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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 池の中央に浮かぶ小舟に、和服姿のルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)が乗っている。
「中秋の名月……日本の風習でしたでしょうか」
 浴衣を着たナナは、月を見上げて美しい月を眺める。普段はなかなかこうした一緒の時間が取れないルースとナナは、こうして夫婦でのデートは久しぶりだった。
「美しい月ですね」
 寄り添い合って月を見ているルースとナナの乗る舟を、風が柔らかく揺らしていく。
 ナナはルースに身を寄せたまま、もらってきた月うさぎの餅を取り出した。
「伝説によりますと、これを二人で分けて頂くと縁が強固になるとか……。まずは半分どうぞ」
 ナナは月うさぎの餅を半分に割ると、ルースに片方を渡した。
「恋とは、相手の事を思えば成立する。いわば見返りを求めない思い。ですが、そこに相手の気持ちを求めるとしたら……それは、愛なのです」
 そう言いながら、ナナは餅を口にした。ルースも、ナナとともに餅を食べる。
「ギブアンドテイク。そして、ナナはルースさんから、『共に幸せを感じ合う』ということを頂きました。ですので、次は、ナナがルースさんに与える番……。
 まあ、ルースさんは寂しがり屋様ですので、ナナに会えない時は、弱音をはいたりナンパをしたりされていたりするのかもしれませんが、そんな所も愛おしいと、今ならば思えるのです」
「ナナ……」
「ナナは今もこれからも、ずっとルースさんと共に歩むのです。幸いの行く先へ」
 そう言ってナナは、持ち込んだお酒を御猪口に注ぐ。
「……ルースさん、お顔をこちらへ」
 ナナは、御猪口を一度月に捧げてから、酒を口に含んだ。そのままルースの首に腕を回して口付けると、ナナは含んだ酒を半分ルースの口へと写した。
「……誓いの印ですよ」
 酒を飲み込んだルースは、そっとナナの腰に手を回した。
「ナナ……俺と結婚してくれて、ありがとうございます」
 ルースは言葉にならない愛おしさを、ナナに伝える。
「愛しているのです。ルースさん」
「俺も、ナナと出会えて、本当に幸せです。愛していますよ」
 二人の間に交わした誓いは、月が証人となってくれるだろう。

「……ところで、秋とはいえ夜は肌寒くなってきています。人肌で暖めあいませんか? ほら、和服の下には下着を付けないって言いますし」
 先ほどまでの真面目な雰囲気はどこへやら、そう言いつつナナの胸元に手を伸ばすルース。
 ははは、と笑いながら浴衣に手を伸ばして来るルースに、ナナは仕方ない、というようにふっと柔らかく笑った。
「気持ちを再確認する前でしたら池に叩き込んでいましたが……まあ、良しとしましょうか」
 月明かりの下、ナナはルースの肩に頭を乗せて目を瞑った。舟に揺られる二人のことを、証人たる月だけが見ていた。