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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 数日前のこと、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)からの手紙がキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)の元に届けられた。

『親愛なるキロスさん

本日は、お日柄もよく、絶好の決闘日和ですね。
じゃなかった……涼しくなってきたので、剣を合わせるのにも適した気候で……
……でもなくて!

と、とにかくっ!
ニルヴァーナ創世学園の池で待っています!』


「また果たし状か……」
 キロスは、アルテミスから届いた手紙を眺めて呟いた。
(これがラブレターだったら、なあ)
 そう思ってアルテミスの手紙をあれこれひっくり返してみるキロスだったが、どこからどう見ても果たし状にしか見えない。
(…………いや、期待したら負けだ。期待したら負け)
 というわけでキロスは例によってしっかりと剣を携えて、約束の時間、ニルヴァーナへ向かったのだった。


「……キロスさん、来てくれるでしょうか……。そ、それに、この格好、変じゃないでしょうか……」
 池の前でキロスを待つアルテミスは、勇気を出して普段は着ないような和ゴスの衣装でお洒落をしていた。
 アルテミスは、キロスに対する感情が、ようやく恋であることに気付いた。そして、今日はキロスに告白をするため、キロスを呼び出したのだ。
 キロスがどうひっくり返しても果たし状にしか見えなかったあの手紙は、実はアルテミスなりのラブレターだった。
「よう。元気にしてたか?」
「キ、キロスさん!」
 そこへ、キロスが現れた。アルテミスは赤面したまま絶賛混乱中だったが、キロスを前にして少しだけ冷静さが戻って来たようだ。
「あ、あのっ、キロスさんっ! きょ、今日は、大事なお話があってお呼びしましたっ!」
「大事な話……?」
 ここは、創世学園の池の前。月明かりの下、ロマンチックに恋の告白をしよう、とアルテミスは考えたのだ。
「あのっ、わっ、わたしっ」
「あ、ああ」
「ずっと前から、キロスさんのことが……」
「……」
 キロスの中で(まさか……?)と期待が膨らんでいく。
「す、す、す……」
「す……?」
 キロスと、アルテミスの鼓動が高鳴っていく。
「す……スキありですっ!」
 一閃。真っ赤な顔のアルテミスは、どこからともなく取り出した大剣でキロスを斬りつけた。キン、とすかさず攻撃を打ち止めたキロスは、
「やっぱりこうなるのかよ!!」
 と叫ぶ。キロスがアルテミスの「スキありっ!」を「I LOVE YOU」と訳せるのは、まだ少し先のことになりそうだった。