけ、彼らの元へ走り寄る。
「陣、君たちも例の場所に行くのかい?」
「せやな、大元を逃がしたらいたちごっこや」
「もう皆さん先に行っていそうですし、私たちも急ぎましょう!」
 遠野 歌菜(とおの・かな)は足を止めずに言い、急ぐように促す。
「やつらをどうやって見つける気だい?」
「ソーマさんや弥十郎さんたちが探してくてれいるみたいやね」
 和輝からの定期連絡を受け、それぞれ分担して探していることをメシエに伝えた。
「なるほど。彼らなら万事うまくやってくれそうだね」
「もし気づかれたら、時の魔性が新しい器に憑く準備を早めるかもしれん。発見されるまで、目立つことはしないようにせんとな」
「了承したよ」
「お、あれやな」
 オアシスと雑貨屋の近くにある民家を指差す。
 長針短針3時の中間にあたる場所だし、間違いないだろうと駆け込んでいく。
「13ってことかな?なんとも不吉な位置だね」
「んー、まぁその辺はよくわからんな。細かいこと考えても仕方ないやろ」
「皆さん、ここからはあまり声を立てないように気をつけましょう」
 歌菜が口元に人差し指を当てて、静かにするように言う。
「ここが非物質のアストラル領域なんだろうな…」
 声音を小さくしたエースは周りを見渡し、物質世界と比較する。
 そこは草木1本存在せず、永遠と枝分かれした道ばかり続いているようだ。
「うにゃ、通った形跡がない…?」
 クマラが床に触れてみるが、誰かが通った跡すら読み取ることができなかった。
「それが俺たちの領域との違いなんだろうな」
「うーん…。あっ!」
 辺りを見回してみるが読み取れそうなものはなさそうだ。
 その時、視界に見慣れた姿が映り、思わず大きな声を出しそうになる。
 慌てて片手を口を塞ぎ、本を掴んでいる手をぶんぶんと振り、自分たちの位置を知らせた。
「クマラ……!っと、危ない…、大きな声は出しちゃいけないんだったわね」
 少年の姿に気づいたコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)が手を振り返す。
「連絡役が言うには、あまりくっつきすぎないように、行動するようにってことみたい」
 一塊になっていると不意打ちをくらった場合、全滅する危険可能性を考えてのことだと伝えた。
「あたしたち完全アウェイだからね」
「慎重かつ大胆にってことかしら?」
「女神様は常に大胆一択だろ」
 カティヤ・セラート(かてぃや・せらーと)のセリフに対し、すかさず月崎 羽純(つきざき・はすみ)がつっこみを入れた。
「な、何よそれ。私が脳筋だとでも言いたいわけ?」
「いや、そこまでは言ってない。でもまぁ…」
「んーもぅ、この子ったら!!」
「まぁまぁ、落ち着いて!今、敵に見つかったら不味いから…ね?」
 2人の間にコレットが割って入り、両手でカティヤの口を覆う。
「わ…分かったわよ、もうっ」
 “敵に見つかる”という単語を耳にした彼女は、吊り上げた柳眉を下げた。