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【帝国を継ぐ者・第二部】二人の皇帝候補 (第2回/全4回)

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【帝国を継ぐ者・第二部】二人の皇帝候補 (第2回/全4回)

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【エピローグ:暗澹たる行く道】



「……そうか」

 同じ頃。ラヴェルデ・オケアノスの応接室では、ラヴェルデの元に執事が近付き、何事か報告するのを見て、カンテミールのグンツからテレパシーで戦況の報告を受けているジャジラッドが、にいっと口の端を上げていた。
「カンテミールでは、ティアラ殿が勝利されたようだな」
 ラヴェルデが受けた報告も同じものだろうという確信のある言葉に、果たして、ラヴェルデも頷いた。
「どうやら彼女等は逃したようですが、追撃の必要は無いでしょう。戦って勝利した。それこそが全てですからね」
 力こそ全てのエリュシオンである。勝利した事実があれば、敵対勢力であるエカテリーナ達の身柄が確保できなかったことに対しては、特に問題にしていないようだった。そんなラヴェルデに「そのことだが」とジャジラッドは口を開いた。
「逃亡を見逃しては、また反旗を翻される可能性がある。そんな事態は避けるべきだろう」
 再び市街を戦場にすることもそうだが、皇帝不在のこの時勢に各地が纏まらないというのは宜しくない。だが、無理に追撃するのも、心証は良く無いだろう、とジャジラッドは続ける。
「オレの仲間の提案だが、ドミトリエとエカテリーナをティアラの副官として重用してはどうか」
 カンテミールでティアラ側についたブルタの意見はこうだ。ドワーフ達との繋がりの強い二人である。今後のカンテミールの統治、発展のためにも必要な人材であり、敵対した者をも、実力があれば重用するという寛大さを見せれば、ティアラの心証にとっても良いはずだ。
「なるほど、それもそうですな……そのように伝えておきましょう」
 鷹揚に頷いたが、表面上表情を変えてはいないものの、ぴり、と氏無の纏っている空気が変わったのに、淵がちらりとその顔を伺う。
(……何か、引っかかることでも?)
 そのテレパシーには応えなかったが、氏無に強い警戒が芽生えているのを感じて、追求しようとしたところに、その凶報は舞い込んできた。
「何、ジェルジンスク監獄が強襲されたと!?」
 再び近付いた執事の耳打ちに、ガタン、とラヴェルデは大げさとも言える素振りで立ち上がったが、執事の続ける報告に、ふと真顔になると、難しい顔で目を細めた。
「……脱獄幇助、だと? ……ふむ」
 漏れ聞こえた言葉に、ルカルカは顔色を変えた。テロリストの襲撃を受けた、という報告ではない。鼬瓏による内通であることだとは、彼女等には知る由もないことではあるが、それだけ聞こえれば、”誰かがセルウス救出の件をを故意に漏らした”可能性がある、ということは判る。
「……ッ」
「……面倒なことになったねぇ」
 一体、とルカルカが小声で呟くように言ったのに、氏無は眉を寄せた。
(こうなれば、テロリストの襲撃の件も報告して、セルウスの手柄として、相殺を願い出てはどうかの?)
(現時点で、それは出来ない。僕らは”関わっていない”んだからね)
 相殺を願い出るには、テロリストの襲撃を知っていたことを説明できないのだ。淵のテレパシーに応えながら、氏無の顔は一層に険しくなる。知っていて黙認したのであれば、国家間の問題であり、巻き込まれるのは教導団だけでは済まなくなる。テロリストの裏にラヴェルデの存在があるにしろ無いにしろ、ノヴゴルドを亡き者にしようとした存在と、セルウスを妨害する存在は、荒野の王を皇帝にしようとする誰か、あるいは誰か達であることは間違いない。彼らがこの状況を見逃すはすが無く、それによって生じる歪みを必ず突いてくるだろう。
(それに、今なら……もし、ラヴェルデが噛んでいるなら、この状況を利用してくるはずだ)
 何か対抗策はないか、と氏無は必死で頭を回転させているようだったが、一歩遅かった。
 ラヴェルデは、執事に荒野の王を呼ぶように言いつけると、その場の一同を見回してにっこりと笑った。


「どうやら、我が国の犯罪者に手を貸す不届き者がいるようです。討伐に手を貸していただけませんか?」
 

 そうして、ラヴェルデ・オケアノスによって”ノヴゴルドの命を狙ったテロリスト”として、セルウス一味の討伐命令は下されたのだった。 





担当マスターより

▼担当マスター

逆凪 まこと

▼マスターコメント

ご参加くださいました皆様、大変お疲れ様でした
第一回とはまた違う意味で、大事に次ぐ大事な事態と相成りました今回
暗躍やら陰謀やら、戦闘以外にもごっちゃり盛りだくさんとなりましたが、如何だったでしょうか

結果の概要については以下の通りになっております

■セルウスの保護……成功
■ノヴゴルドの救助……成功
■テロリストの撃退……成功(主犯格は逃亡)
■カンテミール戦闘……ティアラの勝利(エカテリーナ・ドミトリエは逃亡)
■主に判明したこと
  ・荒野の王は、ブリアレオスでの戦闘中に不調をきたすことがあるようです
  ・荒野の王かブリアレオスかが、欠片に反応を示しました
  ・ノヴゴルドによると、セルウスの資質は、既に目覚めはじめているようです
  ・遺跡龍の秘宝は、復活する可能性があるようです
  ・襲撃してきたテロリストとナッシングは、何らかの関わりがあるようです

■その他の状況
  ・セルウスがテロリストの一味である、と発表されてしまいました
   (襲撃の報告時、セルウスが牢獄にいなかったことも根拠とされています)
  ・ティアラ側の勝利によって、カンテミールは一時的にティアラの統治下に置かれます


……ということで、セルウス側は更に厳しい状況となっております
良い意味で、予想外の方向へ、話が転がってくれました
セルウスはこの試練を乗り越えて皇帝となることが出来るのか
それとも、このまま荒野の王がエリュシオンの皇帝となるのか
この物語の行く末は、皆様の行動にかかっております

事態も思惑も錯綜してまいりましたが、また次回もお付き合いいただければ幸いです