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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/第3回)

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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/第3回)

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第3章 魔塔【3】


 こちらでももうひとつの戦いが始まっていた。
 ガーゴイルの背でゴーストナイトを指揮する雄軒に、因縁の夜月 鴉(やづき・からす)が戦いを挑む。
「念のために訊いておくぜ、今からでも投降する気はないか、東園寺?」
「……わざわざおしえて差し上げなくてはなりませんか?」
「ま、そう言うとは思ってたけどな……!」
 鴉が剣を抜き払うと同時に、雄軒を守る二人の鉄騎兵ががあらわれた。
 先手をとったのはドゥムカ・ウェムカ(どぅむか・うぇむか)、と言うより元から奇襲をしかける気だったのだろう。
 装着したフライトユニットで飛翔すると、光術で目くらましをかけた。
「ようこそボンクラども! そんでサヨウナラだ! サクっとはらわたぶちまけてくれや、サクっとなァ!」
 容赦なくばらまかれるレーザーガトリングの雨、さらにパーティだとでも言わんばかりにミサイルも放つ。
 開戦早々に防戦を強いられる鴉達だったが、魔鎧夜月 壊世(やづき・かいぜ)はいち早く攻撃に転じた。
 同じ銃器使いだが火力に劣るため、小回りを活かせる接近戦に持ち込む。
「て、てめ……、近寄るんじゃねェ!」
「残念だけど遅すぎるね。そのスピードじゃ僕からは逃げられない」
 鼻先に銃口を突きつける……ところが、その途端にドゥムカは豹変した。
「……なんてな。飛んで火にいる夏のムシってなァ、おまえのことだ、ボゲェ!」
「なに……っ!?」
 接近戦は想定内、むしろこうなることは作戦の範疇と言ってもいい。
 ロケットパンチで壁際に吹き飛ばすと、再び銃弾のフルコースを食らわせ、壊世を戦闘不能に追い込む。
 その仲間の危機に行動を起こしたのは、大剣使いアルティナ・ヴァンス(あるてぃな・う゛ぁんす)
 しかし無論、もうひとりの鉄人バルト・ロドリクス(ばると・ろどりくす)が許すはずもなく立ちふさがる。
「バルト・ロドリクス……、リベンジを果たさせてもらいます」
「我は前進する。我が主の敵を薙ぎ倒す為に。我は退かぬ。目の前の敵を打ち倒すまで」
 繰り出されるティナの斬撃を、龍鱗化した肉体で弾き返しチャージブレイク。
 ひたすらに攻撃に耐え、ひたすらに前進を続ける姿は狂気としか形容のしようがない。
「我は葬る。目の前の敵を」
 完全に目標を捕捉したバルトはヘビーアームズの出力最大でスタンクラッシュを叩き込む。
 床を陥没させるほどの重撃……だが、切っ先を逸らし、ティナは攻撃を受け流した。
「私はあなたほどの戦士ではありません。ですが、あなたの一撃をまともに受けるような戦士でもありません……!」
 そして、生まれた隙も逃さない。おもむろに薬瓶を投げつけ、入っていたイカ墨で視界を奪う。
「あなたを乗り越えて私は先に進みます!」
 音速を超えた聖剣ティルヴィング・レプリカの一撃がバルトの重甲冑を両断。
 バチバチと火花を散らし、無慈悲な鉄人は崩れ落ちた。
 そして、こちらでは雄軒との大将対決……と思いきや、鴉は前哨戦ですこしづつ体力を削られていた。
 立ちはだかった配下のゴーストナイト三人を斬り捨てたものの、まだ二人雄軒の傍にいる。
「さっきから手下ばっかり差し向けやがって……、正々堂々俺と戦え、東園寺!」
「正々堂々……聞き覚えのない言葉ですね。戦いは常に合理的に行うもの、非合理な精神論は勝利からほど遠い……」
 不敵な雄軒に、鴉は警戒心を強める。
 なにか企んでいると直感が訴えていたが、裏付けるものはディテクトエビルにも超感覚にも反応がない。
「……とにかく、行動あるのみ!」
 アルティマ・トゥーレをまとった剣で斬り込むと、雄軒は盾を手に攻撃を退けた。
「盾……? この後におよんでやっと構えたのが武器じゃなくて盾……?」
「武器など必要ありません。わざわざこの手を血で濡らさずとも、貴方の始末など騎士がしてくれますから」
「頭のいいヤツかと思ったが、敵の力量を見極める頭はないらしい」
 鴉は武器を投げ捨てると、左右の手にそれぞれ火炎と冷気を術式で発動させた。
 一見なんだかわからないが、相反する力をスパークさせ爆発を引き起こす、自分もただではすまない捨て身の技だ。
 雄軒の目の色が変わった。
 しかし、その時には既に鴉は間合いを詰めていた。盾を投げつけて応戦するがあっさりと弾かれる。
「……仕舞いにしようぜ、東園寺」
「ええ、そうしましょう」
 弾いた盾の向こう側に鴉の表情が凍る。
 そこに見たものは剣を構える雄軒の姿だった。物質化・非物質化の能力で顕在化させたウルクの剣だ。
「武器は使わないと言いましたが、もちろん嘘です」
 真剣一閃。左肩から右脇に向かって袈裟切りにされ、鴉はゆっくりとその場に崩れ落ちた。
「俺の勘はやっぱり当たってたってことか、畜生……」
 広がる血だまりの中、ニヤリと笑う雄軒の顔を最後に、彼は意識を失った。