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【2021クリスマス】大切な時間を

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第11章 友達デート

 賑わうヴァイシャリーの街を、可愛らしい少女が2人、歩いている。
 輝く笑顔を浮かべる少女――秋月 葵(あきづき・あおい)と、穏やかな温かさを感じる少女――アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)は、この街ではとても有名で。
 2人の姿に目を留めた人々は思わず足を止めて、こっそり写真に収めたり、サインをねだったりしてくる。
「寒い、ですね」
 辛いことが合った後だけれど、アレナの表情は暗くはなかった。
 でも、まだ口数は少なめで……心から、元気なわけではないようだった。
「皆、忙しそうだけれど、活き活きしているよねっ。空京もクリスマスフェアで大賑わいなんだって」
 街の人々が楽しく過ごしている姿、人々の笑顔を葵はアレナに見せたかった。
「ヴァイシャリーの皆の笑顔も、空京にいる人達の笑顔も。こうして見ることが出来るのは、先輩が頑張ったからですよね」
「……軍の人達とか、ロイヤルガードの皆とか、契約者の皆とか……皆が頑張ったから。私も、心からちゃんと頑張れないと……ダメですね」
 そう、アレナは弱く微笑んだ。
「それじゃ、その頑張った仲間達へのプレゼント買おー♪」
「はい」
 葵とアレナは2人で仲良く、ファンシーショップに入っていった。

「感謝の気持を込めて優子先輩にプレゼントを送りたいから、一緒に選んで欲しいな」
 ファンシーショップで、お揃いの小物や、友人へのプレゼントを買った後で。
 葵はアレナを今度は、ギフトショップへと引っ張った。
「優子先輩、どういうものが好きかな? お茶とかお菓子の方が、気兼ねなく受け取ってもらえるかな?」
「優子さん、買い物に出る時間があまりないみたいですから、寮生活で使えるものがいいかもしれないです。……もしくは、ヴァイシャリーに帰ってきてから使えるようなものが」
 そう言って、アレナは店内を見回し、カップやソーサー、ポット、ティーポット、急須、湯呑などを見ていく。
 来客も多くなった為、食器が足りないのだという。
「そっかー。それじゃ、これなんかどうでしょう?」
 葵が選んだのは、パーティーボールセット。
 白い器に、淡い色の花が描かれている、上品なボールのセットだった。
 大きなサイズが1枚。小さなボールが5枚入っている。
「素敵です。優子さんも、来てくれた人も、嬉しい気持ちになると思います」
「それじゃ、これにしよー!」
 葵はさっそく品物を購入して。割れないよう大切に抱え持った。
「そういえば……以前福引で当てたゴンドラクルーズ……ちゃんと優子先輩と行きました?」
 外へ出て歩きながら、葵がそう尋ねると、アレナはちょっと寂しそうな顔になる。
「行けて、ないです……。優子さん、忙しくて」
「うーん、そうか……。でも息抜きは必要だから、強引にでも誘った方がいいと思いますよ」
「留学、しちゃいましたし。多分、今誘ったら葵さんとか、お友達と行ってきなと言われると思うんです」
 まだ、アレナは優子に券を貰ったと言う事さえできていないようだった。
「それじゃ、百合園に帰ってきてからでしょうか」
「はい。あ! 返ってきたら、一緒に乗りましょうって連絡しておきます。ヴァイシャリーの変化とか一緒に視ましょう、とか言えば……優先してくれるかもしれませんっ」
「うん、頑張ってくださいね」
 葵はなんだか友人の恋愛を応援しているような錯覚を感じてしまう。
 微笑みながら並んで歩いていると、冷たい風がぴゅっと吹き抜けていった。
「そうだ、アレナさん、ちょっと飛んでみませんか?」
「え? あ、はい」
 アレナの返事を聞くと、葵は空飛ぶ魔法↑↑を発動した。
「空中散歩をした後は、喫茶店で温かいものでも飲みましょう〜」
 片手で優子や皆へのプレゼントを抱えて、葵はもう1方の手を差し出してアレナと手を繋ぐ。
 そして、空へ、空へ――。
 高く高く2人は浮かび上がった。

 人の姿は識別できなくなっても。
 街の姿はわかる。
 人が創ったもの。大切な場所。
「真下のヴァイシャリーも、遠くに見える空京も先輩のお陰で無事だった訳だし……」
 葵は隣にいるアレナにすっごく嬉しそうに微笑んで、ぎゅっと手を握りしめる。
「私もお礼が言いたくて……みんなの笑顔をありがとうございました♪」
「葵さんも、ありがとうございます。また、一緒に、頑張れたら嬉しいです」
 微笑み返してそう言った後で。
 アレナはヴァイシャリーを。優子のいるヒラニプラを。
 そして空京の方を見詰めて。
「ありがとうございます」
 またひとつ、お礼の言葉を口に出した。