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リアクション
第2章 都市【2】
菩提樹。
建立された簡易社に巫女馬鹿坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)は参拝し開発計画の成功を祈願した。
何故か手伝ってくれてるスーパーモンキーズも二礼二拍手一礼で祈願をする。
謎の腹話術少女橘 カナ(たちばな・かな)も右手の『福ちゃん』と一緒にペコリと礼。
「プロジェクト……成功するといいね、福ちゃん」
『ならかノ神サマガ巫女好キナノヲ願ウシカナイワネ』
「真に成功を願うのであれば、カナさんには士気を上げるためにしなければならない事があるでござるよ……!」
鹿次郎の両手が閃いた。
途端、くるくるとカナは回転し、止まった時には巫女装束に着替えさせられていた。神速の早着替えだ。
「あ……、や、ちょっとナニするの!」
「すべてモンキーズの士気を上げるためでござる! なにとぞなにとぞ、ここは力をお貸しくだされ!」
どう見てもその理由は建前であるが、しかしモンキーズから喝采が上がったのもまた事実。
「うー……わかった。その代わり、皆しっかり働くのよ」
「さあ気合いを入れて仕事に励むでござるよ、皆の衆! 街が栄えて豊かになった暁には、功労者である諸君は美味しい物がなんでも食べ放題、しかもこのように可愛い巫女さんが至れり尽くせりサービスしてくれるでござる!」
巫女巫女ドリームジャンボな宣言に、モンキーズから大歓声が上がった。
「更に! 本日存分に働いてくれた人には、巫女装束の雪さんが色々サービスしてくれるでござるよ!」
またも歓声が上がった。
「だ、大丈夫なの、そんな約束、雪さんに内緒でしちゃって……」
『アナタ、死ヌワヨ!』
「巫女に生き巫女に死す、それが武士の定めでござる……!」
そんな定めなら、それがしは今すぐこの腹を切る……!
生真面目な山中 鹿之助(やまなか・しかのすけ)はげんなりしつつ、PCでトリニティに逐一報告を入れていた。
鹿次郎の作った開発計画のサイトのことや、そこに無断で巫女姿のトリニティの写真が使われてること、などなど。
「……ところで、こちらでも何かできることはないだろうか?」
『と言いますと?』
「ここには菩提樹……アガスティア本体がある。直接攻撃することでそちらの支援を行うことはできないものかと」
『それはおすすめできません。まず本体はこちらの株分けされたものやパルメーラよりも強大な力を持っています。手出しするのは危険です。第二に、その強大な存在に有効な攻撃をそちらの装備で与えることは難し……ザザ……』
「む?」
通話の途中だったが、ほろびの森の電波塔消失により霊界通信が失われた。
「なにか良い手があれば……、むぅー、以蔵殿も酒ばかり飲んでないで知恵を貸してはもらえないか」
「なんじゃ、おんしにはわしがただ酔っぱらっとるように見えるがか?」
ただの駄目人間岡田 以蔵(おかだ・いぞう)は一升瓶を赤子のように抱えてとろけた視線を向けた。
「なんじゃそんな問題、わしに任しちょき、昔っからお払いには塩かお神酒と決まっちょる」
ふらふらと菩提樹の根元に行くと、おもむろに日本酒をぶっかけた。
「あっちのあがすてぃあがおかしいがやったら、こっちのあがすてぃあを払えばどがぁかなるぜよ」
「泥酔してる割には理にかなったことを言う……」
ただ、パルメーラはほぼ独立した存在である。本体を致命的にでも傷つけない限りダメージは通らない。
「ひっく……、ちっと飲み過ぎたかもしれん」
そう言うとおもむろに袴を下ろし、ちょろちょろと聖水を根元にぶっかけはじめた。
無論、ダメージは通らない……がしかし、ほろびの森ではパルメーラが嫌な気分に襲われたとかいないとか。
しかしながら、菩提樹と彼女を同一視するなら、これはパルメーラにぶっかけたわけで……。
幼女に尿をぶっかけと言うのはその……あ、筆者は黙ったほうがよさげな空気ですかね、これは。
そんな馬鹿なことをしてる樹の上では、カナがモンキーズに枝にバナナを吊るすよう指示をだしていた。
「こうやってよく見えるところに吊るしておけば、きっとハヌマーンも部下からのメッセージだって気付くわ」
『ばななハぼすヘノ目印ナンダカラネ、食ベチャだめヨ!』
どうも彼らのボス【ハヌマーン・ヴァーユ】を呼び出すつもりのようだ。
『シカシぼす猿ッテバ、巫女巫女ウルサイもんきーずドモヲ置イテ何処ヘ行ッタノカシラ』
「修行するなら一緒に連れてってあげればいいのに」
「馬鹿女が。修行ってのは孤独にやるもんだ」
はっと見上げると、そこにはバナナにぱくつく猿面人身の白猿大将ハヌマーンの姿があった。
「修行中の俺様をわざわざ呼び出すたァ、どういうことだ。また戦争でもおっぱじめようってのか?」
『ソウジャナクテ、菩提樹開発を手伝ッテホシイノ。ちから仕事デ』
事情を詳しく話せば話すほどハヌマーンは怒りに震えた。
「くだらねぇことで呼んでんじゃねぇ! なんで俺様がてめぇらの馬鹿騒ぎを手伝わなきゃならねぇんだ、ボケ!」
「あらあら……あんまり女子をいじめるもんじゃないわよ」
「あんだと?」
不意の声に眉を寄せる。
「空が呼ぶ風が呼ぶバナナ地獄が呼ぶ! シャンバラ美少女・ジュジュ様見参! 久しぶりね、助けにきたわよ!!」
声の主、神楽 授受(かぐら・じゅじゅ)は飛空艇からダイブしてハヌマーンに抱きついた。
それから、顔をしかめる彼を無視して、彼女はほろびの森の戦いに加勢してくれるよう頼む。
「来るなり薮から棒だな……、大体なんだ、助けるって。俺様は別に助けなんざ求めちゃいねぇぞ」
「わかってないのね……」
やれやれとため息を吐く。
「あんたこのままじゃ、このシナリオから消えるわよ?」
消 え る わ よ。
「このままじゃ噛ませ犬で終わる、でもまだライバルポジションに間に合うわ。さぁあたしたちに協力するのよ!」
「お、俺様が……そんな中国茶を飲みながら点心を食べる風習みたいになるだと!」
「私からもお願いいたします。今こそあなたの力が必要な時なのです」
飛空艇の操手をしていたエマ・ルビィ(えま・るびぃ)が言った。
持参したバナナをモンキーズに振る舞っているのは、外堀を埋めるためなのか、それは定かではない。
「仲間のために戦う姿って……とてもステキだと思いますわ」
「調子のいいこといいやがって! てめぇらがいつ俺様の仲間になったんだ、コラァ!」
「そんなこと言って知ってるんだから、あんたが女子供には甘いって」
言われてみれば、先の戦いで男性陣は骨をバギボギに折られたのに対し、授受はデコピンで済まされた。
「お願いっ!」
しばしハヌマーンは考えた。しかし、結論は実ははじめから決まっていた。
「ガルーダだろうが、カーリーだろうが、いずれは倒さなきゃならねぇ敵だ。いいだろう、力ァ貸してやる!」
「えー、じゃあ手伝いはー?」
カナが言うと、すっかり餌付けされたモンキーズを指した。
「その堕落した猿どもに手伝ってもらえ。俺様がいないからって、ダラダラしやがって……ったく」
「なんだかんだで皆に配慮を忘れないのね、ハヌー! 流石ハヌーは話がわかる! 信じてたわ、ハ……」
「うるせえ! このメス!」
修行により格段に強化された破砕デコピンが授受の額を吹っ飛ばすと、彼女はひぃと悲鳴を上げて菩提樹を転がった。
「ともかく! ひと暴れできんなら行かねぇ理由はねぇ!」
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