天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

東西統一記念ロイヤルガード合コン

リアクション公開中!

東西統一記念ロイヤルガード合コン
東西統一記念ロイヤルガード合コン 東西統一記念ロイヤルガード合コン

リアクション

■□■4■□■ 桜井静香

そのころ、静香は、会場の隅でおろおろしていた。

花京院 秋羽(かきょういん・あきは)は、
そんな静香に、飲み物を渡す。
「こんにちは。せっかくのパーティーだし、楽しもうぜ」
「うん、ありがとう」
静香は、気持ちを奮い立たせたように言う。
「静香校長、人気だもんな。
さっきから、ダンスに誘われていただろ?」
「はは……」
秋羽に静香は苦笑してみせる。
「疲れてるだろ。
こっちでうまいものでも食べよう」
そして、秋羽は、会場の隅のテーブルに料理を運び、
静香と一緒に食べ始めた。
ふと、視線を感じ、静香が秋羽の方を見ると。
「目、つぶって」
「え?」
「いいから、早く」
断りきれずに静香が目をつぶると、頬に何かが当たる感触がした。
「ソースがついてるよ」
ナプキンで秋羽がソースをぬぐってくれたのだった。

★☆★

「皆、聞いてくれ!」
そこに、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)が、
会場の真ん中でマイクを持って演説を始める。
「俺様からひとつ提案がある!
この場はラズィーヤ嬢が自身の体調が悪いにも関わらず
東西シャンバラの独立と今後の友好を願って、企画してくれた。
俺様は今! 非常に感動している。なんとしてもこの企画を成功させたい!」
注目を浴びつつ、ゲドーは続ける。
「だが、この中にはリアじゅ……もとい、すでに恋人いる奴、
もしくがやる気がない奴は同じような境遇の奴らと下船、
あるいはただ踊って食事をして帰ろうと思っている奴がいるかもしれない。なぁ、皇君」
「お、俺!?」
彼方がいきなり名指しされてビクリとする。
「いや、ロイヤルガードの面々にそんな奴はいないと俺様も思っている。
しかし!
もし!
万が一!
億が一にもいたらそれはラズィーヤ嬢の心を土足、いや、スパイクで踏みにじる行為となろう!」
「あわわ、何言ってるんだろう……」
ゲドーを見て、静香は青ざめる。
「というわけで俺様から提案がある。
一つはカップルは下船時に必ずキスをしてもらう!
もう一つは終了時にカップルがいない場合、全員の前で告白してもらう。
そうすればそういった事態は避けられるはずだ! なぁ、静香校長」
「ええーっ!?」
「まさか、断る理由もあるまい?」
(これでリア充大爆発。だ〜ひゃっはっは)
「そ、そんなことできるわけないよ!」
「できるわけないだろ!」
静香と彼方の声が重なるが。
「ほほーう、では、静香校長は、病身のラズィーヤ嬢の気持ちを踏みにじると!
百合園女学院校長の立場にもかかわらず踏みにじるということだなぁ!?」
「そ、そんな……」

★☆★

しかし、そこに、新手が現れた。
クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)と、
島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)
島本 優子(しまもと・ゆうこ)
三田 麗子(みた・れいこ)であった。
「桜井静香校長。大切なお話があります」
「な、何ですか?」
クレーメックとパートナー達の不穏な空気に、静香は身をこわばらせる。
「百合園女学院の代表者として、
帝国に与して戴冠式を妨害した責任をとるのは、
ラズィーヤさんではなく、校長であるあなたの役目なのではありませんか?」
「え?」
「さらに、厳しい言い方にはなりますが」
クレーメックは続ける。
「シャンバラ宮殿の戦いに際して帝国軍に積極的に協力した訳ではないと言っても、
百合園がシャンバラ独立を目指して戦った人々の敵に回った事に変わりは無く、
多くのシャンバラ人から不信を招いているのではありませんか?」
「ええっ!?」
目をグルグル回し始めた静香に、クレーメックは畳み掛ける。
「その上で、校長として帝国への協力の責任をとると同時に、
人々に百合園のシャンバラに対する忠誠が本物だと理解して貰うために、
あなた自身の手で男を捨てて宦官になってはどうでしょうか?」
「えええええええええええええーっ!?」
ヴァルナや優子は、手術道具一式を用意しており、
麗子に至っては、手術中に邪魔が入らないよう見張るという念の入れようであった。
「自分自身の手で男の象徴を切り落とし、
宦官としてアイシャ陛下に終生お仕えする覚悟を示すのです。
校長のあなたがそこまでしてみせれば、百合園に対する人々の感情も和らぐでしょう。
僭越ながら、準備は整えています……さあ、百合園女学院の校長として、ご決断を!」
「そ、そんなこと言われても!?」
「あなたは校長として生徒達の置かれた現状を何とかしたいとは思わないのですか?」
ヴァルナは、真面目に静香を説得する。
「大丈夫、中国式の伝統ある方法よ」
優子が、落ち着き払った口調で言う。

「そそそそそ、そんな、僕……」
涙目になって逃げようとする静香だが。
その足元に、薔薇が突き刺さる。
「キャー!?」

「仮面雄狩る、あなたの大切なものを貰い受ける!」
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が、
芝居がかった口調で、ナラカの仮面とタキシードを身につけ、
高いところから登場した。
「見よ!
これが、貴重なモノをささげてくれた、
変熊君の神々しい姿よ!」
「あははははははー! ラズィーヤさん、見てるぅ?
僕、男の女の子になっちゃった〜!」
群衆がおお、と息を飲む。
変熊の股間にはあるべきものがなかったのだった。

「あ、あのバカ女……!」
その様子を、アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)が発見して憤る。
「仮面つけて声色変えた程度で誤魔化せるとでも思ってんのかよ!
今日と言う今日は我慢ならねぇ、化けの皮……もとい仮面剥がしてやっから覚悟しやがれっ!」
アストライトはパーティー会場の隅でボーイをしていたのだが、
リカインを発見して駆け出した。

「さあ、ご決断を!」
「あなたの大切なものを捧げなさい!」
クレーメック達とリカインに迫られ、静香は慌てる。
「ちょ、待ってー!? 落ち着いてー!?」

涙目な静香の前に、真口 悠希(まぐち・ゆき)が現れる。
「静香さま、危ないっ!
捧げるなら、ボクが身代わりにっ!」
「ええっ、悠希さん!?」
静香と話すために、西ロイヤルガードになった悠希だったが、
危機に矢も盾もたまらず駆けつけたのだった。

さらに、地響きが聞こえてきた。

「桜井校長ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
目の部分が隠れる仮面を身につけたロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)であった。
「ロザリンドさん!?」
「私はか弱い乙女のロザリンドではありません!
西ロイヤルガードの魔法少女プリティランサー!
この槍に見えるものは、リボンがついていますから、魔法のステッキなのです!」
「魔法少女プリティランサー!
相手にとって不足なし!
仮面雄狩る、参る!」
「誰が仮面雄狩るだよ!」
リカインにアストライトがラスターブーメランを放ち、仮面を破壊する。
「ううっ!?」
リカインは、のけぞるが。
「くっ、正体がばれてしまうとはね。
こうなったら、男全員を宦官にしてしまえば、すべて問題は解決よ!」
「何言ってやがる!?」
リカインにアストライトがツッコミを入れる。

「許しません!
危険なことをしたり、皆の迷惑になるようなこと、
特に! 桜井校長に危害を加えようとする者は!
らんらんプリティランサーが成敗です!」
悠希が囮として立ちはだかってる隙に、
ロザリンドは、リボン付きの槍でクレーメック達やリカイン、ゲドーをぶっ飛ばした。
「皆、お星様になーれ♪」

「うわあああああああああああ!?」
「きゃあああああああああああ!?」
「うおおおおおおおおおおおお!?」

「なんで俺までー!?」
アストライトも一緒にぶっ飛ばされていった。

「魔法少女プリティランサー、今日も事件を解決です!」
お星様達をバックに、ロザリンドがポーズを決める。

★☆★

そのころ、悠希に誘導されて、安全な場所にやってきた静香は。

「あの……静香さまと二人きりで共に過ごせるのは
今日で最後になるかもしれません……」
「え……」
静香に、悠希は続ける。
「でも……それでもボクは静香さまの幸せを……。
そして周囲の皆様の幸せを
心から祈っています……。
それだけ……どうしても伝えたくて」
「悠希さん」
「貴方の事……大好きでした。
でも……貴方の力になり切れなかったボクを許して下さい……」
泣きそうになりながら紡がれた悠希の言葉に、
静香は真摯な視線を向ける。
「悠希さんは、今日も僕を助けてくれたじゃない。
僕達は、ひとりひとり、皆、完璧にはなれないけど……。
それでも、少しずつでも、前に進むことはできるよ」
「静香さま……」
「だから、今日は、ありがとう」
「静香さま……っ」
悠希は、静香のお礼の言葉を受けて、一人で夜のヴァイシャリーに帰って行った。

★☆★

「じゃあ、行こうか、ロザリンドさん」
「私は、その、プリティランサーです」
「はい、プリティランサーさん」
静香は、ロザリンドと船を下りると、夜の街へ消えた。

ロザリンドは、静香の家の前についたら、初めて仮面を外して挨拶した。
「今日は、お騒がせしました」
「ううん、どうもありがとう」
「あ、あの」
「ん?」
ロザリンドは、首を横に振って、言った。
仮面を外したのに、
いや、そのせいで緊張がとぎれたのか。
夜風に当たる自分の顔がひどく火照っている。
「な、なんでもありません。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
静香は、優しく微笑した。

(お泊りしたいって、恥ずかしくて言えなかったな……)
ロザリンドは、静香が玄関に入るまで見守ったのだった。