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リアクション
外務大臣を守るために同行した他校生達の中には、自ら哨戒の任を買って出た者達がいた。蒼空学園のレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)やセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)、七枷 陣(ななかせ・じん)達である。
セシリアと彼女の契約者の一人ファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)は唯一無事だった小型飛空艇に乗って、上空から空賊の動向を探索。光学迷彩が使えるレイディスと、バーストダッシュを持つ七枷、リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)
は、それぞれの契約者と携帯電話で連絡を取りながら、空賊達が潜んでいるであろう密林へと足を踏み込んでいく。
レイディスは探索に出る直前、恋人であるセシリアに剣士の証カルスノウストを預けてきた。いつ空賊の襲撃があるか分からない時に、長年使い込んできた武器を預けてくるなど、命を捨てるにも等しい愚かな行為だ。我ながら馬鹿げた感傷だと分かっていたが、それは「必ずセシリアの元へ帰る」という決意の表明でもあった。
無意識のうちにレイディスが新たな愛刀であるグレートソードに手をかけたそのとき、彼の携帯電話が着信を告げた。
連絡係を務めるため、飛空艇で待機をしていたフィーネ・ヴァンスレー(ふぃーね・う゛ぁんすれー)からだ。島では通常の通話ができないため、哨戒に出る者は必ずパートナーを一人飛空艇に残すことにした。セシリアから連絡を受けた彼女のパートナーミリィ・ラインド(みりぃ・らいんど)が、艇内に残る他の者に通達。彼女の話を聞いた者がそれぞれ自らのパートナーへと連絡を入れることで連携を確保しているのだ。不便なことこの上ないが、今はそれしか方法はなかった。
「セシリアから連絡があったよ。空賊が乗っていた飛空艇を見つけたって」
「敵の状況と場所は?」
「アンタが今いる場所から西に3キロくらい行った所。でも、人影は見あたらなかったみたい」
「すでに移動している…ということか」
「恐らくね。見つかった小型飛空艇は全部で7機。どの機体も煙を噴いていたそうだから、乗り捨てた可能性が高いんじゃないの?」
報告を受けたレイディスはしばし考え込んだ後、フィーネに頼む。
「悪いが、七枷と連絡を取ってくれないか?」
「いいけど、なんで?」
「念のために合流した方が良さそうだ。お互い少人数でいる所に急襲を受けたらひとたまりもないからな」
「ちょっと待っていて」
フィーネはそう断りを入れると、隣に待機している七枷のパートナー小尾田 真奈(おびた・まな)に話しかけた。
「今、真奈が七枷くんと連絡をとったわ。バーストダッシュを使ってすぐにそっちに向かうから、その場を動かないでだって」
七枷 陣(ななかせ・じん)が彼女達を見つけたのは、レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)が待つ合流地点へと急行している最中だった。
茂みの奥に見えたのは、百合園女学院の制服を着た女生徒が二人。接待役として同行してきた彼女達が、武装していないことは七枷も知っていた。いつ何時、空賊達が襲いかかってくるか分からない場所で、武器も持たないまま歩いているなど、自殺行為に等しい。恐らくは食料を探しに出て、道に迷ったのだろうけれど。
彼女たちを保護しなくては…正義感に駆られた七枷はバーストダッシュを解除すると、足を止めた。同行していたヴァルキリーのリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)も不可解な顔をしながらも七枷に従う。
「君たち、こんなところでどうしたんだ?」
七枷が声をかけると、二人の少女はホッとした表情を浮かべながら振り返る。
「わにゃぁ〜助かったのです!」
「あ、あのっ。私達、他の人達からはぐれてしまって! 飛空艇に戻れなくなっちゃったんです!」
涙目になりながら自分たちの状況を訴えかける少女達に向かって、七枷は力強く頷いた。
「やはりそうか。いいよ。オレが連れて行ってやる」
「でも陣くん、レイくんが待ってるよ〜」
リーズに諭され、七枷はしばし考え込んだ。
「あぁ…そうやな。じゃぁ、リーズが彼女達を送ってやってくれ。オレはレイディスの方に向かうから」
「了解だよ〜!」
七枷は快く少女達の護衛を請け負ってくれたリーズに頷いてみせる。それから百合園の少女達に向かって手を振ると再びバーストダッシュを発動させる。
「じゃぁ、君達も気をつけてな!」
「ありがとうございます。あなたも気をつけてね!」
「がんばるのだ〜!!」
疾風の如く走り去っていく七枷に向かって深々と頭を下げる少女達の口元には「してやったり」と言わんばかりの笑みが浮かんでいた。
教導団の用意した飛空艇に乗っていたため、接待役の少女達の顔を知らなかった七枷は気がつかなかったが。それは百合園の女生徒に化けた天魔衆シルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)とルイン・ティルナノーグ(るいん・てぃるなのーぐ)だった。
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