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【創世の絆】光へ続く点と線

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【創世の絆】光へ続く点と線

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遺跡の深部を探せ

 今回の一件で背後で糸を引くものがなんなのか。ここがインテグラルの研究施設であったなら、インテグラルの再起動に関係している何かがあるかもしれない。本当ならインテグラル・ナイトを停止させ、じっくり調査出来れば最高なんだが……。そんなことを思いながら源 鉄心(みなもと・てっしん)ティー・ティー(てぃー・てぃー)イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)と共に遺跡内の人気のない通路を慎重に進んでいた。
(調査中の遺跡をピンポイントで襲撃か。……またグランツ教あたりが関係しているのかも知れないが。
 クイーンのがあったということはキングのヒトガタも存在する可能性はあるか?
 いずれにせよ、ここの防衛システムに干渉するつもりだったし……上手くいけば脱出の支援になるかもしれないな)
ここが破壊される前に取れるだけのデータを取れば、参考になるかもという有志たちとHCのマッピング情報を共有し、随時更新してゆく。いくらも行かないうちに隔壁が行く手を塞いでいた。鉄心はおざなりに機晶技術とニルヴァーナ知識でチェックしてみる。
「うーん、やはり端末からではシステム停止は難しいか……仕方ない、離れてろ」
手にしたバズーカで吹っ飛ばす。吹っ飛んだ隔壁の向こうもまた似たような通路が続いている。爆発の余波をうけた照明がひとつ吹っ飛んで、薄暗い影を作る。ティーがトレジャーセンス、野性の勘、シックスセンスを総動員して周囲から手がかりを探る。
「超知性体は探索担当ですの」
イコナはそのあとをとことことついていく。ティーは真剣な表情で何か感じ取れるものがないかと一心に集中している。
「何より、私にはこのうさ耳があります……うさ!……うさ……うさうさぁ」
ティーのカン(?)を頼りにバズーカや爆弾で隔壁を吹き飛ばしながら進んでゆくうち、通路が5方向に分岐する場所に出た。
「おい、一人で行くな、危ないぞ!」
鉄心の静止も聞かず、イコナが突然、わき道に駆け出した。
「奥の方目指すなら、途中まで一緒に来ますの!同じ赤色のよしみですの!」
そこにいたのはキロスだった。香菜らを探して彷徨っていたらしい。
「……筋力……じゃなくて、戦力げっとぉおお! ですわ!」
「……」
キロスが不機嫌な様子でイコナに引っ張られてくる。単身探していたのだが、香菜たちは見つからないらしい。
「HCで連絡を取り合っている人たちもいますけど、情報はまだないですねえ。うさ」
ティーがにこやかに言う。キロスの渋面がさらに渋くなった。何も考えずにただ思いつくまま探していた自分の効率の悪さに思い至ったためだ。
「……もしかして、闇雲に探していたんですの?」
イコナが痛いところを的確に突く。キロスはそっぽを向いてしまった。
「むむ? この先に何かあるようです! うさみみにも野生のカンにも反応がっ!!
 裏づけのために獣寄せの口笛をっ!」
ティーのスキルに反応してやってきたのは、色といい照りといい艶といい、巨大なゴキブリに似た生き物だった。脚の数は4本だが、長い触角と平べったい体はまさに巨大化した台所の脅威そのものである。
「にゃああああああ!! いやああああああ!!」
イコナが悲鳴を上げるが、巨大ゴキには敵意はないようだ。ティーが恐る恐るインファントプレイヤーでイメージを投影し、道を尋ねてみる。
(これ――機晶ロボをイメージを投影する――が昔いっぱい居た場所知りませんか?)
巨大ゴキは見かけによらず親切だった。
「右通路を行った突き当たりのドアの奥、そこを左に行くと部屋があって機晶ロボがいるそうです!」
「よし、行ってみよう!」
巨大なゴキブリモドキに丁寧に礼を言い、ここは危険だから退避するよう伝えると一向は教えてもらった部屋に向かった。
「……気配があるな。10以上はいそうだ」
キロスが言う。
「さすが獣並みの感知力ですの」
イコナは褒めているのだろうが褒められている気は全くしない。キロスは顔をしかめた。
「相手している時間が惜しい。強行突破で行こう」
鉄心が言う。
「……望むところだ」
キロスが低く言った。全員後方に大きく退避させると、鉄心はドア前に爆弾を仕掛け、それめがけてバズーカを放った。いくばくたりとも道連れになるロボットがいればという算段である。思ったより広い部屋で、そこにいたロボットが一斉に押し寄せてくる。鉄心はイコナを小脇に抱えるとまだ煙を上げるドアの痕跡めがけポイントシフトで飛び込み、ショックウェーブで弾き飛ばしながら駆け抜ける。グラビティコントロールで壁面や天井をも足場に次の部屋を目視で探す。
「ティー、ちょっとこれ持ってろ!」
イコナを後方をキロスに護られ、ゴッドスピードでついてくるティーに向かってパスする。
「にゃぁああああぁぁぁ……!! レディに向かってひ、酷い扱いですのっ!!!」
空中を飛びながらイコナが抗議の悲鳴を上げる。
「舌かむぞ。黙ってろ」
「ううううううううう!! 今夜はウサギ鍋ですのっ!!!」
イコナがティーの腕に納まって、ティーに向かって八つ当たりする。

 そのとき、後方からハデな爆音が響いてきた。鉄心らを追ってきていた機晶ロボの群れがぐるりと向き直り、後方に向かい始める。
「フハハハ!この遺跡のお宝は、我らオリュンポス探索隊がいただく!」
ドクター・ハデス(どくたー・はです) である。無論配下のペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)も一緒だ。今回はハデスの身を案じ、同志であるセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)とそのパートナーの巨大招き猫のマネキ・ング(まねき・んぐ)、自称愛の戦士にしてナイスガイのマイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)、護衛として東 朱鷺(あずま・とき)も一緒だ。並み居る機晶ロボと、あまりのベタな展開に固まった鉄心、キロスらを前に、ハデスは啖呵をきる。
「フハハハハハハハ!! 我は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!
 ククク、ニルヴァーナ文明の遺跡とは面白い! この遺跡、我ら『オリュンポス探索隊』がもらった!
 隠されているというお宝を手に入れてくれよう! そして、その力で世界征服を成し遂げるのだ!
 ククク、キロスよ。ここは効率よく探索をおこなうためにも、我らオリュンポス探索隊と一緒に探索を行わんか?
 我らの戦力があれば、探索も容易なはずだ! この先にある遺跡最奥部のヒミツを目指すのだっ!」
「あぁ……分かっているのなら早く見つけてきてくれ……時間もそんなにないのだからな」
マイキーは遺跡に入ってからこの方踊りながらトレジャーセンスを発動していたが、現在オリュンポスの力が一丸となっている感動にうち震え、いつもにまして踊りのキレが増している。
「ボクは今、猛烈に感動しているっ!! オリュンポスの愛の力がいま1つになったこの瞬間を!」
そこにマネキ・ングが口を挟む。
「ニルヴァーナの全ては遺産はどれも我の物! 重要なものは常に最深部に存在するのだよ!
 フフフ……まぁ、我に任せておけ! ここは、我の庭のようなもの。必ずや諸君の期待そうモノを提供しよう」
この遺跡のすべてをマネキ・ング当人は元から知っている場所と思い込んでおり、今回の活動も探索というより必要なものを持ち出す活動だと考えているのだ。……無論全ては妄想なのであるが。
「……その前にこの状況が立ちふさがっているわけだが」
キロスが突っ込みを入れる。
「ええっ、な、なんでキロスさんがこんな所にっ!!」
アルテミスが叫ぶ。本人には一切自覚がない周知の事実なのだが、アルテミスはキロスに思いっきりキロスに惚れているのである。
「行け、我が秘密結社のメンバーおよび戦闘員たちよ! 邪魔な機晶ロボを排除するのだぁああっ!」