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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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 再び、クィクモ。
 司令部は、遠くユーレミカ方面からマリー軍師よりの要請を受け兵を派遣したが、今度はコンロンの中心部ミロクシャ方面からも、そこに向かった騎狼部隊からの報が入っていた。
 そこで今、司令部に呼ばれているのが、傷から立ち直った林田 樹(はやしだ・いつき)少尉である。
「まったく、かつての青年にしても候補生にしてそうであったが、ウチの部隊は何でこう鉄砲玉が多いんだ?
 申し訳ない、衛生兵大尉にデコ参謀長」
「いや、騎狼部隊はよくやって頂いている、林田少尉。臨時に指揮を預かった鉄心殿からの報告も、状況はやや危ういが……努めて冷静に記してある。林田少尉」
「うむ。私が向かおうと思う。……如何だろうか?」
「では、お願いする。勿論、後続で到着している騎狼部隊の兵も率いて」
 林田少尉は敬礼し、退出していった。
 そこへ、軍港の様子を見に行っていた、エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)パティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)が戻る。すでにおなじみのコンビだが、クレア大尉の部下であるパートナー二人だ。エイミーはパワードアーマー隊やイコン・その他兵器関連についての現状を報告する。「パワード部隊は、クレセントベースへ回す分50は整備中、それ以外は月島少尉がすでに出撃準備を終えている。イコン、各種兵器も到着。イコンは叶 白竜・候補生、兵器関係は犬神 狛・候補生を担当者として整備を開始。また、クレセントベースへはイコンは湊川 亮一・候補生、兵器関係はフラン・ロレーヌ候補生を担当として出発準備完了。ってとこだな」
「ご苦労。次、パティはどうだ?」
「えぇとですね、エイミーの補足にもなるんだけど、イコンの方にアサノファクトリー、また、天学・葦原明倫館から一組ずつ助っ人が来ていますねぇ。アサノファクトリーにはここクィクモ、後の二組はクレセントベースでの任務というふうに派遣されてきたとのことですぅ。
 えーそれから、空大の九条さんが医療兵に志願してくれてますね。活動にあたって直接、ここの司令官のクレアさんに挨拶をしたいと仰っていました」
「そうか。む、誰か来たようだな。噂をすればその九条殿だろうか?」
「どうぞお入り下さいですぅ」
 司令室に入ったきたのは、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)、それにさきイコン整備に名前の挙がっていた叶 白竜の姿もあった。
 エイミー、パティが両脇へ立ち、クィクモ本営の司令官クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)が迎えた。叶候補生には少し、待って頂こうかと言い、エイミーが待合室へ案内する。
「お目通りが叶い、光栄です。クレア・シュミット司令官」丁重な物腰で挨拶を述べる、九条。
「こちらこそ。よく、空大より協力に来てくれた」
「はい。
 コンロンの事情も幾らか、聞いております。医者の卵ですが、戦闘が予想される場所への配属と、その場所に治療や衛生環境を整えるための野戦テントの設置許可をお願い致したく思うのです。衛生兵の詰め所のようなもの、でしょうか」
「嬉しく思う。その通りで、戦闘は激化しそうだ。傷ついた兵たちを少しでも癒してほしいし、最悪の場合だがコンロンの民にも何らかの被害が出た場合……いや、そのようなことだけは絶対にしたくないのだが」
「クレア司令官」
「実は私も、今はこうして仮にも司令部を任されてはいるが、元々は医の道を志していた者。医療・衛生の重要性はわかるが、本営を離れるわけにもいかない」
「お任せ下さい。私がクレア司令官の思いも共にし赴きますから! 前線に赴く人が各々で治療をするのも大事ですが、治療に専念する人もいた方がいいと思うのです。その分前線の方たちは目の前の戦いに集中できますしね。足手まといにならないように頑張ります!」
 九条は、報告等は彼にしっかりとさせます、と守護天使の冬月 学人(ふゆつき・がくと)を紹介した。
「僕はロゼの右腕として動きます。ロゼみたいに、医学的に突っ込んだ治療はできませんが、魔法による治療なら得意です。ヒール、リカバリ、キュアポイズン……何でも来いですよ」
「ちょ、ちょっと学人……」
「あとは、ロゼが言ったように報告書の作成も担当します。物資の正確な数――いつ、何を、何個使ったかまで。それに治療・衛生改善の結果までしっかりと、まとめます。ロゼはこういうの苦手だしね」
「が、学人……それは」
「うーん、あとロゼの身の回りの世話もした方がいいかもしれませんね。医学の勉強だとか、熱中すると食べることすら忘れる性格ですし……とりあえずは全面的な補佐ということで。ええ、つまり、ロゼの右腕ということです」
「……」
「うむ。頼もしいことだ」
 クレア司令官は、二人のことを信頼し、高く評価した。クィクモ本営における医療関係は一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)少尉が統括しすでに体制を整えた。だが、話にも出たように各地で戦闘が予想される。急務となるヒクーロへは土御門・候補生が医療チームの編成を申し出てきた。それから、ミロクシャ方面から騎狼部隊救助班より伝令が来ている。九条にはおそらくそちらへ行ってもらうことになるだろうか。
 そして、同じくクレア少尉を訪れたイコン担当の叶・候補生からは次のような言葉が聞かれた。
「イコンは戦闘だけに使われるものではなく、人命救助や復興支援的な活動もできるはずです。コンロンの人に脅威ではなく信頼を持ってもらう使い方があると思うし、教導団に対する信頼につながるのですから……」
 戦うための兵器であり実際、パイロットはそれに搭乗しておおよそ戦うことしか考えないであろうイコンの整備を担当する者から、このような言葉が聞けるとは。クレアは白竜のことも評価し、よくよく考えてみねばならぬことだ、と深く思うのであった。

 


 
 司令部の机に身を屈め、この男が何やらずっと書き付けている。
 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)参謀長である。各地から入ってくる状況。大方針を示しはしたものの、部隊を引き連れてイザコザを起こしかねない状況に陥っているところが多々ある。そう、戦闘は避けられない状況になりつつあるのだが……
 また、戦部は、思う。虎の衣を狩る狐の如く、シャンバラの力をさも自分たちの力のように勘違いをして、自分の欲望を満たすために用いている輩がいるのも事実。それらに対処すべく、我々はこの地を支配しにきたのではなく、ここの民が平和に暮らしていけるよう手助けにきたことを内外に、知らしめるため、以下の宣言を対外発表する!
「できたぞ!」
 戦部参謀長は立ち上がった。
 
 
「コンロンの皆さん、我々シャンバラも、かつて個々が己が欲望を満たさんがために群雄割拠し、民が虐げられていた時代がありました。それではいけないと皆が団結し、一丸となって国を作る事によって平和に暮らせる世の中にしました。……そうです、皆が一致団結して行動を起こせば平和な世の中を作る事が可能なのです。しかしながら、己が欲望を満たさんがため、それを望まぬ輩がいるのも事実です。彼らは皆さんがそのような行動を取る事に対して妨害をしてくるでしょう。我々シャンバラの人間は、その苦しみがわかるからこそ、心からコンロンの皆さんが平和に暮らせる世の中にするために汗水を流す用意があります。そして、この提案に賛同してくださる方々は我々に連絡を頂けないでしょうか? ただし、己が欲望のために賛同するのであれば、断固としてお断り致します。本当に平和な世の中を築きたい人たちの手助けをしたいのです。そして、助けを請われるのであれば、我々は全力でお助けする所存です」
 
 
 戦部はこれを書き上げると、机に突っ伏し倒れた。
「……コンロンの電波に乗っけて発信するという手段もないですからね……たぶん、各地の有力者への書簡による要請になるでしょう……リース……」
「小次郎さん……!」リース・バーロット(りーす・ばーろっと)が戦部の遺言?を聞く。
「……クィクモの軍閥に根回しで話をつけて……」「は、はい」「……やれる範囲でいいので……そう、我と共にやってきて、リース、君にももう一人で根回しできる力がついた筈……」「はい。ばっちし」「……随分、苦労をかけたし、裏の仕事もやらせた……」「はい」「……」「……小次郎さん?」「……リース……我の書簡と共に、コンロンを駆け巡れ……」ばたっ。
 リースは巧みな根回しを用い、クィクモの軍閥をしてこの書簡を瞬く間にコンロン中に広めさせた。