なし

リアクション

【キヌア酒造】

「あ、ねぇ見てみて。『キヌアウィスキー』だって。」
「ん、どれ？」
「あれ。あの白い蝙蝠がいる所。ホラ、ボトルが並んでる」
「あ、あれか。へ〜、キレイな琥珀色だな」
「ちょっと入ってみようよ」

　並んで歩いていたアダルトな雰囲気のカップルが、キヌア酒造のブースで足を止めた。

「こんにちは。お二人とも、是非試飲して行かれませんか？どうぞ、こちらへ」

　キヌアウィスキーのイメージキャラクターである白い蝙蝠をモチーフに、白衣の吸血鬼のコスプレをした真名美・西園寺（まなみ・さいおんじ）が、可愛らしい蝙蝠の置物の飾られたカウンターへと２人を誘う。

「タシガン領にあるキヌアでは、古くから、大量に収穫されるパラミタ大麦を保存し、現金収入を得るための手段として、ウィスキーの生産が行われています。タシガンといえばタシガンコーヒーが有名ですけど、キヌアの名前は、ウィスキーマニアの間ではかなり知られているんですよ」

　案内をするわずかな間にも、ウィスキーをＰＲすることを忘れない。


「いらっしゃいませ。当店でお出ししているウィスキーは、『スモーキー』と『ミスト』の２つです。飲み比べて、味の違いを実感して下さい」

　佐々木　弥十郎（ささき・やじゅうろう）はそう言って、２人の前にショットグラスに入った２種類のウィスキーと、チェイサー用に氷水を出す。
　スモーキーはやや黒が強い琥珀色。もう一方のミストは、それよりもずっと明るい、澄んだ琥珀色をしている。
　女性は迷わずミストを手に取ると、口に含んだ。

「うわ……。これ、美味しい！」
「ホントに？」
「うん。スゴい、ほんのりと甘味があって！それに、口をつけるまではそうでもないんだけど、口の中に入れると、香りがパァ〜って広がるの！」

「ミストは、麦芽の乾燥を、熟練の魔法使いが炎を使って行います。微妙な火加減を維持しながら、十分に乾燥させた後、黒薔薇の森でのみ採れる蜂蜜や、薬草などを加えて熟成させます。甘さと香りが霧のように口の中に漂う。それがこのミストウィスキーです」

　すかさず弥十郎が解説を加える。

「そんなに美味しいんなら、こっちも期待出来るかな」

　そう言って男性は、スモーキーを手に取る。　
　グラスを口に運ぼうとしていた手が止まり、ゆっくりと香りを嗅ぐ。
　
「ほ〜。これは、なんというか……。独特の香りだな〜」
「スモーキーは、キヌア特産のキヌア杉と泥炭を使用して、麦芽自体を燻しながら乾燥させます。麦芽そのものに香りを染みこませることによって、熟成させたあとにもキヌアウィスキー独特の香りを残すんです」

　一頻り香りを味わった後、男性はグラスを一気に開ける。

「うん。旨い」
「ありがとうございます」

　お礼を口にしながら、すかさずお替りを注ぐ弥十郎。

「こちらが、スモーキー用のおつまみ。それでこちらが、ミスト用のおつまみになります。お口直しにどうぞ」

　スモーキー用と出されたのは、レーズンバター、レモンの薄切りの乗ったサラミ、チョコレートの３種類。
　ミスト用は、チーズと小さめの煎餅だ。

「へー。おつまみも、違うんですね」
「はい。それぞれのウィスキーの味を引き立てるのに、最適な物をご用意させて頂きました。それでは、ごゆっくりどうぞ」

　言うべきことをひと通り言ってしまうと、弥十郎はそれ以上は口を挟まず、２人がウィスキーを堪能し終えるのをじっと待った。

「はぁ……。美味しかった。こんなウィスキー飲んだの、初めて。ねぇ、買って帰りましょうよ」
「そうだね。すみません、スモーキーとミスト、２本ずつ貰えますか。包みは別々で」
「はい、有難うございます」
「普通のボトルの他に、女性の方向けに、こんなボトルケースも数量限定でご用意させて頂いております。もしお土産用でしたら、ご一緒にいかがですか？」

　真名美がすかさず、小さな蝙蝠と薔薇の絡み合う、可愛いらしいボトルケースを勧める。
　ケースには、『キヌアのミストはちょっぴりスイート。スモークな彼も今夜はメルト（はぁと）』と刻まれている。

「やだ、スモークな彼だって！ねぇ、これも買ってもいい？」
「中々お洒落だね。いいよ」

　楽しそうに腕を組みながら、ブースを後にする２人。
　キヌア酒造には、その後も人の足が途絶えることはなかった。

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【キヌア酒造】

【基本値】
　４，１，３＝８

【修正値】
《ＭＣ》（運営）佐々木　弥十郎（ささき・やじゅうろう）
：２×１＝２

《ＬＣ》（運営）真名美・西園寺（まなみ・さいおんじ）
：１×１＝１

《ＩＣ》白いコウモリ：＋１
《ＭＢ》設定：＋２、接客：＋１＝３

　２＋１＋１＋３＝７　
　８＋７＝１５

【判定結果】
　成功：ＰＰ＋１

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