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【祓魔師】アナザーワールド 2

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第9章 偽りの未来の導き手時 Story4

 アストラル領域のほうは方が付いたと、和輝がベルクから報告を受けた。
『了解。残党はこちらで処理する』
「和輝〜、どんなお話してたの?」
「向こうが片付いたらしい」
「ほぇ…アニス暇のまま…」
 結局退屈なまま終わるのかと、しょんぼりとする。
「そうでもない。元を断ち切るのも仕事の一つだ」
「うーん、どういうこと?」
 さっぱり訳が分からず、きょとんとした顔になり小首を傾げた。
「むむ、何か来るよ!」
 ペンダントの中のアークソウルに視線を落とし、よくない気のものがくると告げた。
 そこへ目を向けると、一つの家から黒フードの集団が駆け出て、そのすぐ後ろからセレアナたちの姿が見えた。
 どうやら和輝たちのほうへ追いやっているようだ。
 1人のボコールが、“あの女、後ろに目ついてんじゃね!?”と憎まれ口を叩きながら、彼女らの容赦ない仕置きから逃げている。
「ばかね。セレンの探知から逃げられるわけないでしょ」
 光の鞭を振るいながら追い込んでいく。
「来たか」
「あわわっ」
「アニス。やつらの魔性はいるか?」
「ううん、いないよ」
「なら俺でも十分、相手できそうだな」
 祓魔銃を撃ちながら的確に1人ずつ仕留めてやる。
『セシリア。東30度より、およそ西方20度へ数匹向った』
『はいはーい。探知できたらタイチたちに知らせるわ』
 テレパシーをもらったセシリアが返事を返し、すぐに仲間とコンタクトをとる。
「あ、もしもーしタイチ。そっちのほうに1人いったからよろしくー」
『任せておけ』
 と、言いつつさっそくペトリファイの洗礼を受けかける。
 レクイエムのとっさの判断でガードしてもらえたが、ガミガミ説教されてしまった。
「んもう、気抜き過ぎじゃないの!?」
「す…、すまん。よっしゃ、気ぃ取り直してちゃっちゃとやるか!」
「ざけんなよ、小僧がっ」
 腹に風穴あけてやろうと、ボコールがロッドから漆黒の矢を放つ。
「へ、甘いぜ!」
 黒フードの服に掴みかかり、ゼロ距離から酸の雨をくらわせてやる。
 たまらず転げる姿を見下ろし、勝利の親指を立てた。
「どんなもんだっ」
「あっ、ゴリマッチョさん…上、上ーー!!」
「空しかねぇけど…?…とっ!?」
 突然、空から人が落下し、レクイエムが声をかけるのが遅かったら、危うく下敷きになるところだった。
「愚か者め。相手を侮っていては、いつか死ぬぞ」
 手馴れた者だという思い込みが、命取りになるぞとリオンが怒鳴る。
「これ…おまえがやったのかよ」
「私以外に誰がいると?バカ者め…もっと腕を磨かぬか」
「リオンって、いつの間に心配性になったの?」
「な、何を言うかアニスッ」
 本心とは裏腹な態度を少女に見抜かれ、俯いて真っ赤な顔を隠す。
 一方、樹たちの方は…。
「連絡があった数通りだろうか?」
「そうだね、樹ちゃん」
 大量の残党の真ん中で、章が一息ついた。
「ふむ。大元を断ったということは、しばらく大きな山はなさそうだな」
「さぁ〜。そう思っているのも今だけかもよ。なんてね♪」
 不謹慎なことを…と嘆息しつつ、今まで休息できないほどの大忙しだったから和む一言でも言おうと、彼なりに考えたのだろうと許してやった。



 逃走したボコールたちの方も片付き…。
 残るは大元の懺悔を待つのみだった。
 炙霧のほうはまったく反省の色を見せず、ふてくされるばかり。
 もう1人の魔性はというと…。
 抵抗するそぶりを見せなくなったとはいえ、世界を壊しかけた魔性。
 安易に近づいていいものではなかった。
 …が、ただ1人…。
 結和だけは違っていた。
 彼女は臆せず、サリエルの元へ歩み寄る。
「まだ、和解する気になれませんか?」
「―……私は、許すことは…できない。けど、関係ない者までは…」
「そう…ですか」
 間違いとはいえ、酷く虐げた者たちは絶対に許せない。
 結和は彼の言葉に、その者たちとの和解の時はもう来ないのだと悟った。
「わ、私たちとは、仲良くなれませんか?」
「いや……それは…」
「(どうしても無理なんでしょうか…)」
 否定的な一言を耳にした結和は落胆の顔をする。
「ただ、君みたいな人に、もっと早く会えていたなら…。違った世界が見えたかもしれません…」
 それが運悪く、あのシスターだったということ。
 縁さえあれば、きっと会えていたのだろう。
 だが、それもただの夢物語。
 命の時が終わり、砂のように身体が崩れていく。
「そ、そんな。…いや、だめ、こんなこと…っ」
 彼の身体を掴もうとする手から、さらさらと零れ落ちてしまう。
「もう、…時間みたいですね」
「ふざけんなや、生きて償え!そんなん…、オレが許さん!…なっ!?」
 死なせるかあと彼の襟首をひっつかもうとするが、するりと手を抜けてしまった。
「―…分かりませんか?下法の…代償です…よ。だから、全てを失ったら…消えるしかないんです…」
「いや、いやです。こんなお別れなんてっ。あぁ、あぁあああーー!!」
 どんなに泣き叫んでも代償は止まらず消えていく。
「ただですね、…恨み言だけ、残らず、よかった…です」
 そう結和の手に触れ、時を終わらせていったのだった。