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君を待ってる~封印の巫女~(第2回/全4回)

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君を待ってる~封印の巫女~(第2回/全4回)

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第11章 花は咲き、花は散る(花壇)

 空が、ひび割れた。

『アムリアナ様、どうかお力をお貸し下さい』
 祈りを捧げるように地面に両手を置いた白花。
 その背に光の翼が広がると共に、地面が光を放った。
 先日の封印、オレグが描いた封印の紋章が輝く。
「サンクチュアリ……?」
 そう、封印の紋章を媒介にした、それは禁猟区。
 大切な人達を守る為の、保護結界だった。
『ありがとう、信じてくれて。ありがとう、名前をくれて』
「白花……?」
 静かな微笑みを見た瞬間、刀真の脳裏に警鐘が鳴り響いた。
「白花、止め……っ!?」
 眩いほどの光が視界を埋め尽くす。まるで白花の姿を覆い尽くすように。白花の存在を喰らい尽くすように。
 そして。

 ピシリ、と。

 魂が砕ける音がした。

「白花っ!」
『私は……大丈夫……少しだけ休……またきっと……』
 ふぅっ、と風にさらわれるように、白花はその姿を完全に消した。
 儚い微笑みを残して。


「頃合ね……中々楽しい余興だったわ」
 焼けた花壇と、呆然と空を仰ぐ人々と。
 メニエスは嫣然と笑み、そんな者達を小馬鹿にするようにお辞儀すると、悠然と立ち去ったのだった。

「……ここは?」
「おっと、ゆっくり身体を起こして……」
 玲奈はぼんやりと、自分を支えてくれているソールを見上げた。
「気分は悪くない? 吐き気や頭痛は?」
「大丈夫……でも、ごめんなさい、ちょっと頭がぼ〜っとして……」
 覗き込んでくる美形にちょっとドキドキしつつ、玲奈は必死に記憶を手繰った。
「ドサクサに紛れてナンパしないで下さいよ」
「いやいや、虫より俺の毒牙にかかった方が、かわいこちゃんも幸せだって」
 翔に咎められてもどこ吹く風。ね、と艶やかに微笑まれ……玲奈の心臓がドクンと鳴った。
 虫。
 そう、虫だ。
 自分は虫に刺されて、そして……?
「わっ私……っ!?」
「大丈夫、もう怖い事は何もないから」
 顔色を無くし、小刻みに震える肩をソールは励ますようにそっと抱いた。
「気がつきましたか?」
「っは……、わたくしは何をしていたんでしょうか……」
 ベアトリーチェにより正気に戻ったさけもまた、オロオロと動揺していた。
 自分が何をしたのか、記憶はおぼろげで。
「この花壇の復興、手伝うわ。ううん、手伝わせて!」
「俺も、ごめん、本当にごめん!」
 玲奈も真も申し訳なさでいっぱいだった。
 自分達がしてしまった事。
 それはどれだけ謝っても許されるものではないと。
「ぐはー、あっちぃーーーーーーーーー」
 見て取った翔子は、着込んでいた上着やら何やらを放り出す勢いで脱ぎ捨てた。
「うあ〜、汗でベトベトだよ」
 殊更元気に声を上げるのは、暗い空気を少しでも吹き飛ばす為。
「こういうウジウジした雰囲気ってイヤだもん。起きちゃった事はもう仕方ないの! 花壇ならまた、植えなおせばいいの……みんなで」
 でしょ?、無意味に胸を張る翔子。
 玲奈や真、さけ達は顔を見合わせてから、大きく頷いたのだった。


「……陸斗くん?」
「雛子殿、まだ寝ていなくてはダメだ」
 保健室。少し休んだ黎は起き上がれるようになったが、陸斗はまだ死んだように眠っている。
「私、すごく怖い夢を見て……でも、あれは夢じゃなかったんですね。私、花壇をめちゃくちゃにしようとして……もしかして、陸斗くんも私が? 授受さんも?」
「や、それは違うで」
「そうですわ、自分を責めないで下さい」
 フィルラントやエマが必死で言い募るが、雛子の表情は晴れなかった。
「むにゃむにゃ〜、特大ホットケーキなのにゃ〜」
 ただ、パムだけは幸せそうな寝顔を浮かべていた。


「……」
 苦い気持ちを噛み殺しながら、ミコトは黙然と花壇の後片付けをした。
 ホウキで掃除し、玲奈達が整えた花々に象さん如雨露で水をやる。
「ここ、ハーブの苗を植えておいた方が良いんじゃないか?」
「そうですね。後はこの辺、ですか」
 ベアトリクス・シュヴァルツバルトや支倉遥が早速花壇の修復を始め。
 整えられた花々は、ここで乱闘があった事をあまり感じさせず、ただそよそよと可憐に揺れている。
「しかし、何故に封印が花なんでしょうか?」
 ミコトの口をふとついた疑問。
 答えを探そうと、花々を見ているうちに、口元に微笑みが浮かんだ……こんな時でも。
「沈んだ気持ちも癒してくれる……或いはそれが理由なのか、他に理由があるのか」
 もう一度会い、白花に問う事は出来るだろうか?、ミコトは知らず象さん如雨露を握る手に力を込めていた。