天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

まほろば大奥譚 第三回/全四回

リアクション公開中!

まほろば大奥譚 第三回/全四回

リアクション


第三章 鬼城暗殺部隊2

 マホロバ城の地下。
 蒼空学園風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は再びあの場所に舞い戻っていた。
 彼は将軍の姉、鬼子姫を助けることで、将軍家を宿命から開放したいと願っていた。
 地下迷路を銃型HCオートマッピング機能を使って進んでいく。
 暗闇の中にあの灯りを見た。
 マホロバ城の地下を彷徨う――鬼子姫だ。
「お前は……」と、鬼は暗がりの中で優斗の顔に気が付いた。
「逃がしたはずだが、なぜ戻ってきた」
「ええ、名前をまだ伺ってませんでしたからね」
「私に……鬼に、名はない」
「では、灯姫とお呼びしても良いですか」
「あかりひめ……?」
 鬼子の顔が僅かに紅潮した。
「灯姫、外に出てみませんか、迎えに来たんです」
「私が、ここからでることはない。今のマホロバに、私の存在があってはならないのだ」
「確かに、いきなりは不安でしょうし、怖いと思います。これは『僕がそうあって欲しい』と思う『僕の事情』なので無理強いしません。でも、貴女にはもっと幸せになって欲しいんです」
「私は今まで……誰にも……認められない存在だったから」
 優斗は彼女の支えになることを約束した。
「心の支えになれるよう、僕はフォローするし、命を懸けて姫を守ります」
 そのとき、強い光が彼らを照らしだした。
 鬼城家の家臣達が鬼を迎えに来たのだ。
 その先頭には大老楠山がいた。
「姫様、地上に出たくはございませんか。貴女のその力を人々に見せつけ、将軍家に役立たせるのです。他の鬼は駄目です。あまりにも理性がなさ過ぎて、他の人間を傷つける恐れがあります。しかし、貴女は大丈夫です。目的の人物さえ始末すれば良いのですから」
 将軍家に生まれ、落稚児となった鬼は、マホロバ城の地下で隠され続けていた。
 そのほとんどが暗闇の中で心身ともに鬼となり、彼女のように人としての理性を残すのは稀であった。
 大老は言葉巧みに畳みかける。
「鬼城家の、将軍の為なのですよ! 貴女はその為に存在するのです!」
「駄目だ! 灯姫、そんな言葉を聞いては……!」
「……将軍のため。鬼城のため……あの子の、ため?」
 灯姫はぶつぶつと一人言を繰り返したかと思うと、キッと顔を上げた。
 それはまさしく鬼の顔であった。
 長刀を帯刀し、地上への階段を上っていく。
「灯姫……駄目だ!」
 優斗は彼女を止めようと追っていった。

卍卍卍


 『八咫烏(やたがらす)』に協力する空京大学如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は、灯やリュウライザーたちと連絡を取っていた。
 彼はこの情報と嘆願書を携え、東光大慈院で貞継に謁見してた。
 大慈院はマホロバ城ほど厳戒ではなく、『八咫烏(やたがらす』も警備を行っているだけあって、将軍の謁見は可能であった。
「マホロバの将軍と言っても、今は城を追い出された身だ。そうかしこまらずとも良い」 
 しかし、正悟は表情を崩さない。
「俺は……追われている身ですので」
 正悟は、自分の目で見たハホロバ城での出来事と、葦原明倫館分校長{SNM9998870#ティファニー・ジーン}について話した。
「マホロバの城の地下にいる、お姉様のことはご存じですか」
「姉上に会っただと?!」
 貞継の顔色が変わった。
 将軍は正悟たちがマホロバ城地下の秘密を知っていることにも驚いたが、それ以上に正悟の知らせに驚愕していた。
「あえてここに来た以上、沙汰は受けます。しかし、ここで死ぬ訳にはいきません。俺も、あの場にいた仲間も、全てを良い方向に向かせたら、いつでもお受けします」
 貞継はしばらく呆然としていたが、すぐに気を取り直した。
「お前の話と、楠山の話が本当であれば、姉上は鬼として地上に放たれるかも知れない……助けてやって欲しい」
 そして、こう続ける。
「姉上を殺さずに連れ戻してくれたなら、城に侵入したの罪は問わない」
「ティファニーの噂の流布も許して頂けますか」と、正悟。
「……それは別だ。将軍家が長年守り続けたものを、そう簡単に許すことはできぬ。このために、どれほど多くのものが犠牲になってきたか……例外は認められぬ」
「将軍家の秘密と実姉の命とどちらが大切なのですか!」
 正悟は厳しく将軍の正面を見据えて問う。
 しかし、貞継も折れる気配はない。
「『天鬼神』の血の契約をしろ。でなければ、マホロバにいる限りお前達の身の安全は保証できない」
 病身とはいっても、マホロバの将軍である。
 権威も威光も並の人間とは異なる。
 しかし、正悟は首を縦には振らなかった。
「今はお受けできません。俺の言った全てを良い方向に向かせたいの中に、その鬼の血も含まれますからね」
「そうか……姉上は強いぞ。女という理由で将軍になれなかったとはいえ、『天鬼神』の血の流れを汲む者だからな」
 一礼をして踵を返す正悟を見送りながら、貞継は呟く。
「大奥も……肉親も、自らの手で救えんとはな……あの者達に頼るしかないのか……」