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【空京万博】子猫と子犬のお散歩日記

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【空京万博】子猫と子犬のお散歩日記
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○     ○     ○


(うわーん、どうしよう。誰も開けないでくださいっ)
 遠野 歌菜(とおの・かな)は、びくびくしながら、隅に積まれた段ボールの中に隠れていた。
 わんにゃん展示場にお手伝いに訪れた歌菜だったけれど、どういうわけか、自分も子猫になってしまっていた。
 ペットフードを取りに行った時に、試供品として置かれていたジュースを飲んだことがいけなかったらしい。
(他にも子犬や子猫になった人、いるみたいだし……戻る方法はあると思うんだけど)
 歌菜はここから出ることが出来なかった。
 出たのなら、多分客やスタッフにつかまってしまうから。
 撫でられたり、抱きしめられたり、お風呂に入れられてしまったり。
(そんなのダメ、絶対ダメ、ダメなの……っ!)
 歌菜は想像してしまい、首を左右に強く振った。
 彼女には、結ばれたばかりの大好きな人がいる。
 伴侶である彼以外に、素肌に触れられたり、抱きしめられたり……そんなことは、動物の姿でも絶対に避けたかった。
(次に誰かがペットフードを取りに来たら、バレちゃいます……)
 歌菜が隠れているのは、ペットフードが入った段ボール箱。下の方に身をひそめていたけれど、段ボールに入っているペットフードは次が最後の1つなのだ。
(他の隠れ場所、探さないと)
 意を決して、歌菜は自ら段ボールの中から出ることにした。
 ……途端。
 気を付けていたのに。
「あ、こんなところにも、可愛い子猫!」
 若いカップルに発見されてしまった。
「おいて〜」
 手を伸ばしてきたのは、男性の方。
「にゃーん、にゃんにゃん(ごめんなさい、ごめんなさーいっ)」
 歌菜は鳴き声を上げながら、全力で逃げる。
「にゃう、にゃ……!?」
 駆けていた歌菜は、わんにゃん展示場の中で、大切な彼――月崎 羽純(つきざき・はすみ)の姿を目にした。
(何でこんなところに……犬猫、好きなんだ?)
 近寄ろうとして、すぐに自分の今の姿を思い出す。
(って、ダメ! 見つかったら、怒られるに違いないですっ)
 彼の視界から出て、どこかに隠れなければと、歌菜は進路を変えた。
 しかし、その直後に、素早く近づいてきた彼の手が、歌菜の身体を包み込み、彼女を抱え上げていた。

(この子猫、俺と視線を合わそうとせず逃げてた?)
 展示場に手伝いに行った歌菜がいなくなったという話を聞き、羽純は探しに来ていた。
 彼女を探していた彼は、妙に気になる猫を発見し、目で追っていた所。その子猫は彼を避けるように逃げ出そうとした……ように見えて。
 瞬時に近づいて。その首輪に目を留めて。それが自分達の結婚指輪と同じデザインだと気づき。
 次の瞬間には、子猫を抱き上げていた。
「にゃっ」
 子猫は小さな声を上げて、顔を背ける。
 だけれど、逃げ出そうとはしない。むしろ、羽純の腕にしがみつくかのように、小さな前足をからめていた。
「大人ばかりで、怖かったか? 大丈夫だ」
 そう囁きかけて、羽純は子猫の顎を、首を、頭を、撫でていく。
「にゃーん……」
 そうしていると、次第に子猫も羽純に甘えだし、可愛らしい声を上げて腕に、胸に、すりよってくる。
「可愛いな、本当に」
 言いながら、羽純は子猫を自分の方に向けて。
 顎に置いた手を、持ち上げて。子猫の顔を上げさせた。
 優しくて、美しい目で、羽純は子猫――歌菜を見詰める。
(やっぱり綺麗な人だな……)
 歌菜もうっとりと、羽純を見詰めていた。
 いつもは、照れてしまってこうしてじっと見つめることはできないから。
 改めて、こんなに間近で観察して。
 すっごく幸せな気分になっていく。
「にゃ〜っ」
 小さく声を上げると、彼は笑みを浮かべて猫の歌菜をもっと高く抱きしめた。
「にゃん」
 歌菜は彼の服に前足をかけて、彼の顔に近づいて。
 頬を舐めて愛情表現。
(羽純くん、子猫好きだったんだね。凄く優しい甘い表情と声。ちょっと嫉妬しちゃうけど……でも、幸せ♪)
 このまま子猫でいるのも、もしかしたら幸せかもしれない。
 そんなことを考えたその時。
「で? 何時、元の姿に戻るんだ? 歌菜」
 彼の言葉に、歌菜の身体がびくりと震える。
(え? 私だって、バレてる!?)
 歌菜は事態を説明しようとするけれど、彼女の声は「にゃあにゃあ」としか、響かず、羽純には伝わらない。
「子猫もいいけれど、人間の歌菜に会いたい、な」
「にゃーにゃん(あああ、ごめんなさいっ。どうしたら戻れるの〜っ)」
 動揺する歌菜を、羽純は変わらず大きな手で撫でてくれていた……。

 その数分後。
 歌菜は彼の腕の中で、人の姿に戻った。
 互いの顔を確かめ合った後。
 羽純の方から歌菜を強く、抱きしめた。
「やっぱり、歌菜は人間の方がいいな」
 そしてそう、彼女に、耳に息がかかるほど近くで囁いた。
「うん、私もやっぱり……猫じゃ嫌だよ」
 歌菜も羽純を強く抱きしめ返す。
 猫の姿のままでは、こうして話をすることもできないし、こんな風に抱きしめ返すこともできない、から。
 それから、羽純は歌菜の指に、自分の指を絡めて彼女の指に嵌められた指輪に触れた。
「これも、首輪ではなく、指輪でなければな」
「うん、ずっと指に嵌めていたいから」
 やっぱり人間がいい。人として彼を見詰めていたい。
 互いにそう思いながら、そのまま手をぎゅっと繋いで歩き出した。
 今日はもう、絶対互いから目を離さない。

○     ○     ○


「お帰りなさい。鴉、随分減ったね」
 広場にミクル達、鴉退治を担っていた者達が集合している。
「ワン、ワワン(大人しくしていた者には、俺の毛をやろう)」
 カルキノス犬が、おびき寄せに使っていた自分の尾の毛を鴉達に与える。
 人間に戻った者達の多くは、恥ずかしげに礼を言って去っていく。
 「わんっ(お疲れ様っ)」
 鴉化人間を沢山追い詰めて、捕獲したルカルカ犬がミクルとなななをくりくりした目で見上げている。
「ど、どうしよう。可愛すぎる……な、撫でてもいいのかな、失礼かな?」
 ミクルがダリルに尋ねると。
「撫でてほしそうな目をしている。大丈夫だ」
「それじゃ、遠慮なく〜。お疲れさまーっ」
 ミクルは膝を地面について、ルカ犬に両手を伸ばすと夢中で撫ではじめる。
「おつ鍋様〜」
 なななも、、カルキ犬、犬を撫でて撫でて撫でまわす。
「任務を達成した犬は褒めて躾けるものだからな」
 ダリルも腰を落として、ルカ犬の背を撫でて褒賞した……途端。
「わうーん」
 ルカ犬が地面を蹴って、ダリルに飛びついた。
「!?」
 突然、顔に飛びつかれたダリルは驚いて、尻もちをつく。
「ワン(よし、俺らも行くぞ)」
「ワンッ(了解)」
 カルキ犬が、淵犬に耳打ちし、一緒にダリルにダイビング。
「こ、こらまて……お前たち、何を……! わぷっ」
 尻尾ふりふり、しがみついて熱烈に甘えてくる3匹の犬に、ダリルはもうどうしたらいいのか――。
「わんわん、もっといくよー」
「お、お前ら、自分達の姿を見ろ……というか、助けてくれ……頼む」
 ダリルが3匹――いや、甘えながら人間の姿に戻った3人のじゃれつきに、ギブアップ。
「あ、あのっ。続きをするのなら、もう1本薬を飲んでからがいいのではっ」
「寧ろ、ダリるん♪ が飲めばいいのよっ!」
 いつの間にもらってきたのか、ミクルとなななが犬猫化する薬を懐から取り出す。
「そ、それだけは勘弁……」
 ミクルに救出されたダリルは、ひとまずパビリオンに避難に走る。
「まてぇ〜♪ 観念しなさーい」
 人間に戻ったルカルカは、なななの手を引いて追っていき、カルキノスと淵は笑いながら見守っていた。

○     ○     ○


 パレードや、展示に人々が集まり、華やかに楽しむ会場の片隅で。
「カァー、クァァア!(から揚げ発見! 食わなきゃ出すものも出んしな)」
 鴉が忘れられたゴミ箱に群がっていた。
「ん? 何このゴミ箱あさってる鴉」
 通りかかったのは、にゃんくま 仮面(にゃんくま・かめん)
 人間に媚びまくっている(と見えた)子犬や子猫達にうんざりしていたにゃんくまはちょっと機嫌が悪かった。
 しかも師匠である変熊 仮面(へんくま・かめん)はどこかに行ったまま、帰ってこないし。
 変熊は外見は普通の地球人なのだが、どういうわけか、とてつもなく目立つので、見失うなんてこと有りえないのに! 見失っても、女の子達の黄色い声(悲鳴)で、居場所は簡単に分かるはずなのに!
「おい、そこのカラスいいもん食ってねーな。ゲラゲラ!」
 腐ったから揚げを食べている鴉に、にゃんくまは八つ当たり。
「くっせー! 鴉くっせー!」
 鼻を抑えて、しっしっと手を振るにゃんくまに、その鴉――に変身した変熊は激怒する。
「クワァー!(野良猫共め、食事の邪魔をするな!)」
 真の野良猫、野良犬と餌場争いをしてきた鴉には、にゃんくまも自分を餌を狙っている野良猫にしか見えなかった。
「何、僕とやるのかにゃ?」
 飛び掛かって来た鴉に、ブロードソードを振りおろし。
「クァーーーグアアアー」
「お!? まだ動いてる」
 ブラインドナイブスで、撃ち飛ばし!
「ギュ、ギュアアアアー、ギュグ……」
「お、動かなくなったにゃ。ゴミはゴミ箱に、っと」
 空飛ぶ箒でささっと掃いてゴミ箱に捨てる。
「つまんないにゃ。師匠どこ〜! 夕立きそうだにゃ〜」
 飽きたにゃんくまは空飛ぶ箒に乗って、飛んでいく。

 翌日。
 ずぶ濡れで冷たくなったロイヤルガードの男性の身体がゴミ箱の中から発見された。
 その男性は素っ裸だった。
 恐らく拷問に合ったのだろう。身体には、酷い切り傷、刺し傷、打撲痕が残っており、毒物と思われるものを無理やり食べさせられたらしく、嘔吐し、泡を吹いていた。

 そのニュースに、シャンバラの国民は深い悲しみに包まれた。
 新たな戦いの幕開けを予感させる、悲惨な事件だった――。

 ……なんてことになる前に、発見したバリツ・イングリットと可憐な乙女の集団白百合団が彼を正しく処分しましたのでご安心を!

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

とーっても可愛いアクションに面白いアクション、ありがとうございました。

パビリオンポイントにつきましては、シナリオの結果、以下の付与となりました。

シャンバラの伝統パビリオン 20点
シャンバラの現在パビリオン 10点
シャンバラの未来パビリオン 5点

ご協力ありがとうございました!

お正月に続き、皆様の可愛らしい姿を書かせていただけて、幸せ感いっぱいです。
こんどはどんな姿でわきゃわきゃ楽しみましょう?

ご参加、ありがとうございました。
また別のシナリオでもお会いできましたら幸いです!