リアクション
夜が明けて、最終日。 ○ ○ ○ 「がおー、普通の合宿にしない子は、ナラカに叩き落とすぞー」 初日に、別荘所有者の娘であるミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん)の背後から、にゅーんと登場した者がいた。 「みるみへーわをまもるためー みるみのあしたをまもるためー あいとせいぎと……あとれつじょうとかもおまけでつけちゃう あるちゃんさんじょうー」 もちろん、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)である。 棒読みしながらすりすりむぎゅむぎゅくっつき。 「きゃははははっ、アルちゃん、暑いよぉ〜」 「うんうん、暑いねー。汗かいちゃうね、むぎゅむぎゅして密着してるのは関係ない。ない。暑いせいですよー、みるみむぎゅー」 「もぉー、暑いから仕方ないね。クーラーの効いた部屋にいようねっ」 「むぎゅむぎゅし放題ですねー」 そんな感じでアルコリアはそのままずっとミルミにくっついていて。 「学生達の普通の合宿っていのは、すくすくと育つ為に、遊ぶことなんだよ! 良く遊んで良く眠ることなんだから」 というミルミの主張のもと、9日間をお部屋でお遊びとちょっとのお勉強をしながら、むぎゅむぎゅとっても楽しく過ごしたのだった。 そして10日目。帰る間際。 「そーいえば、ミルミちゃんは宿題は先にやる派? 後に残す派?」 「……え?」 アルコリアの問いに、ミルミはちょっと驚いていた。 「いやもう、8月末だし、やってないってことはないだろう」 大きな鞄を抱えながら、シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が言う。 シーマは、白百合団員だがいつも通り主にアルコリアの監視として参加していた。 アルコリアがミルミとくっついて部屋の中にこもっている間に、苦手とする魔法関係の能力強化のための勉強と、警備も行っていた。 アルコリアが問題を起こさなかったので、完全に空気のような存在として過ごしていた。 「シーマちゃんは終わらせてからきたの?」 アルコリアの問いに当然というようにシーマは頷く。 「宿題はそもそも後先にやる物ではないだろう……決められた日に決められた分やるものだ。それ以上勉強したければ宿題帳を使うな」 合宿があるということは事前にわかっていたのだから、その前に終わらせておくことが当然だと、シーマは言う。 「あれ? そういえば……」 アルコリアはもう一人のパートナーの姿が見当たらないことに気付く。 シーマが持っていたはずだけれど。 「ん? ラズンか? ここでまた寝てる」 服の入った袋をシーマが開ける。中には服の他に、鎧が入っていた。 魔鎧のラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)だ。 「ん? 宿題? ……シーマのを写すよ」 その一言だけラズンは喋り、また眠ってしまう。 暑い陽射しが苦手ということもあり、特にやることもなかったため、合宿中ラズンはほとんどこうして眠っていた。 「写すって……しかもボクの? 間違っている場所が一緒だと、どっちかが写したというのがバレバレなんだが……」 シーマは戸惑うが、ラズンは丸写しするつもりは元々なかった。 アルコリアがやったものは正解率が高すぎるのだ。 間違えていると分かったものを直して、正解の自信があるものは、ダイスを振ってその数間違えていく。 そうしてそこそこ間違いのあるシーマの宿題をベースに、オリジナルの宿題を作り上げようとしていた。 「ミルミは、ラザンにやってもらったから、へーき!」 「やっていません」 遠くで片付けをしていたはずの、ラザン・ハルザナクが間髪入れずにきっぱり言った。 「ええっ! 今年は合宿あって出来ないからお願いって、出発前に頼んでおいたでしょー!」 「合宿前に自分でやるようにと、申し上げたはずです」 「うううっ、酷い! ミルミいじめだーっ。執事によるお嬢様の虐待だーっ。アルちゃーん」 ぎゅっとミルミがアルコリアに抱き着く。 「よしよしよしよし。宿題持ってきてる? 手伝うよ、甘やかすよ、ふふーふ」 アルコリア自身は、貰った日に学校の図書館で全部終わらせている。 「ここミルミちゃん家だし、もう1、2日滞在伸びても平気だよね。むぎゅーっ」 「うん、のびのびすくすく成長するの、ミルミ!」 「鬼教師に怒られないよう、ちゃんと仕上げましょうね〜。自分平和に貢献いたしますよ、お嬢様ー」 むぎゅーっとアルコリアがミルミを抱きしめる。 アルコリアもむぎゅーと抱きしめ返して、嬉しそうに笑う。 そんな彼女達を見て、ラザンは軽く苦笑するが……互いに互いが必要なのだと分かっているので、口を挟んではこない。 「え? 帰らないの? 団の宿題として合宿のレポートを作成しなきゃならないんだけど」 シーマが驚く。作成に必要な道具は、ここには揃っていない。 「帰りません。新学期はここから通学しますー」 「します〜。ふふっ」 アルコリアとミルミの言葉に、がっくり肩を落とす。 このままでは、宿題を終わらせることができない。 (少しの間、アルの側を離れても大丈夫だろうか? その間に別荘が吹っ飛ぶなんてこと……ないよな?) 不安に思うシーマだったが。 実際、彼女が傍にいようとも、アルコリアが吹っ飛ばす時には、シーマごと吹っ飛ばすのでいてもいなくてもあまり変わらなかったり。 「それじゃ、また学校でね! 新学期も楽しいこといっぱいしようね〜、皆お疲れ様〜!」 帰っていく、百合園の友達や、知り合いになった専攻科の人達を、ミルミはアルコリアと共に、手を振って見送った。 それから、学生の権利で責務で使命な、夏休み最後の大仕事に勤しむのだった。 担当マスターより▼担当マスター 川岸満里亜 ▼マスターコメント
シナリオへのご参加ありがとうございました。 |
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