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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)の校務についてニルヴァーナ創世学園を訪れていた。
 その帰り道、創世学園の明かりが消えて周囲がふっと暗くなり、月明かりがヴィナとルドルフを照らしだした。
「そういえば、今日は満月だったね」
 ルドルフもヴィナと同時に空を見上げ、そして、ほう、と溜め息を洩らす。
「本当に、美しい月だ。去年も見たけれども、パラミタで見るものとはやはり違う趣があるものだね」
 ヴィナは月を見上げるルドルフを見て、微笑んだ。
「ねえ、ルドルフさん。お月見をして帰らない? 竹林から見る月もきっと綺麗だよ」
 そう言ってヴィナは、学園の傍に設けられた竹林を見やった。
「竹林か……それも悪くない」
「少しくらい寄り道しても、誰も怒らないと思うよ。ルドルフさんも、月を愛でる余裕位はあるでしょう?」
「これほど美しい月なら、愛でない方が失礼というものだね」
 ルドルフの快い返事を聞き、ヴィナは微笑んで竹林の方へと足を向けた。

「タシガンの脅威も去って、こうしてルドルフさんと無事にお月見ができて嬉しいよ」
 ヴィナとルドルフの入った竹林の合間の東屋からは、傍にある池の上に浮かぶ月が綺麗に見えた。
「ああ、だがソウルアベレイターの力は強力だった。こうして乗り切ることができたのは、皆の決断と協力のおかげでもある。 僕自身の成長にも大きく繋がった出来事だ」
 ルドルフは数ヶ月前の出来事を思い起こしながら、月を見上げていた。
「それだけではないな。タングートという興味深い地とも交流を得られることとなったのも、嬉しいことだ」
「その辺りは、まだまだこれから先にも繋がっていくことだね」
「どちらにしろ、これからもソウルアベレイター達の脅威に対しては、警戒しておかなければならないだろうな。カルマの事も注意深く見守っていければと思う」
 ヴィナはルドルフの様子を見て、自分と一緒にいてくつろいでくれていることを感じる。
「そういえば、うちの上の娘、小学校で学級委員になったらしいんだよね。下の娘はまだそういう年齢じゃないけど」
「良いことじゃないか?」
 その後もヴィナとルドルフはしばらくの間、たわいもない話をしながら東屋から月を眺めていた。

「池の畔にも行ってみないか?」
 ルドルフがそう提案して、ヴィナとルドルフは東屋の外に見えていた池へと足を運んだ。
 日本庭園の中央に広がっている池には、大きな月が浮かび上がっている。
「薔薇の園とは異なるが、こうした情趣も良いものだね」
 ルドルフは風にそよぐススキの生える池の淵へと足を運び、感嘆の声をあげた。水面に映る月が、風に揺らいだ。
「薔薇、か。ルドルフさんは、どの品種の薔薇が好き?」
「ヘルツアス……かな」
「ああ、ルドルフさんに合いそうだ。熱情なんかも合いそうだと思うけど、どうかな?」
「それもいいね」
 そう言ってルドルフは、ヴィナに微笑みかけた。
「今度、空京で校務に立ち寄ったら、俺の親友がやってる花の専門店にでも行ってみない? 薔薇学を飾る新しい薔薇が見つかるかもしれないよ」
「それは是非、ご一緒させてもらいたいね」
 それからヴィナとルドルフは池の周りをぐるりと散策し、穏やかな時間を過ごしてから帰途についたのだった。