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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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 チョコレートケーキに迫る危機
 
 

 ――――メリークリスマス&良いお年を&あけましておめでとう 鬱姫!
 
   鬱姫がこれを読むころには、パパとママは南の島でバカンスを満喫中だ。
   南の島はいいぞ。寒いそちらとは大違いだ。

   ママからの伝言をついでに書いておこう。
   「家の大掃除頼むよねー、鬱姫ちゃん」……だそうだ。
   結構広い家だ、掃除は大変だと思うが鬱姫なら出来る! パパは信じてるぞ。
 
   それでは、パパとママは鬱姫の分まで南の島を楽しんでくる!
 
    P.S.
     鬱姫が帰る日に、ケーキが届く予定になってる。
     お友達……パートナーだったか? といっしょに食べてくれ!
     パパの大好物のチョコレートケーキだ。
     こんな優しいパパを持った鬱姫は幸せだと思う。
        後……パパの書斎の掃除はしなくて良いからな! というか、するな。
        パパとの大事な約束だ!
 
 
                   鬱姫をママの次くらいに愛してるパパより――――

 
 
 北郷 鬱姫(きたごう・うつき)は、ため息をついて読み終えた手紙をテーブルに戻した。
「鬱姫の家族は不在なのね。見たかったなぁー」
 パルフェリア・シオット(ぱるふぇりあ・しおっと)は残念がったけれど、すぐに興味は別のところに移る。
「チョコレートケーキが届くってこれかな? 鬱姫パパの大好物ってことはきっと美味しいんだよねっ、楽しみー!」
「……娘が帰ってきたというのに、うちの両親は! 私が好きなのはチーズケーキなんです。普通こういうときは自分の好きなものではなく、娘の好きなものを用意しておくべきだと思うんです……」
「鬱姫よ、突っ込むところ間違ってないか? こういう場合にお父上に言うのは『帰ってきたのになぜいない』じゃないのか?」
 タルト・タタン(たると・たたん)が逆につっこむが、鬱姫の方はその辺りは疑問には思っていないらしく、
「そうですか? それはいつものことなので」
 さらっと答えると、がたがたと掃除道具を取り出した。
「兄は帰郷しないそうなので、私たちだけで大掃除頑張りましょうか……」
「うん分かったー。『大掃除! ポロリもあるよ 大作戦!』ね」
 パルフェは鬱姫からハタキを受け取って振り回す。
「パルフェがポロリしたいのならしてもいいですけれど……私はしませんよ」
「えー、だってはりきって何かする時にはポロリもあるよ、ってつけるものなんだよっ」
「なにがポロリなんじゃか……」
 パルフェリアの主張に苦笑しながら、タルトも掃除道具を手に取った。
 
 
「それーっ!」
 パンパンパンベシッ! パンパンパンガキッ!
 パルフェリアが適当に振り回すハタキがあちこちにぶつかって、危険な音を立てる。
「パルフェ、そんなに暴れてるとケーキ落としちゃいます……あっ!」
 振り回したハタキにスカートを引っかけられて、鬱姫は慌てて裾を押さえた。
「掃除はまじめにするものじゃぞ」
「痛いよー、ごめんなさいー」
 タルトにごつんとやられてパルフェリアは謝り、しばらくは真面目に掃除に取り組んだけれど、またすぐに浮かれて騒ぎ出す。
「チョ、コレート、ケーキッー!」
「だ、ダメですよ、そんなに勢いよくバケツを振り回したら……」
 止めようとのばした鬱姫の手がぶつかり、バケツが大きくあおられて。
 バシャッ、と跳ねた水が鬱姫をびしょ濡れにする。
「ごめんなさいー! 鬱姫、大丈夫?」
「大丈夫じゃないですよ。これを拭くのは大変そうです……」
 自分のことはそっちのけで、鬱姫はきっちりとこぼれた水を掃除する。濡れた服が鬱姫の肌に貼り付いているのを見て、タルトはこっそりと呟いた。
「……このまま放っておいたら、本当にポロリもあるかもしれんな……」
 自分だけでもまじめに掃除をしなければと、力をこめて置物を磨き上げ……バキッ。
「……ふむ?」
 掃除なんてしたことがないから、さっぱり勝手が分からない。しかし、やっているうちに分かってくるだろう。鍛錬とはそういうものだと、タルトは気にせず掃除を続けるのだった。
 
 チョコレートケーキに迫る大掃除の魔手。
 果たして、大掃除が終わるまでチョコレートケーキは無事でいられるのだろうか!
                               …………………あれ?