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お風呂ライフ

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お風呂ライフ

リアクション

 露天風呂の女湯に浸かるシルエットが2つ見える。
「はー……いい湯よねー。……あ、いやいやちゃんと見回りしないと〜……」
 のんびりと温泉を堪能……警備していたラブ・リトル(らぶ・りとる)が周囲を見渡す。
「えーと……お湯の中はー異常なーし。温泉のまわりー……異常なーし!」
「……ラブ? あなたのそれは見回りとは言わないんじゃないかしら?」
「えー。あたしちゃんと警備してるもん! 鈿女こそその手にしてるのは何なのよ?」
「これ? うふふ、只の水分補給のためのお水よ?」
 高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)は、手に持ったお猪口を掲げてニンマリ笑う。
「嘘ばっか! 只のお水で顔が赤くなんてならないわよ。お酒でしょう?」
「あら、バレた? だって、研究室でハーティオンの調整と解析ばっかりじゃ気が滅入っちゃうから、たまには羽を伸ばしてもいいでしょう」
 鈿女もまたラブと同じで、温泉の内部警備の名目で、久しぶりの温泉を堪能していた。
「もー! ちゃんと警備しなきゃ駄目だよ! この蒼空学園のアイドル(自称)ラブちゃんの裸を見られたらどうするのよ」
「ノゾキだって厳重な警備を頑張って抜けてきたんだから……減るもんじゃないしその両目で見るのは許してあげなさいよ」
「違うわよ! 撮影されてネットにでもアップされたらってこと! あたしお外を歩くことができなくなるでしょ!」
「……フィギュアの愛好家くらいでしょ。身長30センチのあなたを溺愛するなんて」
「ちょっ!? 酔ってるからって、言って良い事と悪い事があるわよ!!」
「冗談よ。それに、撮影は出来ないようにしてあるから安心して」
 お猪口をキューッと飲む鈿女。
 鈿女は温泉に浸かる前に、【シャンバラ電機のノートパソコン】で、温泉周りに【対電フィールド】をちょっと工夫して、ジャミングとダミー映像をビデオカメラに認識させるように張り巡らせたいた。ジャミングにより電気的な撮影などはこれで出来ないはずであるし、ビデオカメラ片手にノゾキがルンルン気分で家に帰ると、『戦え! ハーティオン!』という魂を揺さぶる宣伝PV(ハーティオンの断面詳細図解説付き入り)が代わりに流れるようになっている。表面だけでなく内部も覗けるとあっては撮影者は感涙モノだろう。
「それにしても……」
 鈿女は遠方で留まる巨猿の集団を見やる。
「ドラゴランダーの説得は上手くいくのかしら……不安ね」

 龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)は巨猿達の説得に当たっていた。と言っても、ドラゴランダーは言葉が喋れず、ハーティオンとのみ意思疎通が出来る仕様である。
『ガオオオオン』
『グゥオォォ』
 これをドラゴランダーと巨猿の互いが連呼し合う。
 交互にやりとりしていくにつれて、どんどん叫びが伸び、その後部が高音になっていく
『ガオオオオン(止まれ!)』
『グゥオォォ(何だ? てめぇ)』
『グォォォン(おう、コラァ)』
『グゥゥオオ(ああ!?)』
『グロローー?(天然温泉はこっちじゃないぞ?)』
『グオオーー!(うるせぇ! どけ!)』
『シャアアアアアーーー!!……(何ガンつけてんだオウ?)』
『グゥオオオォォ……(やろうってのか……)」

 にらみ合いを続ける両者の間に、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が割って入る。
「どうした、ドラゴランダー?」
「(ハーティオンよ……。あの傷のある巨大サルが我にガンをつけているのだが……殺っちゃっていいんだよな?)」
「むぅ……ドラゴランダーよ。今回の私達の任務は、ひと時のゆとりを求めて温泉に来た人たちが安心して楽しめるように尽力することだ。力づくはなるたけ回避するべきだろう」
「(まずいのか? そうか。だが、やられっぱなしはムカつくので、我が威圧して温泉へと誘導するとしようとしても、こいつらはテコでも動かぬぞ?)」
「……彼らの要件はなんだ? 聞いてみてくれ」
 ハーティオンは今まで、周辺の地形データを検索し、ノゾキが身を隠しそうな場所をあらかじめインプットしつつ見回りを行っていた。
 怪しい相手を発見した場合は、「全なお風呂を守るのが我らの使命なのでどうか許して貰いたい」と、【身体検査】を行わせてもらっていた。されとて、万が一にもお客様に失礼な態度を取るわけにはいかないと、【貴賓への対応】を崩すつもりは無かった。
「(温泉に入りたい、だそうだ)」
「他の天然温泉はどうしたのだ? そちらに誘導すれば……」
 ハーティオンが言いかけた時、頭上から激しい声が鳴り響く。
『グウオオオオオォォーーンッ!!』
 その声を聞いた巨猿達がまたしても暴れだす。
「(ハーティオンよ。上にいるあの巨猿がボスらしいな)」
「成る程。では彼を説得すれば一網打尽というわけだな……そうと決まればドラゴランダー!」
『ガオオオオン』
 ハーティオンの呼びかけドラゴランダーが応える。
「龍心合体で一気に叩くぞ!!」
 ハーティオンは、ドラゴランダーと『龍心合体』し『ドラゴ・ハーティオン』へと心化する。そして、電波塔に向かおうとすると、一人のガリガリの少年が彼の元に駆け寄る。
「待て!」
「ん?」
「俺も連れて行ってっくれ!! ヤツと話がしたいんだ!!」
「……その顔、訳ありと見た。来るがいい、少年!!」
 少年はハーティオンの肩に乗り、電波塔を目指す。