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第4章 美味しい料理

 お昼の時間になったので、何か美味しいものでも食べようと、シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)は、パートナーの呂布 奉先(りょふ・ほうせん)と共に、歩いていた。
「奉先、何か食べたいものはありますか?」
「ん、美味いもんなら何でも構わねぇよ」
 奉先の返答にシャーロットは軽く眉を寄せる。
「そういうのが一番困るんですよ、歩いていて気になるお店とかないんですか?」
「気になる店って、俺はこの辺そんなに詳しくねーしな」
 きょろきょろ辺りを見回して、奉先はふと一人の人物に目を留める。
「あれは……?」
「ん?」
 サバゲーショップから出てきたその人物に、シャーロットも目を向ける?
「ちょうどいい、あいつに聞いてみようぜ。仕事でしょっちゅう来てんだろうし!」
「あ、待ってください! 私がお誘いします」
 奉先を止めて、シャーロットはその人物へ小走りで近づく。

「パッフェル? 今日はこちらに来てたんですね」
「……うん。午後から、仕事ある……から」
 それは、十二星華のパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)だった。
「そうですか。もう昼食はすませました? まだでしたら一緒にどうですか?」
 シャーロットがそう誘うと、パッフェルは無言で首を縦に振った。
「といっても、まだ何を食べるか決まってないんですけど」
 シャーロットはちょっと困ったような顔で、今までパートナーとぶらぶらと街を歩きながら店を探していたのだと、パッフェルに話した。
「パッフェルのお薦めのお店はありますか?」
 そう尋ねると、パッフェルは街を見回した後、すっと手を一方に向ける。
「あそこ……美味しい」
 パッフェルが指を指したのは、小さな定食屋だった。
「ではそこにしましょう」
 シャーロットは手招きして奉先を呼んで、パッフェルと共に定食屋へと入ることにした。

「なんだ普通の定食の癖に、すげぇ美味いだけど」
 奉先が頼んだのは、日替わり定食。
 ご飯に貝の味噌汁、大きめなジャガイモの肉じゃがに小松菜の和え物、そしてキュウリとカブの漬物が今日の内容だった。
「ホントですね……。素材が美味しいのでしょうか。味付けがなんだか、懐かしいような不思議な味付けです」
「家庭、料理。家で、皆でゆっくり……楽しめる、味」
 パッフェルのその言葉にシャーロットは納得して、頷きながら、注文した焼き魚定食を楽しんでいく。
「今日は、セイニィも一緒ですか?」
「セイニィは別の、仕事……最近、頑張ってる、から」
「そうですね、セイニィはホント、頑張っています」
 シャーロットは思いの人、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)を思い浮かべ、目を細めた。
 彼女は最近、ますますロイヤルガードとしての仕事に精を尽くしているようだった。
 その理由は――。
「パッフェルは、今は百合園の寮で暮らしてるんですよね? 最近、ティセラにも恋人できた、とか」
 シャーロットの言葉に、パッフェルは無言で頷く。
 パッフェルが百合園の寮暮らしになったことと、ティセラにも恋人が出来たこと、が、セイニィのやる気に繋がっているようだった。
「セイニィと、今よりも仲良くなって幸せにしたいと思っているのですが、いいアドバイスはありませんか?」
 シャーロットのその問いに、パッフェルは箸を止めて少し考えて。
「ロイヤルガードの、宿舎。仕事の時、使ってる」
「はい」
「セイニィ、一人で、いることも多くなったから。遊びに来てくれたら、嬉しい、と……思う」
 遊ぶより、共にシャンバラの為に頑張れたら、多分もっとセイニィは嬉しいだろうと。
 シャーロットは感じ取って。
「はい。是非伺いたいです」
 微笑んで、今も精力的に働いているであろう、大切な人を想う。
「……差入れは何がいいでしょうか?」
「……疲れている時には、甘い物。でも、糖だけじゃ、駄目。クエン酸も一緒。セイニィは良く動く、から、飲み物も大切。塩分も、忘れちゃ、いけない……」
 パッフェルの言葉一つ一つを、シャーロットは能の中にメモをしていく。
「食事も……差入れは高級な物より、こういう料理の方が喜んでいただけそうですね」
「そう……」
 シャーロットはパッフェルと一緒に、家庭的な料理を味わいながら。
 セイニィの活動の妨げにならないように。
 そして、役に立つように。
 彼女にしてあげられることを、考えていくのだった。