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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ カリブ海ビーチリゾート ■
 
 
 
 ホテルのプライベートビーチとなっている砂浜は、白い砂が日の光に輝いている。
 エメラルドブルーの海は驚くほどの透明感で、肩まで海に浸かっても自分の足がはっきり見えるほどだ。
 太陽が明るく照らせば、海の色は一層鮮やかになり、まさしくカリビアンブルー。
 そんなカリブ海の高級リゾート地で、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)はのんびりと年末年始を過ごしていた。
 本来なら何時も通りパラミタで過ごす筈だったのだけれど、セレンフィリティが気まぐれに応募した懸賞が見事当たったのだ。本気で当てるつもりだった宝くじは全敗で、冗談だった旅行が当たる。運というのはそういうものなのだろう。
 地球に行くことにセレンフィリティに迷いが無かった訳ではないけれど、当選賞品の権利は本人とペアでもう1人、となっている為に誰かに譲渡することが出来ない。折角当たったものを無効にしてしまうのはもったいない。
 まあ、辛い思い出のある東京に行くのではないし、今なら最愛のセレアナが傍にいるのだからと、セレンフィリティは当選の権利を行使し、高級リゾートホテルのプライベートビーチへとやってきたのだった。
 出生地不明、本名不明で実質故郷を持たないセレンフィリティにとっては、地球そのものが故郷とも言えるので、これも形を変えた里帰りと言えるかも知れない。
 目的地のリゾートホテルに到着してからは、気の向くままにのんびりと2人だけの時間を過ごした。
 興味の赴くままにあちこちを見て回り、それに飽きるとホテルのプライベートビーチで一日中、水着姿……時にはトップレスで開放的に寝ころんだり、日焼け止めを塗りあったり。
 何も考えずに過ごす休暇は久しぶりだ。
 そんな、何処か気だるく緩んだ時間を過ごしながらも、セレンフィリティの脳裏にふと、自分たちの来し方行く末についての取り留めのない考えが浮かんでは消える。
(もう4年になるのね……)
 4年という時間は長いのか短いのか。
 その期間を経てセレンフィリティとセレアナは、今は互いに離れ離れになることすら想像出来ないくらいに結ばれている。
 それは幸せなこと。
 けれど、今が幸せだからこそ不安になる。
(あたしたちはいつまでこんな風に2人でいられるんだろう……)
 シャンバラ国軍の軍人という自分たちの立場を思うと、どちらかが死ぬか、或いは道を違えるかしたとき、別れの日が来るのかもしれない。
 突然に、もしくは徐々に忍びよるように。別れの日が2人の上にやってくることを想像すると、照りつける日差しにもかかわらず、セレンフィリティの背に薄ら寒いものが流れる。
(その時あたしは……セレアナは、どんな顔で、どんな思いでいるのかしら)
 想像したくもないのに、その物思いは妙に引っかかってセレンフィリティの心から離れない……。
 
(セレン……大丈夫かしら)
 さっきからうつむき加減に考え込んでいるセレンフィリティを、セレアナは気がかりそうに眺めた。
 確かに地球はセレンフィリティにとっては辛い過去しかない土地だ。地球での時間を楽しめないとしても無理はない。
 といって、下手な言葉などではセレンフィリティの負った傷を癒せない。恐らくその傷は終生癒えることなく、セレンフィリティの心の奥底に残り続けるものなのだろうから。
 掛けられる言葉は無く、けれど恋人が物思いに沈んでいるのを見るのは忍びない。
 どうすれば良いのかとセレアナが思案していると。不意にその首にセレンフィリティの腕が巻き付いた。
 無言のまま引き寄せられ、そのまま激しくキスされる。
 震える腕、縋るように寄せられる身体。
 口唇越しにセレンフィリティの抱える不安が感じられ、セレアナは激しいキスをそのまま受け入れた。そうしてあげることしか、セレアナには出来ることが無かったから。
 
 時よ止まれ、潮風のビーチでこうして共にいられるこの時に。
 時よ止まれ、2人が間に距離無く寄り添い合っている幸せのうちに――。