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リアクション
第3章 魔塔【4】
奈落の軍勢を破り、次の階層へ制圧部隊は走った。
階段に足を踏み入れたその時、蒼空学園新生徒会長東條 カガチ(とうじょう・かがち)は止まれと叫んだ。
よく見れば、階段にナラカの蜘蛛糸が張り巡らされている。時折、火花を散らすのを見るに電流が走ってるようだ。
そして、その武器はカガチに見覚えのあるものだった。
「……なぁバカし合いはやめにしようや。いるんだろクソ奈落人、とっとと椎名くんの身体を返しやがれ」
「くくく……、大人しく引っかかってりゃ楽になれたのになぁ」
奈落人椎葉 諒(しいば・りょう)は不気味な微笑を浮かべながら、階段を降りてきた。
その身体は椎名 真(しいな・まこと)のものだが、諒が憑依しているため顔の半分を覆う痣が顕在化している。
「何企んでんだか知らねぇが、くだらねぇことに真を巻き込んでんじゃねぇ。返してもら……」
「はい、御免よ」
東條 葵(とうじょう・あおい)はしれっと意気込むカガチを遮った。
「あの、葵ちゃん。今俺がさぁ……」
「異議申し立ては後日聞くよ。カガチは亡霊の騎士を頼む、彼は僕に任せてもらおう」
「え……、いや因縁的にもそこは俺でしょうよ」
と一応抗議はしたものの、決定が覆らないことを悟るともそもそとゴーストナイトの相手を始めた。
まぁ、乱戦は得意だけどよぉ……と愚痴りながら、抜刀術でばったばったと斬り伏せていく。
「……そう言うわけだから、君の相手は僕がしよう、『椎葉くん』」
「ほう。そいつが貴様に務まるかな……?」
繰り出される手刀はナラカの闘技。
真剣に匹敵する切れ味を持つ攻撃を紙一重で流すと、葵はカウンターの回し蹴りを放つ。
どちらも退かぬ攻防の最中、諒は誰にも……特にゴーストナイトに気付かれぬよう耳打ちした。
「諒からの伝言がある……、皆にも伝えてくれ、トリシューラを発見しても絶対に使ってはならない、と」
「トリシューラを……?」
「俺が調査したわけじゃないからわからないけど、普通の人間が触れてはいけないものらしいんだ。あと、このメモを。制御階層までの道順と、捕虜になった人の居場所が書いてある。それとUSBメモリーを渡しておく」
「USBメモリー?」
「時間がないから説明は省くよ……、制御室まで行けば何かわかるはずだから」
この不思議な会話が意味するように、ここにいる諒は諒ではない。
諒のフリをしている真である。彼らは奈落の軍勢に紛れ内偵をしていたのだ。
そして、葵もそれに気付いていた。
「それで、『諒』はなにをしている?」
「上階で軍勢の誘導をしてる、勿論偽の情報でね……」
「わかった。彼らに先へ行かせよう」
目で合図を送ると、葵の回し蹴りで諒(真)は階段の上にまで吹き飛ばされた。
「今のうちに。それからこれは僕が独自に調査した塔の情報だ」
メモを渡し先ほどの情報を伝えると、他の制圧部隊を上階へ誘導した。
ほどなくして皆がいなくなった頃、ふらふらと階段の上から諒が降りてきた。
「ひと仕事終えてみりゃ、まだこっちは片付いてないようだな……、くくく……」
「ちょうどよく戻ってきたようだね、諒……」
見た目は同じだが、そこにいるのが本物であることを葵は本能的に察した。
この階層にゴーストナイトが残っているため、彼は……いや彼らはまだ芝居を続ける。
「しかし、もう仕事は終わったんだ。どっちが負けてこの茶番に幕を引いても同じことだよなぁ……?」
「なら、弱いほうがその役目を担うのが当然だ」
「それが自然の理って奴だな。じゃあとっとと貴様には眠ってもらおうか」
「冗談を」
再び二人は拳を交える。
先ほどの芝居とは違い、容赦なくたがいの急所を狙う本気の戦いだ。
「ああ、こんなのは何時振りだろう、何年、何十年、何百年、何千年……どれだけだろう、こんなに心から楽しいのは」
「はっ、すましてやがっても、やっぱり鬼の血には抗えねぇようだな……!」
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