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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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第三章 軟体ゾウの奇妙な生態 3

「ゾウさん……おっきいです」
 近づいてくる軟体生物を見上げて、ティーはそう呟いた。
 それもそのはず、体高20メートルと言えば、6〜7階建てのマンションに匹敵する高さである。
 地上で見かけるアフリカゾウの6〜7倍のサイズなのだから、改めて見ると驚くのも無理はない。
 まして見渡す限り荒野のニルヴァーナでは、近くに「大きさを比較できるような何か」も特に見当たらない。
 ゾウのイメージがはっきりしていればしているほど、見るたびに遠近感の狂う相手であると言えよう。

 そして、その一歩は端から見るとえらくゆっくりに見えて、移動速度自体は歩幅の関係で実は相当速い。
 なので、追われている鉄心や月夜はすでに全力疾走である。
「そろそろ予定ポイントに到着する! ティー、準備を!!」
 その鉄心の言葉に応えたのは、ティーではなくイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)
「今のわたくしはドルイドですもの。鉄心や他の皆さんよりも、動物の気持ちはよくわかりますの!」
 そう言いながら、懐から取り出したのはぽいぽいカプセル。
「イコナ! 危ないから下がってなさい……って聞いてるか?」
 もちろん、鉄心の言葉などもう耳に入ってはいない。
「これがわたくしのたどりついた回答ですわ!!」
 鉄心たちが再び左右に分かれたのを確認してワイルドペガサスのレガートの背に乗り、十分な高さから軟体生物の目の前めがけてカプセルの中身を解放する!

 ……次の瞬間、軟体生物の前に現れたのは、数十メートルもある巨大な魚……クモワカサギであった。
「……は?」
 あまりにも予想外な物体の出現に、揃って目が点になる燕馬たち三人。
 そして軟体生物も、驚いたようにして足を止め。

 ……ややあって。
 その鼻を器用に使って、クモワカサギを頭から食べ始めた。

「……食べてますね」
「ああ……」
 合流したところで足を止め、ぽかんとした顔で見上げるティーと鉄心。
「……まあ、軟体生物ですしね」
「だよなあ、タコやイカの仲間だもんなあ……そりゃ魚も食うよなあ」
 すっかり毒気を抜かれた表情のサツキと燕馬。
「……参ったわね」
「ああ。ここまでうまくいくとは思わなかった」
 呆れたように見つめる月夜と刀真。

 彼らの見つめる前で、軟体生物はクモワカサギを完食し。
 お腹いっぱいになったところにイコナの眠りの竪琴の演奏と鉄心のヒプノシスの重ねがけを受けて、その場ですやすやと眠り始めたのであった。

「ほら、やっぱりわたくしの思った通りですの! わたくしをお留守番にしなくて正解でしたの!」
 誇らしげにそう主張するイコナに、鉄心はやれやれとばかりに苦笑してみせた。
「わかったわかった、今回はお手柄だった……が、あまり無茶はするんじゃないぞ?」