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【2021クリスマス】大切な時間を

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第12章 久しぶりに会ったら

「レイル君久しぶり!」
「ミーナおねぇちゃん、ひっさしぶりー!!」
 ひょこっと顔を出したミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)に、少年が飛びついてくる。
 ……レイル・ヴァイシャリー。ヴァイシャリー家、現当主の息子の一人だ。
「ちょっと見ないうちに、レイル君、大きくなった?」
「うん、身長のびたよー。すくすくせいちょーちゅーなんだ!」
 笑いながら、レイルはミーナの手を引っ張って、部屋の中に入れる。
 レイルはその日。空京のホテルにいた。
 年末年始は地球で過ごすそうだ。
「葉月も来れれば良かったんだけれど、別の急用が入っちゃって来れなかったんだ」
 ミーナの想いの人であり、パートナーの菅野 葉月(すがの・はづき)も、レイルとは親しくしている。
 葉月は出発前に、急な用事が入ってしまった為、来ることが出来なくなってしまったのだ。
「ん……それじゃ、今度はいつもの2倍あそぶってことで。お土産ももっていってね」
 部屋には沢山のプレゼントが置かれていた。
 レイルがもらったものだろうかと思ったミーナだけれど、そうではなくて、レイルが用意したもの、らしい。
(レイル君、親戚にもあまり知られてないんだよね。両親からはプレゼントもらってるかなぁ)
「んと、葉月おにぃちゃんには、こっちで、ミーナおねぇちゃんにはこれね!」
 レイルが葉月とミーナに選んだのは、紺色の手袋と、桃色の手袋だった。
「ありがとー……って、これ片方しかないよ!?」
 渡された手袋は、右手用と左手用の片方ずつだった。
「だって、らぶらぶカップルは手袋片手だけして、もうひとつの手は、つないどくんだってネットに書いてあったからっ」
「そ、そう、そうなんだけどね。いつでも手を繋いでいられるわけじゃないからね」
 ミーナはレイルの思わぬ言葉に、ドキドキしてしまう。
「へへへっ、冗談だよっ。はい、もう片方。おしあわせに〜」
 レイルはにかっと笑うと、もう片方の手袋もミーナに差し出した。
(もしかしてからかわれた? さすがヴァイシャリー家の血筋、侮れないっ)
 軽く苦笑しつつ、ミーナは手袋を受け取って、ありがとうとお礼を言う。
「ワタシからもレイル君にあげたいものがあるんだよ」
 ミーナは袋を取り出して中をレイルに見せる。
「ん? 毛糸……」
 レイルは袋の中から取り出して、入っていたものを確認する。
 それは、ライトグリーンのマフラーだった。
「ワタシからのクリスマスプレゼントだよ」
「お、おおー。これって、てあみのマフラーだよね。つくるのすっごく大変なんだよね」
「うん、ちょっと葉月に手伝ってもらったんたけれど、ワタシも頑張って編んだよ」
 言って、ミーナはマフラーをとって、レイルの首にかけてみた。
 8割はミーナ。葉月には細かい手直しを含めて2割程手伝ってもらい、完成させたマフラーだ。
「よかった、似合う似合う!」
 レイルに合うように、幅も、長さも短めに作ってある。まだ子供の彼には、落ちついた色より、明るめの色の方が合うと思った。
「あったかい〜。ありがとぉ!」
 レイルは頬を摺り寄せて感触を楽しんでいる。
 無邪気に喜ぶレイルの姿に、ミーナの心が和んでいく。
(でもレイル君、確実に成長してるよね)
 次に会う時にはまた少し身長が伸びているだろう。
 そして、数年後にはミーナより背が高くなり、そのうち大人になって。
 隠れて暮らさなくても良くなるのだろう。
(可愛い姿が見れなくなっちゃうのは、ちょっと残念だけどね)
 そう思ったミーナに。
「ね、写真とろっ。内緒でとろっ!?」
 レイルがデジタルカメラを持ってきて、ミーナを撮りはじめた。
「いいよー」
 Vサインで映った後。タイマーをセットして、ミーナはレイルとツーショット写真を撮った。

 温かいスープと、柔らかなパンの軽昼食を、温かく、柔らかな笑みで一緒に食べた後で。
 名残惜しいと感じながらも、ミーナは葉月の元に戻ることに。
 レイルは今晩、偽名を使って素性を伏せて、貴族が集うパーティに出席するらしい。
 そうして社交も学んでいるそうだ。
「どんどん成長していくね、レイル君……。ワタシも葉月もレイル君が精一杯頑張れることを知っているし、無理せずに行き急がずに生きてね」
 ミーナはそう言いながら微笑んで、レイルの頭を撫でてあげた。
 レイルは部屋の中でもずっとミーナが贈ったマフラーをしていた。
「うん、ボク、ミーナおあねぇちゃんや、葉月おにぃちゃんが、いいひとだってことよくしってるから。大人になったら、みんなをもっとまもれるように、なるからね」
 レイルは寂しげに笑う。
 親しい人と長く一緒にいられないことが、やはり寂しいらしい。
 ミーナは身をかがめると、レイルに顔を近づけた。
 そして、上を向いた彼の額に、そっとキスをする。
「じゃあ、バイバイ」
 そう笑みを見せると。
「うん、バイバイ! またねっ」
 レイルの顔に笑みが広がった。
「うん、またね」
 ミーナとレイルは手を振って、別れた。
 友達として、お互い好きだし、大切に思っているけれど。
 必要以上深い関係を持つことは出来ない。
 それも、お互い解ってるから。
 今は、これで精いっぱい。
(もう少し大人になったら、遊びに誘えるといいな)
 ホテルを振り返って、ミーナはもう一度手を振った。
 レイルもきっと、窓辺で手を振ってくれているだろう。