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【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防!

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【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防!

リアクション

『制御を可能な限り操縦室に切り替えて、直ちに避難しろ!』
 制御室に無線を通してブリッジにいる神楽崎優子の声が響く。
 アウリンノールが操るジェファルコンは、剣を降り回しアルカンシェルに甚大なダメージを与えながら、上昇をしていた。
 狙いはアルカンシェル中枢、制御室……そして、操縦室と思われる。
「けど、ここが落されたら次はそっちだろ!」
 制御室前を守る 武尊が大声を上げる。
 轟音と震動が響き渡っている。あと1分……いや、30秒も時間がないことは解っている。
『ここは何としてでも守る。皆を連れて、そこから離れるんだ』
「畜生……っ。二代目風雲又吉城がッ!!」
「守れる、訳ないだろ。神楽崎……!!」
 武尊は悔しがっている又吉を無理やり捕まえて引っ張ると、一番近い階段室に向かう。
 向かう先はブリッジ。神楽崎優子を死なせるわけにはいかない。
「時間がありません、早くこっちに!」
 遊撃に出ていた志位 大地(しい・だいち)が、パートナーのシーラ・カンス(しーら・かんす)メーテルリンク著 『青い鳥』(めーてるりんくちょ・あおいとり)(人型名:氷月千雨)と共に、制御室前の通路へと駆け付ける。
「ミケーレさん、皆さんこちらです!」
 イリスがミケーレと作業員たちを制御室から連れ出す。
「ここから離れることが優先です。奥の階段室へと走るわよ! 案内して!」
 大地に言い、イリスはミケーレ達と、フェルトクラウンを先に行かせ、自分は皆の後に続く。
「た、大変なことになってきましたね」
 冷や汗を流しながら、ルークはアルカンシェル前方と後方を隔壁で遮断、酸素の調整指示を出した後、転がるように制御室から飛び出した。
「急いで駆け抜けてください。敵はこちらで引き付けます」
 大地は奥へと皆を誘導する。
 だが、そちら側の通路、階段室は侵入した機晶姫が移動に使っている。
 一切、躊躇している時間はない。
「前方から害意を感じる。数体来るわよ!!」
 ディテクトエビルで探っていたイリスが叫ぶ。
「任せてください」
 通路に機晶姫の姿が現れた途端。
 大地は黒曜石の覇剣とウルクの剣を持ち、斬り込んでいく。
 歴戦の立ち回りで、機晶姫が放った攻撃を躱して、一体目の首を刎ね、二体目の腕を斬りおとす。
「っ……」
 後方で、シーラと千雨が、大地が交わした攻撃をその身で受ける。
「大丈夫。ちゃんと躱して。こっちはすぐに回復できるから」
 気遣いの目を向けた大地に、千雨はそう言って、二丁の魔道銃で魔力を放出。
 撃たれた機晶姫に、大地が剣を繰り出して、完全に仕留める。
「逃げてくださいね〜。ここを越えれば安全ですわ〜」
 シーラは荒ぶる力で自分の攻撃力を、嫌悪の歌で千雨の魔法攻撃力を上げる。
「魔法いくわよ!」
 千雨が凍てつく炎を発動。炎と氷の攻撃が機晶姫に直撃。
「はーい、撃ちますわ〜」
 シーラはロケットパンチを発射。2人の同時攻撃で、機晶姫1体が後方に吹っ飛び、煙を上げて動かなくなる。
「……!!」
 角から半身だけ現した人に近い形の機晶姫が、グレネードランチャーを発射。
「頼みます……!」
 大地は攻撃を躱して、斬り込む。
「僕も守る!」
 クラウンが皆の前に駆け出て、ディフェンスシフト。
 小さな体で、擲弾を受けた。
「しっかり!」
 倒れる彼女を千雨が支え。
「治しますわ〜」
 シーラが大地の祝福で癒す。
「みんな、がんばって、がんばってっ!」
 フェルトはフォースフィールドを展開。
「ボクもがんばるから……!」
 カメハメハのハンドキャノンを撃ち、機晶姫が向けていた武器を撃ち落とした。
「すみません、急ぐんです!」
 大地が、機晶姫の胸を貫き、そのまま剣を強引に引き上げて斬り裂き、もう一方の剣で頭を破壊した。
「走り抜けるわよ!」
 アンデッドのリビングアーマーと従者の飛装兵に、左右からミケーレと作業員を守らせながら、イリスは後方から飛び出して、武器を手に機晶姫に接近。
「通しなさい!」
 罪と死を放ち、機晶姫に大きなダメージを与える。
「そこ! 邪魔はさせないッ」
 更に逆方向に潜む機晶姫にも、暗黒を放った。
「開けていただきます!」
 倒れた機晶姫に大地が剣を振り下ろして、破壊。
「さあ、走って!」
 出来た空間にイリスが皆を導く。
「何があっても、振り向かないで」
「まっすぐ走るのですわ〜」
 千雨とシーラが皆を率い。
「全速力で走るの……!」
 フェルトは皆と共に走る。
「足元に注意してー!」
 クラウンはランスバレストで、散らばる瓦礫を払い飛ばした。
「うおおおお……地響きがー……!」
 最後を走るルークが皆を押しながら進む。

グガガガガガガガ――!

 凄まじい音が響き、大地が割れるかのように、後方の床が割れた。
 巨大なエネルギーの刃が現れ、制御室を一太刀で灰にした。

 格納庫――。
 アウリンノールは、2度に渡り壁を破壊し、機晶姫をアルカンシェルに招き入れた後、天井の破壊へと移行した。
 事件発覚後の又吉の素早い操作で隔壁が下されており、空気の吸出しは治まっていた。
 だが、その場にいる者はイコン用の高圧電流が流れている投網で拘束されているため、身動きが出来ない……瀕死の重傷を負い、多くの者が意識を失っていた。
「……借りる、ぜ……」
 ゼスタが、近くで自分を庇うように倒れている尋人の手から、黒の儀礼剣をとった。
「……っ」
 細身のその剣を、円を描くように操り自分達を拘束するネットを切断する。
 そこから這い出して、外から更に大きくネットを斬り、仲間に被さっていた切断部分を投げ捨てる。
 激しいダメージを受けて、ゼスタは力尽きた。
「テディ……」
 は、テディに庇われていた。
 陽には触れないような姿勢で、テディだけが直接投網を受けていた。そして、そのまま彼は気を失っていた。
 近くにいた……一緒に作業をしていた、作業員からは命が感じられない。
 そんな状況の中で。
 陽は、震えていなかった。
 テディを抱きしめて、命のうねりを発動。
 それから、ゼスタが空けた穴から彼を運んで、投網の外へ出た。
「う……っ」
 テディが、仲間達が意識を取り戻していく。
「ゼスタ……」
 尋人は朦朧と投網の外で倒れているゼスタを見た。その手に握られている剣――友から贈られた剣を見た。
 指揮官として、薔薇の学舎の仲間として守る。
 その思いは、尋人の中に残っていた。
 騎士として。仲間と出会えた、パラミタの未来を守りたい。
「守る、んだ……」
 尋人は、サクリファイスを使った――。

「……殺せ」
 意識を取り戻したゼスタが、陽とテディに言う。
「二度とパラミタの地を踏ませるな。消せ……ッ」
「テディ……沢山、命が消えたんだ」
 そう言う陽の目に、怯えは無く、彼は冷静だった。
「わかった」
 そう言って、テディは弓を構え、天井を大きく破壊し上昇していくカタストローフェの背に、全ての能力を用い、エイミングで狙いを定め渾身の力で矢を放った。
 ラヴェイジャーの凄まじい一撃は、推進装置に大きなダメージを与えた。
 カタストローフェの動きに大きな影響が出る。
 だが、ここから狙えたのはその1回限り。
 イコンは床を破り上昇していく。
「報告は、行っているようです」
 ロザリンドシャロンと支え合うように立ち上がる。
「先ほどの攻撃によりコンピューターはもう使えません。医務室も、ブリッジもこちらへの報告どころではないでしょう」
 ロザリンドは、ゼスタに目で指示を求める。
 医務室の円からテレパシーで一度だけ連絡があった。仲間が捕らえられ、判断を間違うと大きな被害が出そうな状況とのことだ。
「目に映る、敵を潰せ」
 ゼスタはそう命じると、倒れて動かない尋人に近づいて抱え上げる。
「んな状態で、バカなことしやがって……。悪いが、俺も神楽崎に何かあったら使い物にならなくなる。この場はお前等に任せる」
「はい、ゼスタさんはバリケードの裏に。万が一、リフト側から機晶姫が現れた場合は、私が撃退いたします」
 ロザリンドがゼスタをバリケード裏へと導く。
「やはり、無理ですね」
 シャロンは尋人にヒールを使ってみたが、彼は回復しなかった。
「医務室にお連れしたいところですが……」
 悔しげに言いながら、シャロンは命をつなぎとめる為の処置をしていく。
「どこも手一杯でしょうから、余分に入り込んだ敵を一体でも多く止めないとね。ランスロット、悪いけど付き合ってもらうわよ?」
「私も祥子と考えは同じだ」
 祥子は、荒れ果てた格納庫の状態に愕然としながらも、気力を振り絞りランスロットと共に、立ち上がる。
立ち上がる。
「守りきるために、出来ることを……」
 伊織は、バリケードに手をついて立ち上がる。
 イコンの攻撃は想定外だが、機晶姫の攻撃は防げる強度に仕上げたつもりだ。
「行かせませんわ!」
 ベディヴィエールは、立ち上がるなり走り、階段に向かう機晶姫に突込み、シーリングランス。
「そっちには行かせません。もう一人も通しません!」
 伊織は力の限り、雷術を放って機晶姫の進行を止める。
「あなたの相手はこちらよ」
 祥子が梟雄剣ヴァルザドーンを手に、斬り込む。
 ただ、斬ることが目的ではない。
 祥子の動きに気を取られた機晶姫が撃った攻撃が、別の機晶姫の身体を掠める。
「仲間をも傷つける、そんな強力な武器、ここでは向かないのよ!」
 剣を叩き込み、目の前の機晶姫を破壊した。
「これ以上、仲間を傷つけさせるわけにはいかない」
 ランスロッドはブレイドガードで敵の攻撃を防ぎながら踏み込み、迅雷斬を敵に浴びせる。
「いくよ、せーの!」
 メリッサはバリケードの後ろから機晶スナイパーライフルを構えて、弾幕援護。
「まだまだいけるでー!」
 身体はぼろぼろ、状況もぼろぼろだけれど、テレサは不敵な微笑みを浮かべて、強化光翼で飛び、光の刃を出したヴァジュラで斬りつけていく。
「でーい!」
(こっちは大丈夫。機晶姫の侵入も、脱出ももう許さないよ)
 矢を放ち、機晶姫を討つテディの隣で、陽はテレパシーで各方面に報告をしていた。
 制御室、ブリッジからは返事がない。
 代わりに、破壊音が響き、瓦礫が天井から降り注いでくる。
「余所を気にするな、目の前の敵を全て滅しろ」
 ゼスタが言うまでもなく、格納庫の契約者達は機晶姫を止めることに命を振り絞っていた。