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第4試合

 
 
『第4試合に参りましょう。
 イーブンサイド、葛葉 杏(くずのは・あん)パイロット、橘 早苗(たちばな・さなえ)サブパイロットの乗るレイヴンTYPE―C
 対するは、AI制御のシパーヒーとなります』
 葛葉杏が乗るのはノーマルのレイヴンTYPE−Cだ。黒とクロームに塗られた機体は外見上はコームラントと同型であるが、BMIを使用して橘早苗と直結している。肩にミサイルポッド、腕にガトリングガンを装備したシンメトリックな機体だ。
「この天御柱のエース、葛葉杏様が参加するんだから優勝はもらったも同然ね」
「杏さんは、常に自信満々ですぅ」
 戦う前から勝った気でいる葛葉杏を、橘早苗がヨイショした。敵をなめすぎて自滅してもらっては困るが、気力が充実していた方が有利であることは確かだ。
「あっ、発進シグナルが来ました」
「よおしっ、出るわよ!」
 橘早苗の言葉に、葛葉杏が前方モニタを指さした。
 フックに吊り下げられていたレイヴンTYPE−Cの足許のハッチが開く。次の瞬間フックが外れ、イコン輸送用の大型飛空艇のコンテナハッチからレイヴンTYPE−Cが空中へと落下した。遥か前方では、同様に大型飛空艇から投下されたシパーヒーがわずかに自由落下した後、機体を制御してこちらへとむかってくる。
 レイヴンTYPE−Cにしてもシパーヒーにしても完全な人形をしているが、その活動領域は空中が基本である。地上でも、固定して遠距離射撃を行うのでなければ極低空をホバー移動と言うことになる。
 二基の大型飛空艇が戦闘領域から離脱していく。
 急速に接近してくるシパーヒーに対して、葛葉杏が牽制の意味も兼ねてミサイルを発射した。同時に、橘早苗が大きく横に移動して敵との距離を維持する。
 四方から迫ってくるミサイルを華麗な動きで避けつつ、シパーヒーが再び間合いを狭めようとしてくる。なにぶん、基本武装はレイピアなので接近しなければ攻撃のしようがない。逆に、接近戦となったらレイヴンTYPE−Cとしては不利であった。
「ほらほらほら、この弾幕をかわせるものならかわしてごらんなさいよ!」
 間合いに関しては橘早苗に一任して、葛葉杏が両腕のガトリングガンから大量の弾丸をばらまいて弾幕を張った。
 トリッキーな機動で近づいてこようとするシパーヒーに対して、縦横に腕を振って対応する。その素早い動きに、シパーヒーも攻撃を避けきれず、じょじょに被弾して疲弊していった。
「そろそろね」
「行きますぅ」
 葛葉杏が残ったミサイルを上方に一斉発射すると、橘早苗が回避から一気に接近に軌道を変えた。
「ほらほらほらあ!」
 ガトリングガンの弾幕でシパーヒーを左右から押しつつむようにする。逃げ場を求めたシパーヒーが上昇しようとした。そこへ、時間差でミサイル群が降り注ぐ。
 敵をつつむように爆発が広がり、その中から煙をあげてシパーヒーが落下していった。
「止めよ。レイヴンファイナルクラーッシュ!」
 背部にマウントしていたクレイモアを引き抜くと、急接近したレイヴンTYPE−Cが上からシパーヒーに大剣を振り下ろした。
 ミサイルを受けて変形していたシパーヒーの頭部が、なすすべもなく大剣に叩き潰される。そのまま、敵は地上へと墜落する前に爆発四散した。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、レイヴンTYPE−Cです!』