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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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第三章 軟体ゾウの奇妙な生態 2

 さて。
 こうしてとりあえずの「作戦会議」も終わり、いよいよシェルターに乗り込む、ということになったのだが。
 やはり、最初の関門はゾウ型の巨大な軟体生物だった。

「ふむ……今回はこちらが彼らの生活圏に侵入するわけだし、殺さずに済むものであれば無益な殺生は避けたいのだが」
 鉄心の言葉に、彼のパートナーのティー・ティー(てぃー・てぃー)も賛同する。
「私も、あまり手荒なことはせずにすんだら良いなと思いますけど……」
 一方、それと真逆の考え方なのが燕馬だった。
「まあ、それもわからなくはないけど。帰りのことまで考えたら、やっぱり倒さないとまずくないか」
「そうですね。私も少し何か切り捨てたい気分で一杯ですし」
 こちらに賛同するのはサツキ。もちろん先ほどの光景によるストレスが原因なのは言うまでもない。
「殺すことが目的ではない。が、殺さずに済ませなければならない必要もない、と」
 淡々とまとめに入ったのは刀真である。
「いずれにしても、最初にやるべきことはあの軟体生物を本隊の邪魔にならない場所まで誘導することでしょう」
 その点については、鉄心も燕馬も異論はない。
「あとは、まあどうにかして時間を稼ぐなり、無力化するなりするのがいいかと。最悪、本隊が突入後にいったん離脱して、本隊が戻ってきたら再度連中を引きはがすこともできるわけですし」
 実際どうするのがいいかはやってみてから考える、というとなんだかいい加減なようにも聞こえるが、敵の詳細がわからない以上はそれが最善手であることもまた事実である。
 よって、特に反対が出ることもなく、ひとまずはこの方向で行くことになった。

「それじゃ、行ってくるね」
 刀真にそう言って、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は軽く微笑んだ。
 彼女と鉄心がゾウ型軟体生物の注意を引いて、本隊の移動ルートから引き離す。
 ある程度動いたのを見計らって、刀真が軟体生物の後ろに回り、本隊通過中に軟体生物がそちらに向かうのを防ぎ、前の二人と連携して指定ポイントまで軟体生物を追い込む。
 残ったティーや燕馬たちは指定ポイントで待機し、軟体生物が来たら「比較的穏健な手段から」様々な手段を試して無害化、もしくは無力化を図る、という手はずである。
「ああ。まあ、言うまでもないと思うが、気をつけてな」
「大丈夫、任せて」
 彼女も剣の花嫁であるから、自身の制作者が誰であるかに全く興味がないと言えば嘘になる。
 けれども、彼女はそれをわざわざ知りたいとまでは思わなかった。
 自分には刀真がいる。月夜にはそれで十分だったのだ。
 ……とはいえ、自身の光条兵器の威力については、今後を見据えて強化できるものならしておきたかったため、そのことは一応ゲルバッキーに尋ねに行ってはみたのだが。

「さて、では行こうか?」
「ええ」
 動きやすいようにある程度の距離をとって、鉄心と月夜が「わざと相手に見えるように」ゾウ型軟体生物に近づいて行く。
 軟体生物は見慣れぬ侵入者に警戒するように向き直ったが、それ以上の動きはなく。
「話しかけ……ても、多分ムダよね」
「……だろうな。ただの軟体生物なら、知性の方も推して知るべし、だろう」
 そんな会話をしながら、ある程度の距離を保って、ゆっくり、ゆっくりと軟体生物の周りを回るようにして、その視線を本隊のルートから逸らしていく。
「よし、後はこのままこっちへ……」
 鉄心がそう思った時、不意に、ゾウ型軟体生物の「鼻」が、吹き戻しのおもちゃのようにピンと伸びた。

 燕馬たち三人もそれなりの使い手ではあるが、鉄心やティー、刀真や月夜らはこのメンバーの中でも確実に上位に位置する戦闘能力の持ち主である。
 それだけの人材を、はたして最初の関門につぎ込んでしまうのが正しい選択なのか。
 実のところ、そのことに疑問を持っていたものも、メンバーの中には決して少なくなかった。
 だが、この瞬間、彼らはこの人選がいかに正しかったかを知る事となった。

「……っ!?」
 とっさに、鉄心と月夜が左右に跳ぶ。
 次の瞬間、軟体生物の鼻から放たれた超高圧の水流が、二人のいた辺りの地面をえぐりとった。
「飛び道具!? 厄介な!」
 戦闘能力、とりわけ素早さに劣る者であればこの一撃を避けることは至難だっただろうし、当たっていればタダでは済まなかっただろう。
「やむを得ない、少し手荒な真似をさせてもらうぞ!」
 このまま固定砲台化されてはたまらないので、鉄心が魔道銃を、そして月夜もラスターハンドガンを取り出し、水流による攻撃をかわしながら、少しずつ下がりつつ散発的に射撃を行う。
 すると、さすがに軟体生物の側でもそれを鬱陶しく感じたのか、ようやく間合いを詰めるように二人の方へと歩き出した。
「よし、今だ!」
 それを見計らって、刀真が軟体生物の後ろに飛び出し、移動ルートを確保する。
 その後ろを本隊が進んで行ったが、すでにその様子は軟体生物の目には入っていなかった。